来年一般公開される本作品。個人的にリメイクものって苦手である。特にハリウッド映画のリメイクものは、なんだかさえないといつも感じてしまう。本作品は、リメイクものとしては良いほうかな。
黒い家
制作年:2007年
監督:シン・テラ
出演:ファン・ジョンミン、ユソン、カン・シニル、キム・ソヒョン
ジャンル:ホラー
鑑賞:韓国版DVD
チョン・ジュノ(ファン・ジョンミン)は、保険会社に再就職した。ジュノは出勤初日に、ある女性から自殺した場合でも保険金が受給されるのかという相談の電話を受ける。まだ保険会社の規則を把握していないジュノは、電話口の女性に自殺しないように自分の過去を例に出して説得したり、自分の名前を告げて親身になって応対してしまった。数日後、ジュノは初対面である保険加入者パク・チュンベ(カン・シニル)から訪問を要請する電話を受ける。怪しい一戸建ての家に上がり込んだジュノは、チュンベと話しをしている際に、7歳の息子の話しが出たことで隣りの部屋にいる息子と対面させるために、ジュノがドアを開けたら首を吊って死んでいるチュンベの息子を発見する。警察が死体解剖をして自殺か他殺かを調べているのに、チュンベは自殺だと断定して保険会社に保険料を支払うように毎日午後三時に保険会社に出向いてくる。死体解剖の結果から自殺であると立証されたことで、チュンベに保険金が支払われることになった。だが、ジュノがチュンベの息子の死体を発見したときに明らかに怪しい素振りをしていたチュンベをみて、さらに息子の死を悲しまず真っ先に保険金のことを口走ることから、これは自殺にみせかけた他殺ではないかと疑う。ジュノは、チュンベの身元を調べていくと、亡くなった息子は再婚した妻シン・イファ(ユソン)の連れ子であることがわかり、しかも妻にも生命保険がかけられていることがわかった。ジュノは、怪しいチュンベの陰謀からシン・イファを救おうと彼女宛に手紙を送った。しかし、その手紙は全く効果がなく、更なる悲劇が起こっていく。ジュノは次々と起こる謎の事件を探っていくなかで、どのような真実にたどりつくのかというお話。
監督は、本作がデビュー作のシン・テラ監督。出演者は、保険会社の調査員チョン・ジュノを演じるのは『ユア・マイ・サンシャイン (原題:君は僕の運命)』『私の生涯で最も美しい一週間』のファン・ジョンミン、シン・イファを演じるのは『4人の食卓』『鬘 かつら』のユソン、パク・チュンベを演じるのは『Mr.ソクラテス』『私たちの幸せな時間』のカン・シニル、ジュノの恋人で医師のミナを演じるのは『欲望 Lovers (原題:おいしいセックス、そして愛)』『VOICE ヴォイス (原題:女高怪談4:声)』のキム・ソヒョン、ジュノの上司サンスを演じるのは『孟父三遷之教』『春が来れば (原題:花咲く春が来れば)』のキム・ジョンソク、特殊調査員ヨンシクを演じるのは『トンマッコルへようこそ (原題:ウェルカム・トゥー・トンマッコル)』『四月の雪』のユ・スンモク。
原作本は1997年に発売された貴志祐介の「黒い家」、1999年に日本で森田芳光監督が映画化されており、本作はリメイク作品である。韓国版は本格派ホラーという感じで、映像的な恐怖と内面的な恐怖を備えたものになっている。因みに日本版は、映像的な恐怖はやや軽めであるが内面的な恐怖が強烈になっている。恐怖の中にもユーモアを取り入れて工夫されており、なにより大竹しのぶの怪演が輝き、主人公を食ってしまうぐらいのキャラクターである。
日本版にはなかったジュノの少年時代のトラウマが取り入れられている。両親の愛情が病弱な弟に向いていたことの嫉妬から弟に意地悪をしていたジュノは、精神的に参ってしまった弟がジュノの目のまえでビルから飛び下り自殺をした出来事である。身内が亡くなる悲しさを一生背負っていくことを知っているために、相談電話に親身になって応えていたのである。ジュノのトラウマが、人間としての正常な心理状態なのか、それとも息子が亡くなったチュンベやイファのような平然としている心理状態をどのようにみるのかがポイントになっている。ジュノが、チュンベやイファの過去を調べていくことで二人は一般の人間が持っている感情が欠落している病気でサイコパスであるのがわかる。もう少し作品中でサイコパスの説明をしていればと思われ、日本版では心理学的な観点で詳細に説明されているからだ。(日本版ではサイコパスという表現はしていない)
ジュノの恋人ミナの存在は、医師という職業のために時間が不規則なのがみえる。それでもお互いの生活スタイルを尊重しているのがわかり、仲が良いのがわかる。そのために、ジュノにとってミナは欠点にもなってしまっているのだ。それは中盤以降に起こる出来事でわかることだ。
映像的な恐怖は、失禁している少年の首吊りシーン、ジュノ家に毎日留守番電話がフルに録音されていたり、特殊調査員ヨンシクの殺害シーン、チュンベの負傷シーン、イファの行動といったホラー作品らしい恐怖が描かれている。内面的な恐怖は、ジュノが毎日不安に怯える心理状態や過去のトラウマを思い起こすところ、チュンベとイファの心理状態をうまく恐怖にみせている。
原作をベースにして脚色をあまり加えていないことから新鮮さが不足していると感じてしまった。そして日本版の大竹しのぶが強烈すぎたので、どうしてもイファが物足りなく感じてしまう。でも、内容としては本格派ホラーとしてよくできている方であり、内面からくる恐怖の作りはちゃんと表現されていた。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★