今年の8月から9月に『石ころの夢』『結婚式の後で』『楽園 (原題:楽園-パラダイス)』の三作品を地上波(テレビ朝日)で放送した。TV版は、編集しているからDVDで再鑑賞してレビューを書いた。
石ころの夢
制作年:2009年
監督:チャン・ヨンウ
出演:チャ・インピョ、キム・ヒョジン、チェ・ゴン
ジャンル:ヒューマンドラマ
鑑賞:日本版DVD
かつては人気コメディアンだったが、現在落ちぶれた三流コメディアンのイム・サンヒョン(チャ・インピョ)は、ナイトクラブで司会をしている。ナイトクラブの社長を訪ねてきた中年男性とその幼い息子ジェヨン(チェ・ゴン)は、楽屋でサンヒョンがサッカー選手のパク・チソンと知り合いだと云って盛り上がっていた。その夜、社長と連絡がつかず帰る途中の中年男性と息子ジェヨンに不幸が起こる。中年男性は交通事故に遭ってしまい、偶然事故現場にいたサンヒョンが近づいていき、中年男性がサンヒョンに鍵付カバンと息子ジェヨンを母親のもとに送り届けてほしいと頼んで亡くなった。中年男性の葬式に出席したサンヒョンは、海外で生活しているジェヨンの伯母夫婦と会い、ジェヨンの母ヘス(ホン・チュンミン)が住んでいる江原道の東海市に届けて欲しいと依頼され、費用をくれたので渋々引き受けた。借金で首が回らないサンヒョンは、借金取りからの催促電話に追われており、更にギャンブル中毒で借金が膨らむばかりである。サンヒョンとジェヨンは、電車で江原道の東海市に向かっている途中、列車内で借金取りと偶然出会ってしまったことで持っていた費用を取られてしまい一文無しになってしまう。ジェヨンの母ヘスが住んでいる江原道の東海市に到着して、メモされた住所にいくと不在で、近所の人に聞いたらもう引越ししていたことを知る。太白山方面に歩き出した二人は、雪の降る山道で迷ってしまい、偶然ナイトクラブの女主人に助けられる。そこのナイトクラブで、かつてミュージカル女優として活躍していたイ・ハナ(キム・ヒョジン)が踊っていた。閉店後、ホールで酒浸りになるハナは、サンヒョンとジェヨンの事情を知って、母親探しの旅に同行することになる。果たして、サンヒョンたちはジェヨンの母親をみつけることができるのかというお話。
監督は、『19 (原題:19-Nineteen)』のチャン・ヨンウ監督。
出演は、コメディアンのイム・サンヒョンを演じるのは『韓半島』『クロッシング』のチャ・インピョ、ミュージカル女優のイ・ハナを演じるのは『裸足のキボン』『オガムド』のキム・ヒョジン、父を亡くした少年ジェヨンを演じるのは子役のチェ・ゴン、ジェヨンの母ヘスを演じるのは本作スクリンデビューのホン・チュンミン、ヘスの現夫チュンホを演じるのは『光州5・18 (原題:華麗なる休暇)』のキム・チョルギ、植林家ウソンを演じるのは『正しく生きよう』『目には目、歯には歯』のソン・ビョンウク。
この作品は、日本の脚本家がオリジナル作品を書き、韓国の人気俳優・監督で製作する日韓共同ドラマプロジェクト「テレシネマ」のひとつである。脚本を日本のTVドラマ「ハケンの品格」を手がけた中園ミホである。
三流コメディアンのサンヒョンが、中年男性の最後の言葉を叶えるために、中年男性の幼い息子ジェヨンと鍵付カバンをジェヨンの母のもとに届けるロードムービーである。そこに元ミュージカル女優のハナがその旅に加わることで、三人でジェヨンの母親探しが始まっていく。
売れなくなったコメディアンのサンヒョンが行きついた先は、ナイトクラブの司会で、ギャンブル中毒になってしまい、借金をギャンブルで返済しようとして借金が雪だるま式に増えてしまっている。ジェヨンを届ける依頼を引き受け、費用を貰ったことで、それもギャンブルの資金にしようとしているのがみえ、中毒から抜け出せないところをみせている。そのようになった原因としてサンヒョンの過去をみせている。サンヒョンが売れていた時期、仕事に夢中で家庭をみていなかったり、息子が死んだ悲しみもあったり、息子の死があったことで夫婦関係が上手くいかずに妻と離婚したりと人生の転落をみせているのだ。同じように人生の転落をみせているのが元ミュージカル女優のハナである。じん帯を負傷してミュージカル女優を諦める選択をして落ちぶれてしまう。未来に絶望して、現実逃避をしてアルコールに浸れるのだ。二人とも芸能人で一時期活躍しており、一線から退いた人生の姿をみせている。そこに無垢な少年ジェヨンと行動することによって、今後の人生のベクトルがみえてくるのである。
サッカー選手パク・チソンを成功者として、例えに表現しているところが多々でてくる。サンヒョンを含む多くの人たちを「石ころ」という表現をしており、石ころにも夢があることを語るのである。それだけでなく、実はパク・チソン選手がある伏線になっているのである。イギリスから帰国して、水原に三日間だけ滞在しているパク・チソン選手に会いたいジェヨンは、序盤から水原に行きたいと懇願しているのだ。サンヒョンがパク・チソン選手と知り合いという嘘が大きくなっていったり、三人でパク・チソン選手の事務所に行ったり、スタジアムでジェヨンにパク・チソン選手を会わせようとしたりとサイドストーリーをみせている。本物のパク・チソン選手が出演していないので、そのあたりは残念なところでもある。
中盤あたりから、サンヒョンとジェヨンの母ヘスと連絡がとれるようになり、ストーリーが大きく進展していく。母ヘスは、現在ヤクザ風のチュンホ(キム・チョルギ)と再婚していることもあったり、ジェヨンの世話をほとんどした記憶がないので、息子と会うことに臆病になっているのだ。母ヘスの描き方がかなり雑なので、現夫との関係や息子への感情をもっと描く必要がある。
鍵付カバンの中にお宝が入っているような流れになっており、暗証番号を必死に探したり、無理矢理電動ドリルでこじあけようとするサンヒョンなのだ。その鍵付カバンをヘスの現夫チュンホも狙っているのだ。鍵付カバンの中は、終盤に開けられ何なのかがわかるので、そこで楽しんでもらいたい。
全体的にみて、ストーリー構成がかなり強引になっているのが目立つ。こじつけ的に進めていたり、理由なく進行しているようにみえるところがあるのだ。地上波(テレビ朝日)で放送したTV版は、冒頭シーン、ナイトクラブでのサンヒョンとハナのパフォーマンス、ラストシーンとかなりカットしているところがある。エンディングロール内でラストシーンをみせているシーンを全部カットしていることで、TV版を視聴したら違う感想を持つ人も出てくるだろう。ノーカット版は死んで終わりではないし、更にサンヒョンとハナの関係を描いているから、ノーカット版をみた方がよいだろう。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★