随分まえに鑑賞したが、また観たくなって最近鑑賞したこの作品。二つの世界(現実の世界、シナリオの世界)で登場する人物たちが、全く違う役柄で二役を演じているところはおもしろい。
不朽の名作
制作年:2000年
監督:シム・グァンジン
出演:パク・チュンフン、ソン・ユナ、ファン・インソン、ペク・ユンシク
ジャンル:ラブストーリー
鑑賞:韓国版DVD
ポルノ映画監督のキム・インギ(パク・チュンフン)は、母の借金を返済するために仕方なくポルノ映画を撮り、アルバイトをしながら生活をしている。インギは、いつか名作を撮りたいと願っていたが、シナリオを書く能力がもう一歩足りないでいた。そんなとき、インギは大学時代の同級生で映画プロデューサーをしている友人のミン(アン・ネサン)を通じて、大学の先輩で人気映画監督をしているミョンジュン(ファン・インソン)から作家のヨギョン(ソン・ユナ)を紹介してもらった。レストランで待ち合わせをした二人は、インギがヨギョンをみて一目ぼれしてしまった。インギは、サーカスを舞台にしたピエロとサーカス団長の娘との悲恋映画のシナリオ構想を説明して、そこにヨギョンもアイデアを出していき、シナリオの出来は順調に進んでいった。インギは、ヨギョンと会うに連れてどんどん惚れていったが、ヨギョンはミョンジュンのことが好きだった。また、インギに好意を持つポルノ女優のジニは、頻繁に下手な言い訳をしながらインギの家に会いに来る。すれ違う男女の気持ちであるが、徐々に彼らの恋愛は大きく動き出していく。ヨギョンに片思いするインギの恋の行方はどのような展開になっていくのか、そしてインギとヨギョンが考えて完成した名作のシナリオは今後どのような展開が待っているのかというお話。
監督は、本作デビュー作のシム・グァンジン監督。
出演者は、ポルノ映画監督のキム・インギを演じるのは『ハレルヤ』『NOWHERE 情け容赦無し』のパク・チュンフン、作家のヨギョンを演じるのは『1818』『チャン』のソン・ユナ、インギの先輩で人気映画監督のミョンジュンを演じるのは『深い悲しみ』『虹鱒』のファン・インソン、ポルノ映画会社のヤン社長を演じるのは本作スクリンデビューのペク・ユンシク、インギの従兄弟を演じるのは『イ・ジェスの乱』『春香伝』のミン・ギョンジン、インギに片思いするポルノ女優のジニを演じるのは『穴』のキム・ヨラン。
映画監督インギと作家ヨギョンの関係を描いた現実の世界、二人が創作する映画のシナリオの世界といった二つの世界が同時進行していく構成である。
インギは、みんなが感動するような不朽の名作を作りたいと思っているが、現実はポルノ映画の監督をしている。ポルノ映画のスタッフや俳優たちからは慕われているインギであるが、映画プロデューサーのミンがインギの撮影現場に来たときに、スタッフたちは同じ映画業界の人間だけど、ミンと比較すると大きな壁があるように感じているのだ。インギのポルノ映画に出演している女優のジニは、インギに片思いしており、何かと理由をつけて会いに行ったり、自分の気持ちを伝えられずに去っていってしまう初心な女性である。
作家のヨギョンは、実力はあるがチャンスがなく、業界に振り回されているのである。出版社でゴーストライターをしており、いつかは自分の名前で本を出版したいと願っているのだ。ゴーストライターという仕事にも絶望していた頃であり、映画監督のミョンジュンに片思いしているがなかなか実らない恋で悩んでいるのだ。そんな、今後の人生の方向性に悩んでいたインギとヨギョンが、新作映画のシナリオ制作を始まるのである。
恋愛の行方として、一応はインギ、ヨギョン、ミョンジュン、ジニの四角関係の構図になっているが、実際はインギとヨギョンの二人のラブストーリーが主に描かれている。インギは、ポルノ映画監督なのに誠実であり、優しくて、お茶目なところをみると人間性はよいのだ。ヨギョンがインギと一緒にいるときは表情がいつも和らぎ、ヨギョンの気持ちは少しづつであるがインギに傾こうとしているのだ。
二人が構想したピエロとサーカス団長の娘との悲恋物語はこのようなものである。主人公のピエロ(パク・チュンフン)は、サーカス団長(ミン・ギョンジン)の娘(ソン・ユナ)に片思いしている。団長の娘は空中ブランコを実演しており、このサーカス団のスターの青年と恋仲であり、ピエロは叶わぬ恋であることはわかっていた。そんなときにサーカス団は経営難に陥り、スターの青年が去っていったことでさらに衰退していき、ピエロは愛する団長の娘のために無理な曲芸に挑んで死んでしまうというお話である。映画のシナリオの世界で登場する人物たちは、現実の世界の人物たちが配役をやっているので、誰がどの配役を演じているのかという点もおもしろいところなので、こちらの方も注目して楽しんでもらいたい。
中盤以降は、完成したシナリオがどのような形で映画化されていくのか、ヨギョンがミョンジュンに対して片思いしていた結末、ジニがインギに対して片思いしていた結末、インギとヨギョンの微妙な恋の関係をみせている。そして映画界の厳しさを実感するインギの葛藤も感じられるでだろう。
全体像としては、二つの世界(現実とシナリオ)を軸に、所々リンクしていたり、インギとピエロの心情が重なるような演出もされているので鑑賞しやすいと感じる。インギとヨギョンが個々に抱えているものをうまく表現されているから内容としては悪くはない。そして不思議なオープニングになっているが、これは伏線になっており、しっかりと最後に繋がっている。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★