日本版DVDで観たものを放置しておくのもなんだから、少しその作品のレビューを書いていく。新作も同時進行でいくかは状況次第かな。
スンピル失踪事件 ~スンピルくんはどこだ?~ (原題:チョン・スンピル失踪事件)
制作年:2009年
監督:カン・ソッポム
出演:イ・ボムス、キム・ミンソン、ソン・チャンミン
ジャンル:コメディ
鑑賞:日本版DVD
投資顧問会社で働くチョン・スンピル(イ・ボムス)は、500億ウォン規模のプロジェクトを担当しており、そのプロジェクトを行う日に、婚約者ミソン(キム・ミンソン)とウェディング・ドレス選びに出かける。ウェディング・ドレス選びも終わり、二人は車に乗り込み、そのときスンピルはタバコを買いにコンビニへ向かう。ミソンは、いくら車の中で待っていても、スンピルが戻ってこないことで警察に相談する。キム刑事(ソン・チャンミン)は、スンピル失踪事件を担当することになり、失踪した時間帯にスンピルと接触した人物や行動を捜査していき、婚約者ミソン、スンピルの同僚や上司、色んな人物を疑う。スンピルが最後に寄ったコンビニの店員が、コンビニの店前でスンピルと男が言い争いをしていた証言を得て、更に近くの電信柱に血痕が付着していたことで事件に巻き込まれたかもしれない。スンピル失踪事件は、捜査をするほど様々な人物が浮かびあがってきて、容疑者が増えていく。テレビでニュースとして放送されたことで、大きな出来事になり、婚約者ミソンや担当のキム刑事は、スンピルの行方を捜すお話。
監督は、『どこかで誰かに何かあれば間違いなく現れるホン班長』『ひまわり』のカン・ソッポム監督。
出演は、投資顧問会社の社員チョン・スンピルを演じるのは『悲しみよりもっと悲しい物語』『キングコングを持ち上げる』のイ・ボムス、スンピルの婚約者ミソンを演じるのは『仮面』『美人図』のキム・ミンソン、キム刑事を演じるのは『俺も行く』『マイ・ボス マイ・ヒーロー3 (原題:商師父一体 頭師父一体3)』のソン・チャンミン、パク刑事を演じるのは『リターン』『ラヂオ・デイズ』のキム・ルェハ、チャン班長を演じるのは『誰が俺を狂わせるか』『ひきこもり (原題:ひとりぼっち)』のイム・デホ、スンピルに対して敵対心を持つ上司のペク部長を演じるのは『モダンボーイ』『甘いウソ』のキム・グァンギュ、スンピルの同僚で友人サムボンを演じるのは『天軍』のピョ・ヨンホ、スンピルのライターを拾ったイ・サムボンで本名イ・ビョンホンを演じるのは『マイ・ボス マイ・ヒーロー2 リターンズ (原題:闘師父一体)』『マイ・ボス マイ・ヒーロー3 (原題:商師父一体 頭師父一体3)』のイム・セホ、ホームレスで酔っ払いのチュ・ジョンナムを演じるのは『悲しみよりもっと悲しい物語』『国家代表』のイ・ハヌィ、スンピルの上司の支店長を演じるのは『赤ちゃんと僕』『仁寺洞スキャンダル』のキム・ビョンオク、スンピルの取引相手マ・ドンポを演じるのは『ナルラリ宗婦伝』『マリン・ボーイ』のイ・ウォンジョン。
スンピルが大きなプロジェクトの開始日に突然姿を消してしまい、失踪直前まで一緒にいた婚約者ミソンが警察に通報することで、スンピルの横領疑惑、失踪直前に男と言い争いをしていたことで事件としても捜査していくのである。
警察側を中心にして物事をみせているが、一方で失踪したスンピルの状況もリアルタイムでみせている。スンピルは、警察沙汰になって大きな事件扱いされていることも知らず、腹痛のため廃墟ビルの汚いトイレに入り、便を終えて出ようとしたとき、外から鍵をかけられてしまい出れなくなってしまっただけなのだ。トイレに閉じ込められたスンピルが、そこから自ら脱出しようと試みているところもみせている。失踪者と警察側の両方を同時にみせていることで、サスペンス要素はなく、コメディ要素を一貫して主張したものになっている。
ミソンは、スンピルがタバコを買ったコンビニにキム刑事とパク刑事を呼んで、二人が現場状況や証言者から事件性があるのか、そこから分別していくのである。パク刑事は、最近女にお金を取られて別れたことから女性不信になり、ミソンを始めから犯人と決めつけているのだ。キム刑事は、この事件が解決するば昇進することを想像して、本格的に捜査するのである。
婚約者ミソンを容疑者の一人とみて、二週間前に億単位の生命保険を契約していたからである。潔白であるミソンは、スンピルの家に行ってヒントになるものをみつけようとしたり、キム刑事の捜査報告から事件に協力していくのである。この作品の主は、失踪したスンピルでなく、スンピルを捜す婚約者ミソンとキム刑事になっているのだ。
容疑者となる人物や関係者が多すぎることで、わざと複雑化させようとしているようにみえる。スンピルの横領疑惑から上司のペク部長(キム・グァンギュ)や同僚センギ(ピョ・ヨンホ)を疑い出し、新プロジェクトの元手500億ウォンを出している取引先マ・ドンポ(イ・ウォンジョン)、スンピルの上司の支店長(キム・ビョンオク)をみせている。スンピル失踪事件となり彼らを追及することで、ペク部長の隠していた事柄が暴露され、あらぬ方向へと流れていくのである。
スンピルのライターを拾った前科者イ・サムボン(イム・セホ)、スンピルとコンビニ前で言い争いをしていた解体業者イルグン(チ・デハン)、警察署内を自由に歩くアル中ホームレスのジョンナム(イ・ハヌィ)、一途な思いが空回りするミソンの後輩ヨンチョル(イ・ヨンヒョク)、スンピルに怪しいメールを送信したヨガ先生のミナ(チャン・ジャヨン)、警察署内に乱入するスンピルの父(イ・ホソン)、スンピルの幼馴染みヨンジャ(カン・ナミョン)が自分の方が婚約者だと主張したり、はちゃめちゃ状態になっている。ドタバタ状態をコメディ要素としてみせたいのはわかるが、分別するのにちょっと考えてしまい、笑いに変換できないところもある。これだけ人が入り混じっているので、ショートコントを繋ぎ合わせている作りにみえてしまった。
スンピルの物語もみせて、空腹状態をみせており、雨水を必死にとろうとしたり、その場所から脱出しようとしたり、『ショーシャンクの空に』のあるシーンをパロディーにしたり、虫が男性歌手になったり、母の亡霊が助言したり、と演出している。一応、ちょっとしたコメディ要素を入れてはいるが、生死を彷徨うスンピルの状況になっているから、警察署内の動きが浮いてみえるのである。スンピルの状況が切迫してみえるので、コメディ要素を強調する警察署内とのバランスが崩れているようにみえた。
始めからスンピルの失踪原因を観客側が知っており、それを捜査する警察の動きをどのようにみせるかが勝負なのに、不完全燃焼な形に仕上がっている。そもそも、コメディ要素が面白くなかったことで一度も笑わなかった。笑いのツボは、人それぞれ違うから、観る人によっては笑えて楽しめるかもしれない。
【なめ犬的おすすめ度】 ★