新たな気持ちで201本目のレビュー。2006年12月に日本で劇場公開された作品。コメディとしては大して笑えないし、アクションとしては迫力がない中途半端な感じである。
Mr.ソクラテス (原題:ミスター・ソクラテス)
制作年:2005年
監督:チェ・ジノン
出演:キム・レウォン、カン・シニル、イ・ジョンヒョク、ユン・テヨン
ジャンル:アクション、コメディ
鑑賞:日本版DVD
周囲から恐れられていた不良青年のドンヒョク(キム・レウォン)は、ヤクザ組織に拉致された。そのヤクザ組織とは、バカで何も疑わない奴を選択して警察組織にスパイとして忍び込ませるのだ。今まで警察組織にスパイしていた者が死亡したために新しい人材としてドンヒョクが選ばれた。古ぼけた廃校に閉じこめ、ドンヒョクを教育するのがボムピョ先生(カン・シニル)である。ボムピョ先生は軍隊経験と刑務所暮らし経験があり、ヤクザ組織の中では偉い存在の人物である。教育する内容は、受験勉強をして検定試験、警察官採用試験に合格するための勉強である。強制的に勉強をさせられたドンヒョクは、見事に検定試験、警察官採用試験を突破して交通課の警官になった。ヤクザ組織の手助けもありドンヒョクは幾つもの事件を解決して、ついに凶悪犯罪を扱う強力班の刑事になった。刑事となったドンヒョクは、服役している父、不良の弟ドンピル(ホ・ジョンミン)、直属の上司シン・テソプ班長(イ・ジョンヒョク)と接して正義の道に目覚め始めていた。だが、ドンヒョクが刑事まで育ててくれたヤクザ組織の陰謀がわかり、ドンヒョクの心の中で葛藤しだす。果たして、ドンヒョクは刑事として正義を貫く選択をするのか、それともヤクザ組織の目的通りスパイとしてずっと潜り込んでいくのかというお話。
監督は、『ファミリー』のチェ・ジノン監督。出演者は、ヤクザ組織のスパイとして刑事になったドンヒョクを演じるのは『アメノナカノ青空 (原題:...ing)』『マイ・リトル・ブライド (原題:幼い新婦)』のキム・レウォン、ヤクザ組織のボムピョ先生を演じるのは『Some(サム)』『公共の敵2』のカン・シニル、ドンヒョク刑事の上司シン・テソプ班長を演じるのは『マルチュク青春通り (原題:マルチュク通り残酷史)』『シンソッキ・ブルース』のイ・ジョンヒョク、ヤクザ組織の仲間のチョ・デス弁護士を演じるのは『HEAVEN ヘブン (原題:天士夢)』『おまえを逮捕する (原題:強力3班)』のユン・テヨン、ヤクザ組織のボスのチャン・テチュン会長を演じるのは『4人の食卓』『ファミリー (原題:家族)』のチョン・ウク、ヤクザ組織のハンドゥを演じるのは『天国からの手紙 (原題:火星に行った男)』『無影剣』のパク・ソンウン。
ヤクザ組織らの陰謀により刑事となった元不良青年ドンヒョクが、何故自分が刑事になったのかという真実を知り、正義と悪の間にいる自分の存在を見つめなおし、自分の生き残りをめざすアクションコメディもの。
序盤は、不良青年ドンヒョクを強調するため電車内での悪行、友達が犯罪をして困って相談しているのに警察に通報して仲間を裏切ったり、服役している父との関係を描いている。ヤクザ組織に拉致されて教育を受けるが、反抗する態度をコメディタッチで表現している。暴力で押さえつけたり、ドラム缶に逆さずりにして水攻めをしたり、電車の線路に手錠で縛りつけて問題を解かせたり、逃亡もできずにこの勉強から逃れるには死ぬしかないと脅され、めちゃくちゃな行動で勉強させるのだ。警察になるまでの勉強シーンやヤクザ組織の行動やドンヒョクの父や弟の説明が長いために、途中で飽きてくるのが正直なところだ。本筋の警察とヤクザ組織の対立が描かれている後半のシーンが短くなってしまっているので、細かいところが描けずにショートカットしている感じを受けた。検定試験を受けるところと合格シーンはあるが、その先にある警察官採用試験までの道程がスッポリと抜けていきなり警察官になっているのは手抜きにしかみえない。
中盤以降は、交通課の警察官になったドンヒョクであるが、ヤクザ組織らはこの状態では使い物にならないから刑事まで昇進させ、刑事としてレベルを上げるために手助けをするのだ。ここもいい加減に作られており、ヤクザ組織の仲間たちが強盗を装ったふりをしてドンヒョクに捕まるようにしたり、ドンヒョク刑事の上司シン・テソプ班長が無理難題の事件を担当させるが、ヤクザ組織の力によってドンヒョクは事件を次々と解決していく。一番の見せ所である刑事とヤクザ組織の対立を描くシーンが時間上なのか短くなってしまい、全体の構成が完全に失敗している。
ヤクザ組織に絡んでいるチョ・デス弁護士やヤクザ組織のボス、警察側のシン・テソプ班長と検事との関係、ドンヒョクとシン・テソプ班長の関係をもっと多く描く必要があり、犯罪ものアクション色が弱くてコメディ色だけが強調して残ってしまっている。ドンヒョクの親子関係も今一歩であり、弟の位置も有効に使われていない。ドンヒョクがヤクザ組織の正体を知ってからが盛り上がるところだが、その状況をもう少し早い段階で描いていればヤクザ組織と警察のどちら側につくのかというドンヒョクの選択がおもしろく表現できたと思われる。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★