SSFF&ASIA 2011で特別上映作品の枠になっていた作品。今回、この映画祭で上映した韓国映画の中では一番良かったと思う。あくまで自分が韓国映画を観た中でのこと。ムーダンに関する作品をみたことがある人は、過去にムーダンを扱った作品と比べると面白いかも。
波瀾万丈 (短編)
制作年:2011年
監督:パク・チャヌク、パク・チャンギョン
出演:イ・ジョンヒョン、オ・グァンノク、イ・ヨンニョ
ジャンル:ヒューマンドラマ
鑑賞:SSFF&ASIA 2011
霧深い森の奥へと進み、川で釣りを始める釣り人(オ・グァンノク)。夜遅くになっても、なかなか魚が釣れないので釣り人は諦めていた。台風も近づき、雨が激しくなってきたところ、複数ある釣竿のひとつが揺れている。釣り人は、揺れている釣竿を持ち上げると白い服を着た女性が釣れた。釣り人は、どこの世界に迷い込んでしまったのかというお話。
監督は、『サイボーグでも大丈夫』『渇き (原題:コウモリ)』のパク・チャヌク監督、『Flying (短編)』『Sindoan (短編)』のパク・チャンギョン監督の共同。
出演は、巫堂を演じるのは『つぼみ (原題:はなびら)』『ハーピー』のイ・ジョンヒョン、釣り人を演じるのは『青い自転車』『イテウォン殺人事件』のオ・グァンノク、釣り人の妻(不確定)を演じるのは『注文津』『味噌』のイ・ヨンニョ、釣り人の娘を演じるのは子役のキム・ファナ。
全てにおいて神秘的な仕上がりになっている。構成としては、五人編成の音楽バンド、釣り人の釣りと奇妙な体験、白服の女性の正体、土着的風習といった形で進行している。時間軸というよりか、「この世」と「あの世」の境目が存在しており、それが途中からわかるような仕組みになっていて、演出の素晴らしさをみせている。
釣り人が釣り上げた白服の女性は巫堂(イ・ジョンヒョン)であり、巫堂の声によって娘とのリンクをみせている。森の奥地の川から一転して、明るい川岸に画面が変わると釣り人は死者である事実が判るのだ。そこには、釣り人の家族がおり、妻や幼い娘が存在し、これが現実の世界になっている。異空間から戻ってきた感覚になり、とても奇妙な体験をしているように感じるのである。朝鮮の土着的風習である巫堂をとりあげており、魂を呼ぶところは日本の恐山にいるイタコのようである。
序盤でみせる五人編成の音楽バンドも神秘的にみえており、おそらく流れている音楽にもヒントが隠されているようにみえた。朝鮮式帽子が空高く飛ぶところは、魂が浮遊しているという意図だと感じとれる。全て解釈しきれていないので、自分の知の未熟さがわかり、複数回観たい作品である。
撮影・制作をiPhoneで行っていることに驚きを感じるところである。夜の釣りのシーンもそれなりに撮影ができていることで、iPhoneの性能に関心を持ってしまう。朝鮮古来の文化を最新モバイル機器であるiPhoneで描写する発想も素晴らしい。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★