18歳、19歳
制作年:2010年
監督:ペ・グァンス
出演:ユ・ヨンソク、ペク・チニ、キム・ジョンホン、オム・ヒョンギョン
ジャンル:青春ドラマ
鑑賞:日本版DVD
仲のいい二卵生双子の兄ホヤ(ユ・ヨンソク)と妹ソヤ(ペク・チニ)は、同じ高校に通っており、いつも一緒に登下校している。18歳になる双子の兄ホヤと妹ソヤと友人らは、一緒に証明写真を撮って、そして住民登録証を取得する。兄ホヤと妹ソヤは、学校の登校中に住民登録証をみながら、運転免許の取得条件を満たしたとか、成人映画も観れるとか、親の許可なしに結婚ができるとか話していた。二人は、帰りに住民登録証の取得記念としてプリクラを撮ることを約束する。二人は、下校中に兄ホヤのポケットにラブレターを持っているのを妹ソヤが見つける。手紙を出したのは、妹ソヤの友人トミ(オム・ヒョンギョン)からで、デートの誘いを綴った内容であった。妹ソヤは、兄ホヤに友人トミとどうするのか真剣に訊ねるが、曖昧な返事をしてくる。約束通り二人は、プリクラを撮るのだが、向かい合ったときに妹ソヤが兄ホヤにキスをする。兄ホヤはトミとデートをして親しくなっていき、妹ソヤは女子学生たちの人気者のボクシング部員ペク・イルガン先輩(キム・ジョンホン)から公開告白されて付き合うか迷ってしまう。ある日の夜、兄ホヤの部屋に入ってきた妹ソヤが、兄のことが好きであると告白する。兄ホヤは、トミと付き合うことを選択し、妹ソヤは当てつけにイルガン先輩と付き合うことになる。妹ソヤは、イルガン先輩に対して本気でない思いで交際を続け、結局二人は別れてしまう。妹ソヤとイルガン先輩の間にある出来事があったことで事態が変わる。兄ホヤは、ある決意を持ってボクシングジムの門を叩く。双子の兄妹を中心にした十代の心の葛藤を描いたお話。
監督は、本作デビュー作のペ・グァンス監督。
出演は、双子の兄イ・ホヤを演じるのは『黄金時代』『短い記憶(原題:ヘファ、ドン)』のユ・ヨンソク、双子の妹イ・ソヤを演じるのは『アコースティック』『フェスティバル』のペク・チニ、双子が通う高校の先輩でボクシング部員ペク・イルガンを演じるのは『もう少しだけ近くに』『ママ』のキム・ジョンホン、ソヤの友人チェ・トミを演じるのは『アイスケーキ』のオム・ヒョンギョン、ボクシングジムのコーチのキジュを演じるのは『40minutes (原題:4時間目 推理領域)』『ヨガ教室 (原題:ヨガ学院)』のイ・ヨンジン、ボクシングジムの館長を演じるのは『多細胞少女』『彼女には秘密です (原題:しーっ! 彼女には秘密ですよ)』のパク・ヨンシク、双子と同級生でボクシング部員チャン・ヘジュンを演じるのは『ホームランが聞こえた夏 (原題:グローブ)』『グッバイ・ボーイ』のキム・ドンヨン、ボクシングジムの先輩ジョンスを演じるのは『ミス・ギャングスター (原題:六穴砲強盗団)』『家を出た男たち』のイ・ミヌン。
兄妹の恋愛というと韓国のテレビドラマでよく使われる陳腐な手法のような感じにみえる。陳腐にしないように、兄ホヤと妹ソヤの感情表現を機微にすることで、二人の心を映像から読み取っていくようになっている。兄ホヤとトミの交際が続いていることで、兄ホヤが妹ソヤをどのような気持ちで接しているのか、兄ホヤと妹ソヤの成長というのが終盤にみえてくる。
序盤から、お互いが男女として意識している双子の兄妹だとみせているのだ。兄ホヤと妹ソヤが会話する中でもみえており、兄ホヤがラブレターを持っていたことで妹ソヤがあきらかに妬いていたり、プリクラを撮るとき衝動的にキスをしたりと二人の感情をみせている。妹ソヤは、兄ホヤに対して感情的で表情に出やすく、兄ホヤ以外の人にはクールに振舞っているのがみえる。兄ホヤは、理性によって妹ソヤからの愛を拒み、トミとの恋愛を選択していくのである。
トミは、ホヤに恋人なら当たり前のサプライズを期待しているのであるが、いつも上の空で気持ちに迷いがあるのをみて、自ら積極的に行動している。トミは、一途な恋を全面にみせており、消極的だったホヤが彼女の空間に入っていくのだ。トミは、妹ソヤの存在が気になるところをみせながら、兄ホヤとの発展しない恋に悩んでいるのだ。トミ視点の感情も入れていることで、一方通行な形で二人を描いていないところはよい。
学校のボクシング部が悪役的な存在になっている。同級生のボクシング部員ヘジュン(キム・ドンヨン)は、ホヤがいつも妹といることで変態扱いしており、意地悪なことばかりしてくるのだ。ボクシング部員のイルガン先輩は、ソヤと交際するがすぐに別れてしまい、しかもソヤを傷物にしたことで、ホヤは怒りに満ちているのである。イルガン先輩に対してホヤが責任追及したとき、イルガン先輩の言動で最低な人物であるところをみせている。十代で精神が未成熟だからなのか、根っから腐った性格なのかは、観る側が推測するところであろう。
ホヤが、ボクシングジムに入会するところは見所だろう。同じ土俵にたって復讐するためなのか、様々な心の葛藤を払拭するためなのか、自分自身を変えようとしてなのか、自分の過去を責めているのか、その答えは終盤にホヤが出してくれる。ソヤもホヤが何故ボクシングを始めたのか終盤に気づくのである。複合的な要因をみせながら、終盤まで観る側に考えさせるようにしている。何よりもボクシングジムの女コーチ、館長、先輩選手ジョンスといった素晴らしい仲間とめぐり合えたことはホヤにとってプラスに働いている。ホヤがボクシングを通じて、身体的な強さよりも精神的な強さが身についているのが、終盤に明らかにみられる。
兄妹の愛を主にしたラブストーリーというよりか、不安定な十代の感情をみせながら、兄ホヤと妹ソヤがそれぞれ成長していく姿をみせているように感じとれる。兄妹の心理描写は良かったが、構成が古いところにマイナス面がある。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★