Happy Together (原題:同居、同楽)
制作年:2007年
監督:キム・テヒ
出演:キム・チョン、チョン・スンホ、チョ・ユニ、キム・ドンウク
ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
鑑賞:日本版DVD
娘ユジン(チョ・ユニ)と母チョンニム(キム・チョン)は、毎日一緒にダブルベッドで寝る仲良し親子である。父テフン(チェ・ジョンウ)は、生き方の違いを理由にチョンニムと離婚して、現在飲食店を経営している。美術大学に通うユジンは、同窓生で恋人ビョンソク(キム・ドンウク)を心配している。いつも学校を遅刻するビョンソクは、一人暮らしをしており、自分で生活費を稼ぐためにホストクラブで働いている。ある日、チョンニムは同窓会に行き、学生時代の恋敵であるギョンミ(キル・ヘヨン)と再会する。ギョンミは、小説家として成功しており、学生時代の自らの恋愛を小説にしてベストセラーになった。同窓会に出席した中年女性五人は、ホストクラブでお酒を呑み、若い男たちと羽目を外す。中年女性五人は、それぞれ若い男を持って帰り、チョンニムの相手をしたのがビョンソクであった。寂しい日々を過ごすチョンニムのマンションに、かつて大学時代の仲間で初恋相手のスンロク(チョン・スンホ)が一人で引越ししてきた。チョンニムとスンロクは、頻繁に会うようになり、12階に住んでいるスンロクの部屋で一夜を過ごす。早朝、ビョンソクが9階にあるユジンの部屋から出てエレベーターを待っていたら、チョンニムとスンロクが一緒に乗っており、チョンニムがエレベーターから降り、ビョンソクがエレベーターに乗り、スンロクはごみ捨てのためにそのままエレベーターに残って降りていった。エレベーターの中で、スンロクとビョンソクは話しだし、二人は父と息子の関係であった。複雑な人間関係が絡み合った恋愛になっており、幾つかの問題を各々がどのように受け入れていくのかを描いたお話。
監督は、本作デビュー作のキム・テヒ監督。
出演は、パク・チョンニムを演じるのは『カルナ』『奥様は16歳。(原題:女子高生 嫁に行く)』のキム・チョン、チェ・スンロクを演じるのは『女と男 愛の終着駅 (原題:我々は今ジェノバへ行く)』『炎の国』のチョン・スンホ、チョンニムの娘ユジンを演じるのは『最後の晩餐』『ブラザーフッド (原題:太極旗を翻して)』のチョ・ユニ、ユジンの恋人ビョンソクを演じるのは『後悔なんてしない (原題:後悔しない)』『アパートメント (原題:アパート)』のキム・ドンウク、ビョンソクの母イ・ギョンミを演じるのは『麻婆島2』『青い自転車』のキル・ヘヨン、ユジンの父テフンを演じるのは『俺たちの街』『チェイサー (原題:追撃者)』のチェ・ジョンウ、ヨンジェを演じるのは『チャンピオン』『下流人生』のイ・ジェウォン。
かなり大胆なところを突いている作品で、男女の愛であったり、セックスであったり、家族であったりと赤裸々に綴っているのである。映像として過激なシーンはないが、登場人物の設定がかなり乱れているのである。
娘ユジンの家族は、母チョンニムと父テフンという形であったが、父テフンが同性愛者ヨンジェ(イ・ジェウォン)と恋仲になったことで、父と母が離婚して、父テフンは男性の恋人ヨンジェと一緒に暮らし飲食店をしている。息子ビョンソクの家族は、母ギョンミと父スンロクという形であったが、夫婦仲が壊れて別居している状態になっており、三人それぞれが一人暮らしをしている。更に二つの家族の中で入り乱れており、ビョンソクは恋人ユジンの母であるチョンニムを接客して一度だけ肉体関係を持ってしまったり、ビョンソクの父テフンとユジンの母チョンニムが恋仲になっていったり、ギョンミは息子ビョンソクの同僚を家に連れ込んで肉体関係を楽しんでいる。この人間関係が序盤から中盤でみえるのは作品を観ている側だけなので、本人たちがこれらの関係をどのような形で知り、どのように受け止めていくのかをみせているのだ。この事実をドミノのように順番に知っていくので、事実を知る各人の心情を感じとりながら観ていく必要があるのだ。
女性の性を真正面から描いたものになっている。娘ユジンは、同年代の恋人ビョンソクと愛し合っており、心と体は共に満たされている。そのためなのか娘ユジンは、母チョンニムの性生活を心配しており、大人の玩具をインターネットで買ってプレゼントしたり、母チョンニムに好きな人が出来ると応援するのである。一方、母チョンニムは娘ユジンの性生活を知っているのにわざと知らないふりをしているのである。お互いの気遣いがみられるところで、いくら仲が良い母娘であっても、そこは率直に話すことができない領域なのがみられる。
女性の性において、母ギョンミと息子ビョンソクの間はかなり不穏な空気をみせているのである。母ギョンミが、ホストクラブの若い男、しかも息子ビョンソクの同僚を家に連れ込んで性生活を送っていることである。息子ビョンソクは、母ギョンミの性生活が露骨になり過ぎて、嫌悪感を持っているから家を出たのがみえ、稼ぎの良い母の仕送りを無視して、自ら生活費を稼いで一人暮らしをしているのがみえるのだ。
セックスを哲学的に追求しているのである。ビョンソクが、娘ユジンと母チョンニムの二人と結果的に肉体関係を持ってしまうからだ。そこでキーポイントになっているのが、同性愛者ヨンジェの言葉なのかもしれない。追求していくとヨンジェの言葉は、男女共通で納得できるように感じとれる。
ギョンミが出版した本の内容が、中盤から終盤のポイントになるのだ。実は、本の登場人物の名前を少し変えているが、チョンニム、スンロク、ギョンミの学生時代の恋愛なのである。若き日の三人の恋愛模様をモノクロ調で表現し、現在では熟年になったチョンニムとスンロクの恋愛をみせているのだ。過去の父母たちの感情、娘ユジンの感情、母チョンニムの感情が交錯したときが終盤の展開になるのであろう。
ミニシアター系の作品なので興行成績は低いが、シナリオもよく出来ており、女性監督ならではの発想のように感じとれる。男性監督の場合だと肉体的な描写に走りがちなところを繊細に表現しているので、女性向けの作品なのかもしれない。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★