殺人の告白 (原題:私が殺人犯だ)
制作年:2012年
監督:チョン・ビョンギル
出演:チョン・ジェヨン、パク・シフ、チョン・ヘギュン
ジャンル:アクション、スリラー
2005年の初冬、連続殺人事件を担当している班長のチェ・ヒョング刑事(チョン・ジェヨン)は、突然帽子をかぶりマスクをつけた知らない男に襲われ、乱闘となった末に男を追い詰めるが、逆に男から攻撃されて腹をナイフで刺され更に左口角を横に傷つけられる。男は負傷しながら逃走し、路地裏に逃げる男にヒョング刑事が拳銃を撃ち続けた。連続殺人事件で母を殺害された被害者家族の息子チョン・ヒョンシク(リュ・ジェスン)は、ヒョング刑事の説得に応じることなく、アパートの屋上から飛び降りて、道路を走っていたバスのフロントガラスに衝突して亡くなってしまい、ヒョング刑事と彼の親族と一緒に遺骨を納める。15年前に起こった連続殺人事件の犯人を追っているチェ・ヒョング刑事は、独身のままで老母(ナム・ジョンヒ)と一緒に暮らしており、常に事件のことを考えている。そして、犯人が逮捕されないまま、連続殺人事件は時効を向かえてしまう。二年の月日が経ち、例の連続殺人事件の犯人だと名乗るイ・ドゥソク(パク・シフ)が記者会見をして、自叙伝を出版してベストセラーになる。ドゥソクは、甘い容姿と巧みな話術で世間で人気者になり、マスコミや女性たちから注目を集める。そして、ドゥソクは妻を殺害された被害者家族キム・ウォンジャン医師(パク・ウン)のところに、マスコミを連れて出向いて謝罪をする。15年間事件を追っていたヒョング刑事は怒りがおさまらないとき、警察署にドゥソクと彼を警護する警護員たちが訪れ謝罪にやってくる。連続殺人事件が時効になったからと云って、物事は終わることはなくドゥソクの命を被害者家族たちがグループを組んで復讐を始める。更にテレビ番組で討論会を開くことになり、ヒョング刑事や殺人犯ドゥソクらが招かれ質疑応答をしていく中、視聴者からの電話で質問を受けつけ、真犯人を名乗る人物から連絡があって事態が混乱する。時効を迎えた連続殺人事件の犯人はいったい誰なのかというお話。
監督は、『私たちはアクション俳優だ』のチョン・ビョンギル監督。
出演は、チェ・ヒョング刑事を演じるのは『ホームランが聞こえた夏 (原題:グローブ)』『カウントダウン』のチョン・ジェヨン、自称殺人犯イ・ドゥソクを演じるのは本作スクリンデビューのパク・シフ、謎の男ジェイを演じるのは『最後の狼』『シンソッキ・ブルース』のチョン・ヘギュン、ウリシーフードの会長で被害者家族ハン・ジスを演じるのは『英語完全征服』『グッバイ、マザー (原題:エジャ)』のキム・ヨンエ、前科者で被害者家族カン・ドヒョクを演じるのは『飛べ、ペンギン』『ビー・デビル (原題:キム・ボンナム殺人事件の顛末)』のオ・ヨン、タンクン(捕蛇人)で被害者家族を演じるのは『犯罪との戦争:悪い奴らの全盛時代』『凍える牙 (原題:ハウリング)』のキム・ジョング、タンクンの娘で被害者家族チェ・ガンスクを演じるのは『ガールフレンズ』『後宮:帝王の妾』のチョ・ウンジ、医師で被害者家族キム・ウォンジャンを演じるのは『公共の敵2』『オールド・ミス・ダイアリー 劇場版』のパク・ウン、ハン・ジスの息子で被害者家族チョン・テソクを演じるのは『僕の彼女のボーイフレンド』『アウトロー -哀しき復讐- (原題:無法者)』のチェ・ウォニョン、チェ・ヒョング刑事の老母を演じるのは『飛べ、ペンギン』『テンジャン (原題:味噌)』のナム・ジョンヒ、ハン・ジスの娘で被害者チョン・スヨンを演じるのは『宿命』のミン・ジア、被害者家族チョン・ヒョンシクを演じるのは『シルミド』『グッド・バッド・ウィアード (原題:良い奴、悪い奴、変な奴)』のリュ・ジェスン。
1986年から1990年の間に10人の女性が連続殺人の被害を受け、15年の月日が流れたことで事件は時効を向かえてしまう。2007年晩秋に突然犯人がテレビの生放送の記者会見で告白をし、自叙伝を出版し、犯人の証拠として刑事から肩に拳銃で撃たれたレントゲン写真と傷跡を公開することで真実味をみせている。犯人の容姿から何時しかマスコミは騒ぎ出してスター扱いする。連続殺人事件を担当していたヒョング刑事は、世間の目を目覚めさせようとドゥソクを軽蔑し、殺人犯をスター扱いするのをやめさせようとしていく。
連続殺人事件の被害者家族たちの復讐を序盤にみせている。娘チョン・スヨン(ミン・ジア)を殺害された遺族ハン・ジス(キム・ヨンエ)、ハン・ジスの息子チョン・テソク(チェ・ウォニョン)、妻を殺害された遺族タンクン(キム・ジョング)、タンクンの娘チェ・ガンスク(チョ・ウンジ)、母を殺害された遺族カン・ドヒョク(キム・ジョング)、この五人が手を組んでドゥソクを拉致する計画が実行されるのである。貸しきりで室内プールで泳ぐドゥソクは、清掃業者に変装したタンクンが毒蛇を水中に入れ、毒蛇に噛まれたドゥソクを救急隊員に変装したガンスクとドヒョクが偽の救急車に運び、本物の救急隊員が現れたことで嘘がばれ、ドゥソクを乗せた偽の救急車は逃走するのだ。偽の救急車を運転するタンクンと後部座席で見張るガンスクとドヒョク、ドゥソクを取り戻そうとする黒服の警護員たちが車で追いかけ、更に通報を受けたヒョング刑事の車も追いかけ、激しいカーアクションをみせている。走行中の車から車に飛び移ったり、車同士でぶつかり合いをしたり、走行中の車のボンネットでドヒョクがナイフでドゥソクを刺そうとしたり、並走する車にまたがったり、走行するストレッチャーにドヒョクとドゥソクが重なりあったり、ド派手なアクションシーンを幾つもみせている。
テレビ番組の討論会では、司会者、ヒョング刑事、殺人犯ドゥソク、大学教授、人権派女性弁護士、多くの観覧者がいる中で行われ、理解できない加害者思想を人権派女性弁護士と殺人犯ドゥソクが述べているのだ。そんなとき、真犯人を名乗る人物ジェイ(チョン・ヘギュン)から電話で真犯人ならではの情報を提供することで事態が急展開していくのだ。真犯人ジェイは、ヒョング刑事に対してメッセージを送り、証拠となるナイフとビデオテープを置いていくのだ。ナイフのDNA鑑定の結果、ビデオテープの内容によって、その後大きな展開をみせている。
終盤にも激しいカーアクションが組み込まれている。車に乗り込んで逃走を図る犯人であるが、フォークリフトとトラックを運転する遺族たちの攻撃を受けたり、再び犯人がバイクで逃走するのをトラックでヒョング刑事が追いかけ、迫力ある追走劇をみせている。序盤と終盤でみせるカーアクションや冒頭のヒョング刑事と男の逃走劇をみると、かなり完成度の高いアクションをみせており、それだけでも観る価値がある作品になっている。
面白ければ何でもよいテレビ局やマスコミたちの報道にも注目がいくだろう。被害者家族の感情を逆なでするような言動があったり、殺人犯をスター扱いするマスコミ、殺人犯の容姿から女性ファンまで出来てしまう過激な世論、間違った方向へと誘導しているようにみえるのだ。被害者家族がかなりポイントになっている作品でもある。
展開が二転三転していくのがこの作品の特徴かもしれない。自叙伝を出版して殺人犯を自称するドゥソク、真犯人だけが知っている情報を持つジェイ、という二人の殺人犯の存在。犯人への復讐をやめない遺族たちの行動を終始みせていたり、実はある人物も被害者家族の一員であったり、次から次へと驚くような展開をみせていくのだ。中盤以降からどんどん謎が明かされていく展開なので、あまり詳細は書かずにしておく。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★