ヨンガシ
制作年:2012年
監督:パク・チョンウ
出演:キム・ミョンミン、ムン・ジョンヒ、キム・ドンワン、イ・ハニ
ジャンル:パニック、ヒューマンドラマ
チョア製薬会社の営業社員をしているチェヒョク(キム・ミョンミン)は、家族との時間すら取れないほど多忙な毎日を過ごしており、妻キョンスン(ムン・ジョンヒ)や息子チュヌ(オム・ジソン)や娘イェジ(ヨム・ヒョンソ)に迷惑をかけている。チェヒョクは、刑事をしている弟チェピル(キム・ドンワン)に誘われて手を出した株で失敗し、財産と仕事を失い、現在のチョア製薬会社で平社員として働いている。以前兄チェヒョクは、大学の後輩ヨンジュ(イ・ハニ)を弟チェピルに紹介し、二人は付き合うようになり、チェピルが恋人ヨンジュにも株の件で損させてしまった。ある日、ソウルを流れる川で男性の変死体が発見され、チェピル刑事は現場検証に立会い、鑑識から奇妙な遺体であることを知る。死亡した男性のブログをみつけた警察は、家族で江原道の川辺へ遊びに行っている記事があり、上司からチェピル刑事に江原道で捜査するように命令される。江原道の渓谷に行ったチェピル刑事は、そこの里長や所轄警官に情報を訊いてから、車の中で一夜を過ごす。翌日、チェピル刑事が車からおりると、川に複数の溺死体が浮いているのを発見する。一方、接待ゴルフをしていたチェヒョクは、突然喉が渇いて水ばかり飲む医師が池に飛び込んで溺死した。国内で同じように死亡する事件が起こっており、テレビで大きく報道され、人々はパニック状態に陥る。通報を受けて、風呂で死亡した被害者から線形の生物が飛び出しているのを警察がみつけて持ち帰る。原因を調査するファン博士(カン・シニル)や研究員ヨンジュら研究者たちは、突然変異したヨンガシ(ハリガネムシ)が人間に寄生し、人々を死に至らしめていることをみつける。政府は緊急対策本部を設置し、国家規模での対応をすることを決め、感染者を治す方法が現在見つからないことで研究者たちは感染者を使って実験を試みていく。その頃、チェヒョクの妻や子供たちは水ばかりを飲み、テレビの情報と同じ症状が起こっているのをみて、三人が感染しているのを確信する。避難所に移ったチェヒョクの家族たちは、感染している人たちと一緒に集まり、症状が悪化しないよう回復を待っている。大量感染を引き起こした真相とは何か、そしてチェヒョクの家族たちは助かるのかというお話。
監督は、『風の伝説』『BIG BANG!~撃ちまくれ~ (原題:撃つ)』のパク・チョンウ監督。
出演は、製薬会社の営業社員チェヒョクを演じるのは『朝鮮名探偵:ヒメトリカブトの花の秘密』『ペースメーカー』のキム・ミョンミン、チェヒョクの妻キョンスンを演じるのは『解決士』『カフェ・ノワール』のムン・ジョンヒ、刑事でチェヒョクの弟チェピルを演じるのは『緊急措置19号』『まわし蹴り』のキム・ドンワン、チェヒョクの後輩ヨンジュを演じるのは『ヒット』のイ・ハニ、チェヒョクの息子チュヌを演じるのは『トガニ』『敵との初恋 (原題:敵との同床)』の子役オム・ジソン、チェヒョクの娘イェジを演じるのは『不気味な恋愛』『ラブフィクション』の子役ヨム・ヒョンソ、ファン博士を演じるのは『ホームランが聞こえた夏 (原題:グローブ)』『ただ君だけ』のカン・シニル、対策本部長テウォンを演じるのは『クイズ王』『私は父親だ』のチョ・ドッキョン、国務総理を演じるのは『クイック』『トガニ』のチョン・ググァン。
変種ヨンガシという寄生虫が人間の体内に入りこみ、短い潜伏期間で人間の脳を操縦して、水の中に飛び込むように誘導して溺死させる。感染経路としては、川の水の中に含まれて流れ、行楽シーズンで遊びにきていた人たちが川に入ったとき、口や肛門から体内に入り込んで感染したと推測されている。多くの死者が出たことで国内を揺るがし、人々が恐怖に陥るパニックものである。チェヒョクの家族を中心にスポットを当てて、人間ドラマの要素を取り入れ、さらにこの出来事がどのようにして起こったのかを追うサスペンス要素も取り入れている。
症状の段階をチェヒョクの家族の様子で表現されているのだ。まず食欲が旺盛になり、次に摂取量に比べて体重が全く増えない、最後に深刻な口渇になり水を大量に飲みだす。それを超えると水を求めて、川や池に飛び込んだり、浴槽に潜る行為をして溺死するのだ。
パニックものとして、何が原因で感染症を引き起こっているのか、感染したときの対策、特効薬などがあるのか、これらをタイミングよくオープンにしていくことで出来が決まると思われる。本作品の場合は、序盤から原因が変種ヨンガシという寄生虫、解決策となる特効薬がわかって、唐突に物事が進んでいくので、あまりにも単純な形にみえてしまっている。
人々の行動や死に方がかなり興味深く映しているのがみえる。感染者の死に方は、水を求めて川に飛び込み、うつ伏せの状態で死亡しているのだ。水を欲しがる感染者の動きは、水を強く求める姿をみせて、自制心を持って耐える人もいたり、欲に負けて死んでしまう人をみせている。また、チョア製薬会社の正門で、感染者やその家族たちが特効薬を求める姿をみせており、我先に走る人たちの姿をみせている。人がうじゃうじゃ出てきてゾンビ作品のようにみえてしまい、ちょっと違う意味で面白みがある。
感染した妻と子供たちのために薬を求めて奔走するチェヒョク、この感染症に効く唯一の薬が製造終了になっており製造元であるチョア製薬会社の陰謀を探るチェピル刑事、変異したヨンガシの解明や対策をする研究者の一員のヨンジュ、感染者が隔離された避難所で症状に耐えて夫を待つ妻キョンスンと子供たち、といった人間ドラマを絡まして盛り上げている。原因が変種ヨンガシという地味な生物なため、映像として迫力不足で、結局は大勢の人たちが登場することで補っている。原因と解決策を序盤にみせているから、何故このようなことが起こったのかを追うチェピル刑事のサスペンス要素で中盤以降みせるようにしている。チェヒョク家族の部分に心を打たれた人なら多少プラスにみえるが、ご都合主義な作りが多かったり、不自然なシーンが幾つかあることで、全体構成として変に感じられた。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★