韓国版DVDで既に鑑賞済みであったが、独特な台詞回しをどのように翻訳しているのかを知りたくて日本版DVDでも鑑賞してみた。この作品は、韓国版DVDが発売されて、すぐ観た記憶がある。
小さな恋のステップ (原題:知り合いの女)
制作年:2004年
監督:チャン・ジン
出演:イ・ナヨン、チョン・ジェヨン、チャン・ヨンナム、オ・スンヒョン
ジャンル:コメディ、ラブストーリー
鑑賞:韓国版DVD、日本版DVD
一時は有名な投手だったが、今ではプロ野球の二軍選手で外野手をしているチソン(チョン・ジェヨン)は、交際していた恋人(オ・スンヒョン)に突然別れをいわれてしまう。チソンは、体調が悪いことでノ医師(チョン・ギュス)の診察を受け、癌で余命三ヵ月と告知され、自暴自棄になって行きつけの酒場で酒を呑み、酔いつぶれてしまう。その酒場でバーテンダーをしているイヨン(イ・ナヨン)は、チソンを近くの旅館まで運んで介抱する。酔いから醒めたチソンは、馴染みの顔のバーテンダーがいることに気づき、ちょっとした会話をしただけでチソンが眠りについてしまう。チソンは気づいていないが、イヨンはチソンを学生時代から知っており、隣近所である。イヨンは、チソンが引っ越してきてから十年以上も想いを寄せ続けている。イヨンには、ラジオ番組にハガキを投稿する趣味を持っており、ペンネーム「筆の姫」と名乗って、チソンとの出来事をハガキに書き投稿し、そのハガキの内容がラジオで流れ、偶然それをチソンが聴いてしまう。チソンは、怒ってイヨンが働く酒場に行くが、景品の携帯電話をプレゼントするためと機転を利かされ、揉めることもなかった。これがきっかけとなって、イヨンはついにチソンと二人で映画をみにいくことになる。残り僅かな命に悩むチソンと長年密かに想い続けていたイヨンは結ばれるのかというお話。
監督は、『SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男』『ガン&トークス (原題:キラーたちのおしゃべり)』のチャン・ジン監督。
出演は、バーテンダーのイヨンを演じるのは『フー・アー・ユー?』『英語完全征服』のイ・ナヨン、プロ野球選手のチソンを演じるのは『ガン&トークス (原題:キラーたちのおしゃべり)』『シルミド』のチョン・ジェヨン、事故女を演じるのは『産婦人科』のチャン・ヨンナム、チソンの元恋人を演じるのは『ガン&トークス (原題:キラーたちのおしゃべり)』のオ・スンヒョン、ノ医師を演じるのは『復讐者に憐れみを』『天国からの手紙 (原題:火星に行った男)』のチョン・ギュス、泥棒を演じるのは『ライターをつけろ』『ジェイル・ブレーカー (原題:光復節特赦)』のパク・ソヌ、酒場主人を演じるのは『天国からの手紙 (原題:火星に行った男)』『木浦は港だ』のチョ・ドッキョン、刑事の班長を演じるのは『聞くなファミリー』『彼女を信じないでください』のイム・ハリョン。
「39歩の遠距離恋愛」というキーワードがあるように、イヨンの家からチソンの家までわずか39歩のところに住んでおり、イヨンはずっと片思いをしているが、チソンはイヨンの存在すら気づいていない。この二人が急接近することでイヨンの高まる感情をみせる中、余命を宣告されたチソンの複雑な感情をみせ、そのズレを笑いの方向にむけている。
チソンは、余命を宣告されて、未来のない自分に消極的になっている。そんな中、自宅を担保に銀行からお金を借りようとしていたところ銀行強盗が入ってきて、余命が分っているから銀行強盗たちに自分の思いを主張したり、自宅に泥棒(パク・ソヌ)が進入してきて泥棒の身の上話しに感動したチソンが大金を泥棒に渡し、そのお礼に泥棒が盗品の鞄をチソンの家に置いていったことで警察沙汰になったりといつの間にか事件に巻き込まれている姿をコメディタッチにみせているのだ。チソンの周囲にいる人たちが、どこかおかしいところがあり、そこからコメディが生まれてくる流れになっている。
イヨンは、携帯電話を渡したことでチソンと繋がりが強くなり、二人で映画をみにいくことになる。その映画で上映されている登場人物が、イ・ナヨンとチョン・ジェヨンが演じており、二人のラブストーリーをみせている。しかも、電柱を頻繁に出しているところは、この監督の過去作品『あきれた男たち』に通じるものであったり、電線を通じて愛の伝達をみせている劇中劇におもわず笑ってしまう。細かいところにも演出をしているので、この監督の特長がよく出ている。
チソンとイヨンは、「知り合い」という関係で進行しており、チソンの自宅が警察に占領されていることで、イヨンの家に住ましてもらったり、二人がどんどん近い存在になっていく過程をみせている。イヨンの気持ちは、一途に想い続けてきたチソンとようやく話せるようになったのに、名前も聞いてもらえない、好きなものも聞いてくれない、そんなジレンマをかかえつつ彼を見守り続ける女の子なのだ。
やはり、独特な台詞回しがあることで、日本語字幕でみることをお薦めしたい作品である。韓国版DVD(英語字幕)で観たときと比べると字幕に工夫がみられることで、観やすくなっている。イヨンは、チソンのことを「おじさん」と常に呼んでいるが、字幕では一切直訳しないので、二人の気持ちの距離感がわかりずらいという欠点もあるけど。ラストシーンへの流れが好きなところで、二人の周囲の人たちを上手に使って演出している。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★