シネマコリア2006/東京会場で鑑賞。ゲストが豪華でキム・ソンホ監督、ミン・ドンヒョン監督、森透江、杉野希妃、塩田貞治、ハリム(『空港男女』の音楽監督)、安藤大佑(『宝島』スタッフ)とこれだけでも価値のあるものであった。今回のシネマコリア2006は都合により2作品しか鑑賞していないため、未鑑賞な作品はこれからDVDを購入することで我慢する。
まぶしい一日
制作年:2006年
監督:キム・ソンホ、キム・ジョングァン、ミン・ドンヒョン
出演:森透江、杉野希妃、キム・ドンヨン、チョン・デフン、イ・ソヨン、塩田貞治
ジャンル:オムニバス
鑑賞:シネマコリア2006
若い世代の三人の監督が、一日の出来事によって日本と韓国の若者の出会いと成長を表現した青春ドラマ。
■エピソード1 『宝島』
監督はキム・ソンホ、出演は森透江、杉野希妃。
ミエ(森透江)は祖父が太平洋戦争のときに仕事で朝鮮半島に住んでいたことを死に際にきかされる。祖父は済州島の翰林の赤い木の下に宝物を埋めたという話をし、ミエは友達のエイコ(杉野希妃)と一緒に済州島に行く。だが、済州空港の両替所は開いておらず、困った二人に近づいてきたのが両替屋の怪しい男。二人がその男と両替中に警察が現れて、その男は旅行者に対して詐欺を行っていることで捕まりその場は助かる。お金がなくタクシーから強制的におろされたり、4人の男に絡まれたりとトラブルが続く。果たして、ミエは祖父が残した宝物を無事に見つけることができるのかというお話。
『Mirror 鏡の中』で長編映画監督として実績を残しているキム・ソンホ監督。出演者の森透江と杉野希妃は韓国にいる日本人というコンセプトでオーデションを開き選ばれた二人。二人とも韓国の大学に留学しており、役者としての経歴は森透江は幾つかの日本の作品に出演している。本作品でもキーポイントになるが杉野希妃は在日韓国人3世、キム・ギドク監督の新作『時間』に出演している。済州島の空港から祖父の宝物が埋まっている場所に行くロードムービー系の作品である。済州空港での無口な二人の態度をみていると初めはミエとエイコは他人かと思うであろう。このような状態になった理由はその後にわかる。少し突っ込んで述べてしまうが、道端で壊れていたスクーターを拾い走り、下りて休憩しているところに現れた悪ガキ4人組みの男には腹が立ってしかたがない。なんだか、日本人にならなにやってもいいような感じでミエとエイコに暴力を振るうことや竹島を例にとって日本人はなんでも盗むとかかなりの反日的な態度をとる。そのときにエイコが在日韓国人であることを暴露してミエと行動が別々になってしまう。エイコは拾ったスクーターの本当の持ち主と出会い心を癒してもらう。ミエは祖父の宝物を見つけ、祖父が死ぬまで隠してきた過去がわかる。この作品だが、翻訳者が違うとかなり印象が違った形になるのではと感じてしまった。悪ガキ4人組みがミエとエイコに対して韓国語で差別用語を使ったり、スクーターの持ち主が歌う歌詞をじっくり聴いていると英語歌詞の部分でオブラートに包んだ訳をつけている。そして、ミエ寄りの視点とエイコ寄りの視点でも作品の見方が少し変わるだろう。在日韓国人であることで苦悩するエイコ、冷静に物事を直視して最後は祖父の秘密を知って崩れるミエ。社会的にも意外とメッセージ性が強い作品でもあると感じた。
■エピソード2 『母をたずねて三千里』
監督はキム・ジョングァン、出演はキム・ドンヨン、チョン・デフン。
ノートパンコンをつかった詐欺をしてお金を稼いでいる高校生ジョンファン(キム・ドンヨン)とその友人ヨンス(チョン・デフン)。このようなことをしている理由はジョンファンの母が日本へ行ってしまったために旅費を稼いでいる。高校生活も大学受験をしない彼ら二人にとって退屈な時間であり、学校を抜け出す日々である。母が行った日本の土地に希望をみているジョンファンである。ジョンファンは日本に行き、母に会うことができるのかというお話。
キム・ジョングァン監督は短編映画では名が売れている監督である。出演のキム・ドンヨンとチョン・デフンは多くの作品に出演している俳優でよく見かける。題名の通り母をたずねるために詐欺をして旅費を稼ぐ高校生ジョンファンが主人公の内容であるが、ジョンファンとヨンスの高校生活の内容が重視している。盗んだノートパソコンを売り、売ったノートパソコンを買い手から取り返すといったせこい手口なのでもう少し知恵を出してほしい。単純に韓国から日本の旅費って非常に安く感じるのだが、1ヶ月間まともなアルバイトでもすれば稼げる額だと思うが。非常に残念だったのが日本でのシーンが少なく終盤の数分で、渋谷の街並みだけ。訴えたいことが日本は希望の土地でないことを表現したいからだと思われるが。渋谷よりは新宿の方がこの作品のイメージにいいのではと感じた。
■エピソード3 『空港男女』
監督はミン・ドンヒョン、出演はイ・ソヨン、塩田貞治。
観光ガイド雑誌で記者をしている石田(塩田貞治)は出張で韓国に来ていた。日本に帰国するために急いで仁川空港の受付カウンターに向かう途中、空港ロビーで空港の書店に働くオ・ゴニ(イ・ソヨン)とぶつかり、飛行機に乗り遅れてしまう。石田は結局翌朝の便で日本に戻ることになり、空港で朝になるまで待つことにした。ゴニは仕事で失敗しておっちょこちょいな性格であるが、明るい性格でもある。ゴニは仕事が終わり帰宅用の空港バスに乗る間際に、店に携帯電話を忘れたことに気づき戻り、そのときにまた石田と空港内で出会い、二人は自分の国の言葉しか話せないが、一緒に空港で翌朝の便を待つことになるお話。
三作品の中で一番若いミン・ドンヒョン監督。実績としては『ケンカの技術』で脚本を監督と共作している。出演のイ・ソヨンは映画『スキャンダル』やTVドラマで活躍しているので今後スクリーンで活躍する若手女優だろう。塩田貞治は日本映画で幾つか出演している俳優であるが有名ではない。ちょっとドジでひ弱な石田が、空港の書店で働くオ・ゴニと出会い、長い一日を過ごす。石田というキャラクターがやけに強調された形になっており、おもしろいダメキャラが塩田貞治にうまくマッチしている。二人は自国の言葉で会話をするのだが、理解できている部分とできてない部分が混同していてお互いが話しを進めるのがおもしろい。このような状況は海外旅行に行く人は意外と共感するところでもある。海外に行けば言葉の壁にぶつかるが、何だかんだ言っても日本語だけでもなんとかなる。屋上に行って夜空を見上げ風を感じるところは非常に好きなシーンで、そしてゴニの肩に寄り添って寝てしまう石田もうまい設定である。さわやかな内容で『まぶしい一日』の中では本作品が一番おもしろい。
お薦め順位をつけると、こんな感じてある。『空港男女』>『宝島』>『母をたずねて三千里』
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★