サスペンス中心で少しホラーという作品。外科手術シーンは大丈夫だろうが、ヒヨコをボールのように壁に投げつけて殺すところは目をそむけたくなるかもしれない。男優四人が中心に出演しているが、俳優の魅力で鑑賞するよりは内容で鑑賞するものであろう。
リターン
制作年:2007年
監督:イ・ギュマン
出演:キム・ミョンミン、ユ・ジュンサン、キム・テウ、チョン・ユソク
ジャンル:サスペンス、ホラー
鑑賞:韓国版DVD
25年前、10歳の少年サンウ(ペク・スンファン)は心臓の手術を受けるが、手術中に全身麻酔をしているのに意識が覚醒してしまい、苦痛に絶えながら手術を終えた。サンウは、心臓手術には成功したが、手術中に意識が覚醒したことで精神的に病んでしまった。精神科で治療をしたが一向に直らないことで催眠治療をすることで手術時の記憶を閉じこめた。日常生活に戻ったサンウであったが、残酷な行動をしだして、ついに同じ学校に通う小学生の女の子を殺害してしまう。
25年後の現在、敏腕な外科医ジェウ(キム・ミョンミン)は執刀手術中に死亡してしまった患者の夫であるイ・ミョンソク(キム・レハ)から脅迫をされて、夢に魘される日々が続いた。ジェウの妻ヒジン(キム・ユミ)が夫を家で待っていたときに、ジェウの幼なじみでアメリカから帰国したばかりのウックァン(ユ・ジュンサン)が訪ねてきて、その後帰宅したジェウと三人で昔話しをしながら楽しい時間を過ごした。ある日、麻酔が不可能な患者の手術のために、外科医ジェウは麻酔科医のチャン・ソクホ(チョン・ユソク)と精神科医オ・チフン(キム・テウ)と一緒に催眠麻酔によって手術を実行する。公園のベンチで読書をしていたヒジンは、ある人物によって何かをされて帰宅した後、自宅で体調が急変したため救急車でジェウの病院に運ばれた。検査から異物が体内に混入していることがわかり緊急手術が必要であった。難しい手術という条件で、外科医がジェウしかおらず、他の病院へ移動することも考えたが時間が経つと困難になるので、ジェウがこの手術に執刀することを決めた。異物を取り出して手術は成功したかにみえたが、突然ヒジンが苦しみだして亡くなってしまった。ヒジンに誰がどのようにして異物を混入させたのか、そしてジェウの周辺で不可思議な出来事が起こるがどのような謎が潜んでいるのかというお話。
監督は、本作デビュー作のイ・ギュマン監督。
出演者は、外科医リュ・ジェウを演じるのは『鳥肌』『Mirror 鏡の中 (原題:鏡の中へ)』のキム・ミョンミン、アメリカ帰りのジェウの友人カン・ウックァンを演じるのは『僕は彼女をはなさない (原題:ショーショーショー)』『ウェディング・キャンペーン (原題:私の結婚遠征記)』のユ・ジュンサン、精神科医オ・チフンを演じるのは『浜辺の女』『奇談』のキム・テウ、麻酔科医チャン・ソクホを演じるのは『ユア・マイ・サンシャイン (原題:君は僕の運命)』のチョン・ユソク、ジェウの妻ヒジンを演じるのは『人形霊』『愛の傷 (原題:シュロの木の森)』のキム・ユミ、ジェウの執刀手術中に死亡した患者の夫イ・ミョンソクを演じるのは『恋の罠 (原題:淫乱書生)』『グエムル 漢江の怪物』のキム・レハ。
25年前と現在という二つの時間軸が存在しており、過去と現在がどのように結びついているのか、現在で起こっている死亡する人物たちとどのような接点があるのかが焦点になっている。25年前、少年の開胸手術の生々しいシーン、少年がヒヨコを壁に投げつけて殺すといった残虐シーン、学校の野外にあるドッポン便所の便器底からみえる少女の死体といったホラー要素を交えた展開になっている。それらの出来事が起こってから急に現在に飛ぶ構成になっており、時々過去と現在が交錯するような作りになっているので考えながら観るようになっている。序盤のホラー要素が強いことでホラー映画のように感じるかもしれないが、ストーリーが進行していくに連れて緻密に考えられたサスペンス映画になっているのだ。過去の挿入シーンや現在軸でのアイテムから幾つかの伏線を入れていることで、過去と現在の繋がりや死亡する人物の謎がみえるのだ。
25年前の流れで、現在に場面が変わりジェウがイ・ミョンソクから妻ヒソンを攻撃するような脅迫電話を受けたり、ヒソンが車を運転しているときにフロントガラスに植木鉢が落下したり、ヒソンが一人で自宅にいるときに怪しい風貌でウックァンが登場したりとかなりホラー要素を強調しているがみえる。ホラーからサスペンスへと切り替わっていく進行もよくて、先が読みづらい作りにして今後どのようにストーリーが展開していくのかと考えるであろう。
ヒソンの死によってストーリーが急変していき、どのようにしてヒソンの体内に異物が混入したのか、それを行ったのはジェウに脅迫していたイ・ミョンソクではないかと疑い出した矢先にイ・ミョンソクが亡くなったのだ。ジェウは、ヒソンの死亡状況やイ・ミョンソクの血液解析から他殺であることを見つけだして、親友ウックァンと一緒に謎を捜査していく。謎を追っていくほど、誰もが怪しいくみえてくるのがこの作品のおもしろいところだ。妻ヒソンを手術中に亡くしてしまった外科医ジェウ、突然連絡も無しにアメリカから帰国したウックァン、「手術中の覚醒」を冒頭のテーマにしていることや過去の回想シーンで催眠時に怪しい言葉を発していた麻酔科医ソクホ、催眠術を使いこなせることや怪しい存在の精神科医チフンといった四人の男が、謎を追うことと同時に容疑者になっているのだ。
謎を解いていくことで、登場人物の家族たちが不可思議な事故や殺人で亡くなっていたり、25年前の少年サンウと関連があったり、展開が二転三転するようになっていることでなかなか凝ったシナリオになっているのだ。幾つかの伏線によって、謎を仕組んでいる人物が誰であるかは気づくと思うが、どのように実行していくのかがおもろしくみせている。
作品の冒頭で「手術中の覚醒」を字幕で説明しており、全身麻酔を受けた患者が手術中に意識を戻し、意識があるのに声を出すことができなかったり体が動かすことができず、手術中の痛みを感じる現象を示しており、現実にアメリカで0.1%の確率で起こっていたり、これを経験した患者のほとんどがPTSDになることを説明している。ボクも過去に外科手術をした経験があるが、全身麻酔をしている状態で覚醒したことはない。でも局部麻酔をして首の腫瘍の摘出手術をしているときに、途中で麻酔が切れてすっげ~~~痛くて喘ぎ、追加で麻酔をしてもらった経験があるぐらいだ。あの体内の肉が切られている感覚は鮮明に覚えており、徐々に麻酔が切れていく段階が一番記憶に残ってしまった。ちょっとホラーチックなレビューでごめんなさい。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★