音楽ものとしてはよかったが、社会派ドラマや人間ドラマなところは今一つって感じかな。
GOGO70s (原題:ゴーゴー70)
制作年:2008年
監督:チェ・ホ
出演:チョ・スンウ、シン・ミナ、チャ・スンウ、イ・ソンミン
ジャンル:ヒューマンドラマ
鑑賞:日本版DVD
1970年代初頭、軍事政権化の韓国。地方都市の大邱にあるアメリカ軍基地のナイトクラブで、ボーカル&ギター担当のサンギュ(チョ・スンウ)、ベース担当のキョング(キム・ミンギュ)、ドラム担当のトングン(ソン・ギョンホ)が演奏していた。次にステージ上がった6~7人のバンドは、ボーカル&ギター担当するマンシク(チャ・スンウ)らで、トランペットやサックスといったブラス隊がいることでノリがいいのだが、マンシクの歌唱力がないことでサンギュたちは笑っていた。そのとき、店内で乱闘騒ぎが起こり、マンシクらのバンドメンバーの数人が演奏を止めて乱闘に加わってしまった。そのとき、空いたパートをサンギュ、キョング、トングンの三人が途中で加わったことで素晴らしい音になり、その後サンギュたちとマンシクたちの六人で一緒にバンドを組むことになり、バンド名「デビルス」を結成した。ナイトクラブで雑用をして働くミミ(シン・ミナ)は、サンギュに片思いしており、サンギュの命令になんでもしていた。「デビルス」のマネージャーとして率先して働きだすミミは、ソウルで「プレイボーイ杯」というロックバンドのコンテストがあることを張り紙で知り、「デビルス」の六人とミミはソウルに向かう。「プレイボーイ杯」では、四人組のフェニックスが、群を抜いた演奏力で会場を沸かせていた。デビルスの演奏が始まると観客は静まり、盛り上がりもなく終わってしまった。結果、デビルスは優勝できなかったが特別賞を獲得して小麦粉を受賞商品で貰い、「週間ソウル」の責任者イ・ビョンウク(イ・ソンミン)が彼らに注目して、デビルスは仕事が貰えると思い、一ヶ月間安い民宿で自炊しながら仕事を待っていた。やっときた仕事が、民謡歌手の伴奏とレコードのB面だけ。戒厳令が施行されたことで音楽の仕事は激減していった。夜間通行禁止令が政府から通達されている世の中で、「週間ソウル」の責任者イ・ビョンウクを中心にして、ナイトクラブ「二ルバーナ」をオープンさせて、デビルスやフェニックスなどのロックバンドたちを集めて音楽会を開く。始めはお客が入るが盛り上がりに欠けていたことで、ミミと旅館のヨンジャ(キム・スジョン)、キボク(ユン・チェヨン)の三人組みでダンスグループ「ワイルドガールズ」を結成する。デビルスが演奏して歌う中で、ワイルドガールズの三人が前面にきてダンスを披露することで、ナイトクラブのお客はワイルドガールズの振り付けと一緒になって踊りだした。これがヒットして、多くの若者たちがナイトクラブに来るようになり、ゴーゴーダンスと名が付くほど人気がでた。政府は、厳しい取り締まりをすることで、ナイトクラブ「ニルバーナ」を閉鎖させてしまい、デビルスの活動は小さくなり、サンギュやミミたちは困っていく。果たして、デビルスは復活することができるのかというお話。
監督は、『フー・アー・ユー?』『死生決断』のチェ・ホ監督。
出演は、デビルスのボーカル担当のサンギュを演じるのは『とかげの可愛い嘘 (原題:とかげ)』『タチャ イカサマ師 (原題:いかさま師)』のチョ・スンウ、デビルスのマネージャーのミミを演じるのは『サッド・ムービー』『野獣と美女』のシン・ミナ、デビルスのギター担当のマンシクを演じるのは『ラジオデイズ』のチャ・スンウ、デビルスのドラム担当のトングンを演じるのは『ラジオデイズ』のソン・ギョンホ、デビルスのトランペット担当のトンスを演じるのは『下流人生』のチェ・ミンチョル、デビルスのベース担当のキョングを演じるのは『タチャ イカサマ師 (原題:いかさま師)』『最強ロマンス』のキム・ミンギュ、デビルスのサックス担当のチュニョプを演じるのは本作スクリンデビューのホン・グァンホ、週刊ソウルの責任者イ・ビョンウクを演じるのは『シークレット・サンシャイン (原題:密陽)』『リターン』のイ・ソンミン。
1970年代に実在していたロックバンド「デビルス」をモデルにしており、多くのフィクションを混ぜながら音楽文化を表現して、軍事政権化の世の中の動向を同時に描いている。演歌と民謡が主流であった大衆音楽に、新しい音楽を世に広めていくデビルスのソウルミュージックが若者たちを刺激していく。
ボーカル&ギター担当のサンギュ、ベース担当のキョング、ドラム担当のトングンのグループとギター担当マンシク、トランペット担当トンス(チェ・ミンチョル)、サックス担当チュニョプ(ホン・グァンホ)のグループが合体して六人編成のグループを結成したところから始まっていく。三対三で意見が割れることがあるが、最終的にはリーダーのサンギュの意見を通すことから、連帯感があるグループになっている。デビルスとミミ率いる三人組みダンサーのワイルドガールズと一緒に舞台でパフォーマンスすることで、お客に認められていき、多くのファンが虜になっていくのだ。
売れてきたことで、グループ内で個々の考え方に違いが出てくるのをみせている。サンギュは、同じ曲ばかり演奏して歌っていることに不満があり、新曲をやりたくて仕方がないのだ。一方でマンシクやトンスやチュニョプは、ソロ活動のような形で小さな仕事をこなし、現状に満足している。マンシクの意見としては、お客が求めていることを提供することだと強くサンギュに話すことで、グループ内で方向性が変わっていくのだ。
軍事政権化に翻弄するロッカーたちをみせており、長髪とミニスカートの禁止令がくだされたり、ナイトクラブ「ニルバーナ」で演奏できなくなることで肩身の狭い思いをするロッカーたちをみせている。しかも、政府の取締りがだんだんと強化していき、デビルスやフェニックスたちのメンバーたちが警察に連行されて、長髪を切られて、拷問されるシーンもある。兵役徴収を無視して音楽をやっているサンギュが、すんなりと釈放されるのが納得いかないところであるが。1970年代だから、即軍隊行きだろうと誰もが思うところである。
音楽を主にしている作品なので、その要素が好きな人には受ける作品であろう。日本でいう1960~1970代に流行ったグループ・サウンドのブームに似ているから、その時期に青春時代を過ごした人にはストライクゾーンの作品であろう。ヒューマンドラマの要素を含んだ作品であるが、その点がいまいちインパクトがなく、人間関係の深さがないのが欠点だろう。人情味のあるように作っていたらと思い、惜しい作品でもある。実在するロックバンドをモデルにしているから、あまり踏み込んで脚色できないのも欠点であろう。終盤のライブシーンは、サポートメンバーも入れており、音楽ものとしては面白いところであった。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★