木浦は港だ
制作年:2004年
監督:キム・ジフン
出演:チョ・ジェヒョン、チャ・インピョ、ソン・ソンミ、ソン・ビョンホ
ジャンル:コメディ
鑑賞:韓流シネマ・フェスティバル2005
ソウルの刑事イ・スチォル(チョ・ジェヒョン)はべク・ソンギ(チャ・インピョ)一派内部の麻薬ルートを探るために木浦のヤクザのソンギ組に潜入する。初め、ベク・ソンギと監房を共にしたチョ・テボムからの推薦書をイム・ジャギョン検事(ソン・ソンミ)が手に入れて、それをイ・スチョル刑事に渡す。その推薦書を持ってベク・ソンギを訪ねたイ・スチョル刑事は失敗。イ・スチョル刑事は自分の方法で潜入すると言って、ソンギ組の末端ヤクザになる。宝船探査事業誘致のための武術試合にソンギ組を代表するボクシング選手としてイ・スチョルが抜擢された。劇的なというかずるいKO勝ちをしたイ・スチョルは、これを期にソンギ組で出世した。べク・ソンギの右腕となったイ・スチョルは、麻薬密売の証拠を手に入れてソウルに戻ることができるかというお話。
本作がデビュー作のキム・ジフン監督。出演者は、『悪い男』『清風明月』の
チャン・ヒョクチョ・ジェヒョン、『ドクターK』『ボリウルの夏』のチャ・インピョのベテラン俳優がメイン。そして、検事役にはヒロイン的存在のソン・ソンミを起用している。朝鮮半島の南西にある木浦(モッポ)が舞台で、景色は海が見える田舎町である。本作品は、2004年 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 グランプリを獲得した。
ソンギ組の麻薬密売の証拠を得るためにソウルの刑事イ・スチォルを潜入させる。組員になるまで大変な苦労をする。組員になったはいいが、末端組員で末端の中3人の先輩にパシリになっている。パシリっぷりがおかしくてしょうがない。この3人の先輩とは最後までコントのようなやりとりをする。笑いのツボに入ったので3人の先輩が出て来るだけでおもしろくてしょうがない。ボクシングの試合で勝ったイ・スチォルは、べク・ソンギの一番の弟分に出世して、ようやく潜入捜査ができる環境になった。そこそこ会っていたイム・ジャギョン検事とイ・スチォル刑事は、二人が一緒にいるところをべク・ソンギに見られてしまい、とっさにイ・スチォル刑事は彼女はイトコだと言って誤魔化した。しかし、べク・ソンギはイム・ジャギョン検事のことを一目ぼれし、メロメロになってしまう。
緑色のジャージを着た末端ヤクザの下働きから這い上がり出世して行く過程はテンポよく進み、みていてみやすい。軽快なギャグをうまいタイミングで入れているので笑いがたえない。べク・ソンギ親分は、本当は純情な心の持ち主である。『猟奇的な彼女』のクライマックスシーン(チョン・ジヒョン演じる彼女が山頂でチャ・テヒョン演じるキョヌに「キョヌ~、ミヤネ~」、「キョヌ~、ミヤネ~」と叫ぶシーン)、『8月のクリスマス』のクライマックスシーン(ハン・ソッキュ演じる青年と若い婦人警官を演じるシム・ウナが抱き合うシーン)を観て号泣している。べク・ソンギが鑑賞している映画のシーンをそのまま映している。しかも、パロディーチックに編集している箇所もある。
イ・スチォルが末端ヤクザの時につけられた「裏切り者」というあだ名が最後にちゃんと伏線になっている。イム・ジャギョン検事とイ・スチォル刑事は、本当のべク・ソンギの人間性をみることで情が生まれるのがわかる。ラストシーンも「おっ!」と意外な展開で幕を閉じるので見応えがある。チョ・ジェヒョンは、キム・ギドク監督作品に多数出演している俳優で、クセのある役柄ばかり演じているイメージだった。本作では、まともな人間でおもしろい刑事を演じているので演技の幅が広いなと感心した。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★