出演者目当てで観たほうがいいだろう。出演女優陣の中にファンがいる方々には申し訳ないが、辛口評価になってしまった。
マイ・ブラック・ミニドレス
制作年:2011年
監督:ホ・インム
出演:ユン・ウネ、パク・ハンビョル、チャ・イェリョン、ユ・インナ
ジャンル:青春ドラマ
鑑賞:動画
名門大の演劇映画科に通うユミン(ユン・ウネ)、ヘジ(パク・ハンビョル)、スジン(チャ・イェリョン)、ミニ(ユ・インナ)は、この大学で出会い親友になり、卒業式を迎える。大学を卒業すれば、華やかな人生が待っていると思っていたが、現実は期待外れであった。ユミンは、三年近く付き合っていた恋人スファン(イ・チョニ)と別れ、作家(チョン・スギョン)の助手として働き始めるが、雑用ばかりやらされている。スジン(チャ・イェリョン)は、家庭教師をしながら、役者になる夢を追いかけオーディションに受けるが毎回不合格ばかりである。ミニ(ユ・インナ)は、親が金持ちで有名デザイナーを夢見ており、英語が話せないことで英会話スクールに通い出す。ヘジ(パク・ハンビョル)は、完璧な美貌とさっぱりした性格をしており、ダンスクラブで派手に踊る中、芸能界への切符を手に入れて、ジーンズのコマーシャルに出演して有名人になり成功する。芸能人になったヘジは、仕事が増えて忙しくなり、なかなかユミンたちと集まることができなくなる。一方で、ユミン、スジン、ミニは、三人で食事したり、頻繁に集まり、平凡な日々を過ごしている。思うようにいかない現実にぶつかる三人は、ヘジの成功を祝う気持ちにならず嫉妬してしまい、四人の友情が徐々に崩れていく。大学を卒業した二十代女性たちの青春を描いたお話。
監督は、『恋する神父 (原題:神父修業)』『ハーブ』のホ・インム監督。
出演は、ユミンを演じるのは『カリスマ脱出記』のユン・ウネ、ヘジを演じるのは『宿命』『ヨガ教室』のパク・ハンビョル、スジンを演じるのは『ムイ』『ドレミファソラシド』のチャ・イェリョン、ミニを演じるのは『阿娘』『フェア・ラブ』のユ・インナ、ソクウォンを演じるのは本作スクリンデビューのイ・ヨンウ、作家を演じるのは『顔と心と恋の関係 (原題:私の目にさや)』『楽園 (原題:楽園-パラダイス)』のチョン・スギョン、ヨンミを演じるのは『マイ・ボス マイ・ヒーロー2 リターンズ (原題:闘師父一体)』のチェ・ユニョン、男子高生スンウォンを演じるのは『二階の悪党』のドンホ、ユミンの学生時代からの恋人スファンを演じるのは『ビューティフル (原題:美しい)』『10億』のイ・チョニ。
性格や生活環境が違う仲良し四人女性が、大学を卒業して現実社会で大きな壁にぶつかりながら、人間的に成長していったり、夢を追いかけたり、友情を深め合ったりする姿をみせている。中盤までは、四人を均等にみせているが、中盤以降は主人公のユミンにスポットを当てる展開になっていく。
ユミンは、大きな夢も持たずに作家の助手をするが、やっていることは作家の子供(双子)の子守であったり、雑用ばかりで向上心がまるでなく、とりあえず適当に日々を過ごすことをしている。父の仕事を手伝う金持ち男性ソクウォン(イ・ヨンウ)をヘジがユミンに紹介することで恋愛が始まっていく。ソクウォンがヘジの持っていた写真をみて、ユミンを紹介して欲しいということが裏にある。女遊びが盛んな軽いソクウォンと恋愛慣れしてないユミンが、付き合うことでいろいろと問題が出てくるのを中盤あたりからみせているのだ。また、ユミンは高校時代の友人ヨンミ(チェ・ユニョン)と偶然再会して、時々会うようになる。ヨンミは放送作家になる夢を持ち、ユミンの作家の仕事を手伝ったりと積極的に行動をしている。全体を通して、実はユミンとヨンミのサブストーリーのところが一番良かったところである。初めの方は二人の心の対比をみせており、ストーリーが進むと二人の感情を面白く描いているのである。
ヘジは、モデルや芝居の仕事をすることで芸能活動が忙しくなり、世間的には成功して羨ましいと思われる。本人は、仕事のストレスで疲労しており、なかなか本音を語ることはしないのである。友人三人からヘジをみると、芸能活動の愚痴も嫌味にしか聞こえないので、周囲への気遣いがない人のように中盤までみえるであろう。中盤あたりで、四人が集まりヘジとスジンが大喧嘩することで、友情にヒビが入るが、そこも青春としており、それ以降からヘジの内面がみえてきて、本当はとても情があり、派手な外面とのギャップが面白くみせている。大学時代から自分中心に行動する人で、それを知りながらも本当の友人であるユミン、スジン、ミニが、ヘジとの関係を切らない理由も何となく分る気がする。
スジンは、四人の中では優秀でありながら、役者になる夢を諦められないでいる。仕事がみつからず、家庭教師で収入を得て、何とか暮らしている状態である。以前は裕福な家庭であったが、今では貧乏になってしまっている。見た目は一番安定しているようだが、本当は一番バランスを崩している人物である。
ミニは、裕福な家庭で夢を叶えるために英会話スクールに通って、自分磨きをしている。英会話スクールでは、高校生ばかりが生徒であり、ミニのような大人をバカにしているのが男子高生スンウォン(ドンホ)である。白人講師や高校生たちに愛嬌をふりまくミニは、英会話スクールに通い続けていき、スンウォンとの間にちょっとしたドラマがある。中盤あたりで、ミニの父と母が離婚することになり、彼女の将来の方向が変わるところがあり、もっと踏み込んで描いて欲しいところである。
大学の同級生四人が主になって、二十代女性が抱える問題をみせながら青春ドラマに纏めている。ユミンが主役になっていることで、仕事での問題、高校時代の友人ヨンミとのやりとり、ソクウォンとの恋愛、元恋人スファンの存在、母に抱きつき涙をみせたり、多くのドラマをみせている。ユミンを冒頭から完全な主役と固定して、ヘジ、スジン、ミニをサブ的な位置においていれば、ユミンの感情を深く表現できるものになったと思われる。
幾つかの境遇をみせて、ヘジ、スジン、ミニの三人の感情をみせているのがみえる。ヘジは簡単に芸能界で成功して思い上がっていたが厳しい世界に苦しむ。スジンは演技に自信を持っていたがオーディションでの連続不合格でもがき、家庭での問題があったり、家庭教師を本職と呼べないところがある。ミニは両親が離婚したことを悩み、家族内での問題を恐れており、友人との友情を支えにしている。
この作品の弱点は、現実と乖離しすぎているところである。大学を卒業すれば、夢のような生活があることを信じている設定がおかしなところで、そんなの誰もが在学中に気づくであろう。特に前半部分で描いていた幾つかの派手なシーンのところで感じてしまう。彼女たちの想いをいくら描いても共感するところがみえないのだ。日本のバブル時代の若者が卒業間際にタイムスリップして現在にきてしまったみたいだ。
題名で用いている黒いドレスは、どのような状況で着るのかという点も含んでいるのだろう。冠婚葬祭で着ることの多い黒いドレスを各シチュエーションを作って盛り込むことで、四人に着させているのである。エンディングに黒いドレスが四人にとって、どんなものなのかをみせている。
【なめ犬的おすすめ度】 ★