キャストが豪華だから多くの人が本作品のレビューをアップしていると思う。最近、日本未公開作品のアップが少ないが、決してネタ切れではない。今年、日本で劇場公開された作品を少しアップしたいからだ。
デイジー
制作年:2006年
監督:アンドリュー・ラウ
出演:チョン・ジヒョン、チョン・ウソン、イ・ソンジェ、チョン・ホジン
ジャンル:ラブストーリー、アクション
鑑賞:日本版DVD
オランダのアムステルダムで骨董店を営む祖父と暮らす画家の卵ヘヨン(チョン・ジヒョン)のもとに頻繁にデイジーの花が届けられる。以前にヘヨンが郊外で絵を描くために訪れたときに、丸太橋から川に落ちてしまい、流されてしまったバックと新しく頑丈に作られた橋がその場所にあった。ヘヨンは、姿がわからない人に礼として風景画を橋に置いてから、その人からデイジーの花が贈られ続けていた。ある日、広場で肖像画を描くヘヨンの前に客としてジョンウ(イ・ソンジェ)があのデイジーを花を持って現れた。ヘヨンはデイジーの花をみて、運命の人がようやく姿をみせたと思い込んでいたが、ジョンウは刑事として張り込みのために客に扮していた。それが幾度と続いたことで二人は親しくなっていった。そんなヘヨンの日々を見守り続ける殺し屋パクウィ(チョン・ウソン)こそ、ヘヨンにデイジーの花を贈っていた人なのだ。パクウィは自分が殺し屋であるために正体を明かせない理由があるから、このような行動をとっていた。ある日、広場で張り込みをしていたジョンウは、そこで銃撃戦になりヘヨンは銃弾が首に当たり喋れない体になり、殺し屋パクウィと撃ち合いになったジョンウも大怪我をしたため韓国に戻ることになった。広場で肖像画を描くそんなヘヨンのまえに姿を現したパクウィであった。一人の女性を愛する刑事と殺し屋の微妙な三角関係を描いたお話。
監督は、『インファナル・アフェア』『頭文字D THE MOVIE』の香港映画の巨匠アンドリュー・ラウ監督。出演者は、画家の卵ヘヨンを演じるのは『猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』のチョン・ジヒョン、殺し屋パクウィを演じるのは『MUSA -武士-』『私の頭の中の消しゴム』のチョン・ウソン、刑事ジョンウを演じるのは『風の伝説』『シンソッキ・ブルース』のイ・ソンジェ。
三角関係であるヘヨン、パクウィ、ジョンウのそれぞれの視点からみたものと犯罪ものアクションを加えたことで悲劇が起こっていく。韓国ラブストーリーに香港アクションを融合させる少し変わった作品になっている。序盤から中盤までは、ヘヨン、パクウィ、ジョンウの視点から過去から現在までを違う視点で三回繰り返す手法を撮っている。ヘヨンからは、郊外での忘れ難い記憶を蘇らせるようにしている。なぜ新しく橋が出来ているのか、なぜデイジーの花が届くのかと姿がみえない憧れの人を愛するようになる。ジョンウが持っていたデイジーの花と偶然出会うことで運命を感じて、彼のことで頭がいっぱいになっていく。ジョンウからは、刑事として張り込みのためにヘヨンの客に成りすましていただけだったが、いつも会っていることで彼女に惹かれていく。デイジーの花は標的を騙すためのカモフラージュのためにたまたま花屋で買ったものなのだ。パクウィからは、郊外でたまたまヘヨンの姿をみつけ一目ぼれのような形で惚れて、彼女を助けるために橋を作り、デイジーの花言葉「心に秘めた愛」をアピールするためにデイジーの花をヘヨンに贈り、アムステルダムの広場近くにアパートを借りてヘヨンを遠くから見つめる。一つの現在を三つのプロセスを経て、時間軸を一致される手法はおもしろさがある。言葉よりも表情の演技がかなり多いこの作品において、三人の心情をどのように読み取っていくのかという楽しさがある。
三人の視点が終わると銃撃戦になり、三人の運命が変わっていくのだ。ヘヨンは声を失う障害をもちながら今も愛しているジョンウを待ち、ジョンウは大怪我をして韓国に戻りヘヨンに怪我を負わせたことの失望感をもちながら今もヘヨンを愛していた。そこに恋のライバルがいなくなりパクウィはヘヨンに行動を起こすのである。ヘヨンとパクウィが親しくなり、突然ヘヨンの家に訪れるジョンウの三分割されたシーンは見せ場でもある。表情で感情を表現している三人の気持ちの揺れをとらえているからだ。そして三人の感情のすれ違いでもあるのだ。
ジョンウは職務で自らの命を張って囮捜査で殺し屋を誘き出すのだが、標的になっているジョンウをボスから指令された殺し屋パクウィのかけひきが見物である。ジョンウの運命の出来事の後、ヘヨンとパクウィが親密になっているのが不満でこの過程はちゃんと説明するような映像を入れてほしい。
伏線をいっぱい張りまくった作品になっているが、どれもこの伏線は観客に向けてでなくヘヨンに向けて伏線を張って事実を知らせるようにみえる。終盤でのシーンを含めて三者三様で一途な愛をみせつけるものになっている。ラストの狙撃や雨宿りしているところ、モノクロからカラーに切り替わる演出は個人的に気に入っているところだ。
舞台をオランダであることで古風あるヨーロッパの町並みや郊外の緑豊かな草原の映像美が楽しめる。白い花びらのデイジーの花や黒いチューリップもうまく演出されている。不満点もあり、登場人物が主役の三人、インターポールの上司、ヘヨンの祖父と韓国人を揃えていることでもう少し国際色を出す形で名のある外国人を出演させてほしかった。殺し屋のボスを演じる香港の俳優デビッド・チャンだけだったからだ。そして、言葉もなぜオランダで英語?っていうのが違和感があった。デビッド・チャン演じる殺し屋のボスは広東語を話しているのに、町の人たちとの会話は全て英語になっている。全体のリズム、映像の見せ方、演出などはアンドリュー・ラウ監督らしいのが特長的だ。正直な気持ち、香港を舞台で香港の俳優でこの作品をみてみたかった。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★