もう我慢できない (原題:耐えられない。)
制作年:2010年
監督:クォン・チリン
出演:チュ・ジャヒョン、チョン・チャン、ハン・スヨン、キム・フンス
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
鑑賞:日本版DVD
出版社でチーム長をしている32歳の独身女性カン・ジフン(チュ・ジャヒョン)は、会社からリストラされてしまい、7年つきあっていた売れないたミュージシャンの恋人ジョンヨン(コジョン)と別れることになる。ジフンは元同僚たちと酒を呑みに行ったところ、ヤクザ風の二人の男にからまれ、ジフンは男の頭を酒瓶で殴って警察署に留置される。被害者は全治八週間の怪我をして、傷害罪で逮捕されて裁判するか、示談金を払って示談で穏便にするか、選択をせがまれている。毎回ジフンの面会に来ている親友ギョンリン(ハン・スヨン)は、ジフンが二つの選択から示談を選び、示談金を支払うために自分のマンションを引き払い、足りない分はギョンリンが工面する。仕事も住むところも失ったジフンは困り果て、親友ギョンリンは空き部屋があるから一緒に住むことを提案する。ギョンリンは結婚しており、医師をしている夫ミョンウォン(チョン・チャン)とも同居することになり、少しの間ということだからミョンウォンも協力する。ジフンは再就職するために会社巡りをするがなかなか決まらず、そんなときバッティングセンターでストレス発散にバットを振っていたら、隣に偶然にもミョンウォンがおり、過去の話しをしていくうちに二人は仲良くなり、テレビの野球鑑賞が趣味のミョンウォンと一緒に騒ぐようになる。一方、幸せそうなギョンリンにも悩みがあり、子供が欲しくてもできないため、夫の病院で不妊治療をしている。今まで夜まで夫の帰りを待つ専業主婦のギョンリンだったが、ボルダリング教室に通い始め、そこで助けてくれた魅力的な男性に心惹かれてしまう。ある日、夫の病院で検査に行ったとき、レントゲンを撮るため放射線科に行くと、ボルダリング教室にいたあの男性が放射線技師として働いていた。放射線技師ドンジュ(キム・フンス)は、ギョンリンに撮影するから金属が付いているブラジャーを外すよう云ったり、ベッドに横たわるギョンリンを撮影のために触り、ギョンリンは緊張してしまう。ミョンウォン医師は、放射線技師ドンジュを可愛がっており、家に招待して一緒に食事をする。帰り際にドンジュがギョンリンにプレゼントを渡し、中身は下着であった。彼なりのアプローチの仕方で、戸惑うギョンリンは心が揺れる。リストラされたジフンのその後、若い放射線技師に惹かれるギョンリン、妻を愛しているがジフンと妙な関係になるミョンウォン、複数の女性と交際するやり手なドンジュ、この四人の関係はどのようになるのかというお話。
監督は、『シングルズ』『お熱いのがお好き』のクォン・チリン監督。
出演は、出版社のチーム長のカン・ジフンを演じるのは『美人図』『失踪』のチュ・ジャヒョン、医師のミョンウォンを演じるのは『不機嫌な男たち (原題:可能な変化たち)』のチョン・チャン、ジフンの友人でミョンウォンの妻のギョンリンを演じるのは『モダンボーイ』『あなたと私の21世紀』のハン・スヨン、放射線技師イ・ドンジュを演じるのは『悪いやつほどよく眠る』『パパは女の人が好き』のキム・フンス、ジフンの恋人ジョンヨンを演じるのは本作スクリンデビューのコジョン、編集長を演じるのは『キッチン』『怪盗ホン・ギルドン一族 (原題:ホン・ギルドンの後裔)』のキム・ボヨン、先輩医師スジを演じるのは『孤独がもがく時』のイ・ヨンギュ、ジフンの部下チヌを演じるのは『ベストセラー』『実家の母』のチョン・ヨンギ。
男二人と女二人の愛の関係を描いたものになっており、大人のラブストーリーといった感じである。最も主張していたところは、女性を主にして物語が構成されているところである。30代前半で独身女性ジフンがリストラされて、再就職がなかなか見つからず新たなジャンルに挑戦する。医師と結婚して幸せにみえるギョンリンだが子供に恵まれず、今まで同じ生活を繰り返していたところから抜け出し、放射線技師ドンジュと出会い恋へと発展していく。出版社の編集長(キム・ボヨ)は、子持ちで離婚しているシングルマザーで、元同僚ジフンとは公私に渡って付き合いがあり、ジフンの相談や愚痴を全て吸収してくれ、ジフンに活力を与えてくれる存在である。
夫ミョンウォンと妻ギョンリンの生活に入り込むジフンの堂々とした態度をみると、心が強いと関心してしまう。悪く云えば無神経なのだが、着飾らない性格をしていることで、ミョンウォンもジフンが自分の生活に入ってきても邪魔になっていないのがみえるのだ。妻の親友という立場にいるが、徐々にジフンがミョンウォンに心を奪われていくのである。
ギョンリンは、放射線技師ドンジュと危ない関係に進み、肉体を求めるようになり、不倫から愛へと変化していくのである。ギョンリンとドンジュが密会して車でキスしているのをみてしまったジフンは、説教をするわけでもなく、詮索しないようにして、あまり詳しいところまでは聞こうとしていないのだ。答えがみえているのに話すのは野暮なのがわかっていたからだろう。親友の不倫現場をみたときの状況判断というのも、なかなか面白いところでもある。
ギョンリンとドンジュの関係が明るみになるのは、二人が未来について密会して口論していたときに、ミョンウォンが聞いてしまったからである。その後、修羅場があり、家に戻らないギョンリン、家を出るときがきたと感じるジフン、ジフンがミョンウォンに自分の存在を問いかけたところから、新たな関係が出来てしまい、ジフンが苦悩していくのである。
終盤の作りは、二人の女性の決断をみせており、小説家として成功を目指すジフン、ミョンウォンと断ち切りギョンリンが動きだしていくのだ。夫婦、男女の独身という四人の登場人物が、夫婦が分解されて夫と独身女、妻と独身男の組み合わせになる不倫ものになっており、愛の形としては韓国では受けが悪いかもしれない。夫婦に子供がいないこともあり家族という形が薄れて、男女としてみせている。構成が日本映画に近いのと、30代女性の心情を語っているから、日本なら意外と受ける内容だと感じる。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★