韓フェス2007ルネサンスで人気投票で第一位になった作品。なぜ、前評判が良いのかが分からないのが正直なところだ。神話ファンの組織票なのかな。
ベテラン俳優たちの演技はピカイチなのだが、ストーリーが軟弱だから損をしている。
ウォンタクの天使
制作年:2006年
監督:クォン・ソングク
出演:イ・ミヌ、ハ・ドンフン、イム・ハリョン、キム・サンジュン
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ、SF
鑑賞:日本版DVD
刑務所に服役している中年カン・ヨンギュ(イム・ハリョン)は、もうすぐ出所間近である。刑務所内でキックベースボールをしている中、ヤクザのソクチョ(キム・サンジュン)の強引な誘いもあり、レフトに守ったヨンギュはファールボールを追いかけているときにネットの柱に後頭部をぶつけて死んでしまった。霊安室に遺体となって寝ているヨンギュは、魂が抜けて死んだ自分をみつめている。そのときに、天使(アン・ギルガン)がヨンギュのところに迎えにきた。ヨンギュは、天使に幼き頃から会っていない息子ウォンタク(イ・ミヌ)と再会して友達になりたいという要望を叶えてくれて、高校生ドンフン(ハ・ドンフン)として転生して限られた時間だけ生まれ変われることができた。天使は、出所したばかりのヤクザのソクチョが交通事故で亡くなるのでそっちに出向き、天使は違反を犯してソクチョの体に入り込み人間界で限られた時間に生きることにした。父ヨンギュは、息子ウォンタクと再会して二人の関係はどのようになるのか、そしてソクチョの体に入り込んだ天使は何の目的でこのような行動を起こしたのかというお話。
監督は、本作デビュー作のクォン・ソングク監督。
出演者は、高校生ウォンタクを演じるのは本作スクリンデビューのイ・ミヌ、ウォンタクの父ヨンギュが生まれ変わった高校生ドンフンを演じるのは『恋愛術士』のハ・ドンフン、ウォンタクの父ヨンギュを演じるのは『トンマッコルへようこそ (原題:ウェルカム・トゥー・トンマッコル)』『裸足のキボン』のイム・ハリョン、ヤクザの親分ソクチョを演じるのは『マイ・ボス マイ・ヒーロー2 リターンズ (原題:闘師父一体)』『韓半島』のキム・サンジュン、天使を演じるのは『美しき野獣』『相棒 シティ・オブ・バイオレンス』のアン・ギルガン、ウォンタクの母を演じるのは『若い男』『犬のような日の午後』のキム・ボヨン。
コメディを土台にして、高校生のウォンタクの学園生活をおもしろおかしくし、そこに転生した父(ドンフン)との交流、妻と息子を含む家族愛、一方で天使の方でも同じような展開をみせるつくりである。
舞台となるのは高校生ウォンタクの学園生活が主軸となり、そこに転生した父が高校生ドンフンとしてウォンタクに近づき、友人関係を築いていく流れである。笑いとしては、ドンフンとウォンタクの世代ギャップであろう。ネットカフェでのパソコンの使い方、ハンバーガーショップでの出来事、エロCD-Rの焼き方、UFOキャッチャーなどなど定番のような笑いである。悪で知られるウォンタクと友人2人の中に無理矢理入ってくるドンフンの空気の読めない行動はおもしろいが、それ以外のお約束のようなギャグはおもしろくない。
ドンフンが体を張って守った行為がウォンタクの心を動かし、ウォンタクとドンフンの不釣合いな友情が生まれる。この経緯も軽いものに見えてしまい、二人の仲を近づける出来事としてはもう少しアイデアを出してほしいところだ。二人の友情が進むころで、家族愛を主としたヒューマンドラマへと移行していく。妻や息子への想い、アイテムを使った息子への感情表現、家族写真などが感動を誘うところであろう。
一方、天使の行動がサイドストーリーとして展開されている。ヤクザのソクチョが亡くなったから迎えにいったと思いきや、天使がソクチョの肉体を使って入り込み、この世界でやり残したことを実行するのだ。事故で入院したソクチョ(魂は天使)は、看病をしてくれた看護婦と親しくなっていき、退院後に食事に誘うなどしてデートをする。二人の関係は終盤にならないと発展しないことと、二人の本当の関係というのも鑑賞しているうちに自ずと気づくであろう。天使のサイドストーリーと父ヨンギュのメインストーリーと接点がないのが残念なところで、何らかの形で交差するようにすれば、ストーリーが膨らみ様々なドラマが生まれやすいのにと勿体ない感じがした。
死者が限られた時間だけこの世に戻ってやり残したことを行うといった内容の映画はたくさんある。だから、もう少し個性を出してほしいのが本音である。コメディを軸にしているところが個性かもしれないが、当たり前のように中盤以降は家族愛を全面に出したヒューマンドラマになっているのが物足りなさを感じる。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★