チョン・ジヌ監督の鳥シリーズの第3作。
娼婦物語・激愛 (原題:鴎よ、ふわりふわり飛ぶな)
制作年:1982年
監督:チョン・ジヌ
出演:ナ・ヨンヒ、ハ・ジェヨン、シン・ソンイル
ジャンル:ラブストーリー
鑑賞:日本版Video
3年ぶりに黒山島に漁船の忠信丸が入港した。この島に暮らす人々の主な収入源は、漁船の船員たちが食べる料理や女を買春することで商売が成り立っている。忠信丸の船長(チャン・ヒョク)は、船員たちに入港して船の修理を終えてから遊ぶことを命令した。しかし、船員のドゥジン(ハ・ジェヨン)は船から抜け出して、市場で食料をたくさん買って、かもめ屋という娼婦宿で娼婦ウンジュ(ナ・ヨンヒ)を指名してヤッた後に、ドゥジンは大きな袋にウンジュを入れて、船に連れて帰ってしまった。翌朝、忠信丸は黒山島から出港し、ドゥジンは仲間の船員から修理しないで抜け出したことに怒られ、さらに女を船に連れ込んだことで、さらに反感をかってしまう。怒った船員たちは、ドゥジンとウンジュを海に投げたが、その後二人を引き上げて、二人はこれまでの事情を船員たちに話して了承を得て、船上でドゥジンとウンジュの結婚式を行った。一方、黒山島のかもめ屋の女将(ソク・クムソン)は、売れっ子ナンバー1のウンジュが消えたことに腹を立てて、女将はいつも取引している仲間のヤクザにウンジュを連れ戻すように依頼をする。そして、停泊したある島でウンジュが陸にいるところをヤクザに捕まり、再び娼婦として働かされる。結婚して直ぐに離れてしまったドゥジンとウンジュは、再び会うことができるのかというお話。
監督は、『カッコーの啼く夜 別離 (原題:郭公は夜中に鳴くのか)』『愛の望郷・激流を越えて (原題:鸚鵡からだで鳴いた)』のチョン・ジヌ監督。
出演者は、娼婦ウンジュを演じるのは『暗闇の子供たち』『低きところに臨みたまえ』のナ・ヨンヒ、船員ドゥジンを演じるのは『馬鹿たちの行進』のハ・ジェヨン、アン先生を演じるのは『山火事』『低きところに臨みたまえ』のシン・ソンイル、船長を演じるのは『新ホワイト・バッジ 地獄への戦場 (原題:洛東江は流れるのか)』『招かれた人々』のチャン・ヒョク、かもめ屋の女将を演じるのは本作デビュー作のソク・クムソン。
黒山島の島民たちが、売春によるシステムで生計が成り立っているのが異様にみえるのだ。市場といった食料品を扱う店はあるが、大きな収入源として漁船の船員たちが娼婦を買うことなのだ。漁船がこの島に到着すると多くの女たちが出迎えているのがその理由である。その女たちは娼婦であり、夜に食事や酒を楽しみ、娼婦を買ってお金を落としていくからだ。だから、原題の「鴎」と示す言葉の意味として、海岸や港湾に生息していることで娼婦たちを白い肌のカモメと比喩的に表現しているのであろう。
冒頭で一人の娼婦が島から脱出したがヤクザに連れ戻されるシーンがあり、その一連から娼婦たちは店に借金を返すために働いているのがみえる。借金がどのような過程で増えていったのかがみえないことや借金が人から人に渡っていくシステムによって娼婦が移動していることで、なんだか人身売買のようにみえるであろう。
序盤に説明もなしに、かもめ屋の娼婦宿で娼婦ウンジュを指名してドゥジンと愛し合い、船に連れ込む一連の行動は後になってわかるようになっているので、序盤は何が起こっているかわからないであろう。数年まえにウンジュが小さな島でアン先生(シン・ソンイル)に好意を持って親しくしており、アン先生が急遽転勤になり違う場所に移り、ウンジュはアン先生の行方を捜してあらゆる場所に行くが結局は見つからずお金が底をつき、現在の娼婦に至る。そのときにウンジュが偶然出会ったのがドゥジンで、娼婦として働くまえに処女のウンジュはドゥジンと結ばれ、再び出会ったら連れて帰ると約束したからである。だが、どうみても二人の馴れ初めが不自然だと感じてしまう。ウンジュとドゥジンは初対面でこのような展開に進展いくのもおかしなことで、ウンジュが強く想っていたアン先生への想いがどこかに消えてしまっているからだ。運命的な出会いを考えていたのであれば、かなり安易な設定である。
序盤だけ二人は幸せになっており、その後にヤクザに捕まるウンジュが場所を変えて転々としていく展開になる。借金を抵当にヤクザがウンジュを売り飛ばしていくので、ウンジュの行方が余計にわからなくなり、ドゥジンも探しようがないのをみせている。初めての出会い、3年後の再会で結婚、最後の再会という流れの中で、ウンジュがとる最後の行動がイマイチ説得力に欠けるのである。綺麗に表現しているのが原題、そのまんまの表現が邦題といった感じだ。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★