昨年、日本で一般上映しているときに多くの人が酷評されていたのでレンタルDVDで観ることにした。日本受けしそうなキャストを揃えているが、肝心のストーリーが死んでいるから残念である。韓国の映画企画者が自殺したり、DVD発売が延期になったりとすったもんだした作品だ。GLAYの曲を挿入歌やエンディングソングに起用していることから、何とかして日本でヒットさせたい気持ちがみえたが逆効果にみえてしまった。
宿命
制作年:2008年
監督:キム・ヘゴン
出演:ソン・スンホン、クォン・サンウ、キム・イングォン、チソン
ジャンル:アクション
鑑賞:日本版DVD
暴力団員ウミン(ソン・スンホン)は、裏社会の暮らしに疲れ果て、暴力団組織から足を洗いたいと思っていた。そんな時、同じ暴力団員で兄貴分のカンソプ(アン・ネサン)からカジノ強奪の話しを持ちかけられ、同じ暴力団員であり友人のチョルジュン(クォン・サンウ)とドワン(キム・イングォン)も一緒にこの計画を実行する。ウミンたち四人は、自分たちの暴力団組織が経営するカジノを襲撃して、売上金を三個分のバックに入れて、一個分のバックだけ隠して、四人は二個分のバックを持って集合場所で落ち合ったが、ボスのドゥマン(ミン・ウンシク)たちに捕まってしまう。チョルジュンが裏切っていたことで、ドゥマンたちに集合場所がわかっていたからである。この事件を収拾するために、カンソプとドワンは怪我させられ、ウミンだけ警察に自首をして刑務所に入った。二年後、出所したウミンは、同じ暴力団員であり友人のヨンファン(チソン)だけが出迎えた。ウミンは、ヨンファンから仲間の消息を訊いて、一個分の隠していたバックのお金の行方を知っているカンソプが行方不明になっていることを知る。チョルジュンは、出世して中間ボスに成り上がり、自分の組織を持ち、ナイトクラブを経営している。かつての仲間が敵味方に分かれてしまい、ウミンは暴力団組織の内輪もめに巻き込まれていくお話。
監督は、『恋愛、その耐えられない軽さ』のキム・ヘゴン監督。
出演者は、ウミンを演じるのは『氷雨』『あいつは格好よかった』のソン・スンホン、チョルジュンを演じるのは『美しき野獣』『青春漫画』のクォン・サンウ、ドワンを演じるのは『マイ・ファーザー』『用意周到ミスシン』のキム・イングォン、ヨンファンを演じるのは『血の涙』のチソン、ウミンの恋人ウンギョンを演じるのは『狐怪談 (原題:女子高の怪談 3番目の話 狐階段)』のパク・ハンビョル、暴力団組織のボスであるドゥマンを演じるのは『蒸発』『俺のもとへ来い』のミン・ウンシク、カンソプを演じるのは『極楽島殺人事件』『二人だ』のアン・ネサン、ドワンの恋人ミジンを演じるのは本作スクリンデビューのキム・ミンジュ。
裏社会に生きる男たちの友情と裏切りを描いているのであるが、同じ暴力団員で昔から友人のウミン、チョルジュン、ドワン、ヨンファンがどのぐらい親密であったのかが不透明にみえるため、構成に問題があるようにみえる。中盤に1シーンだけ回想シーンで、四人と女性陣たちも絡めたシーンを挿入しているだけだからだ。ラストシーンに過去の仲の良かったシーンを持ってくるのでは、全体像が軟弱になってしまっている。
ウミン、チョルジュン、ドワン、ヨンファン、彼らの兄貴分カンソプ、ボスのドゥマンといった六人の人間関係をじっくり整理しながらみていく必要がある。ウミン、ドワン、カンソプは組織から離れた形になっており、ドゥマンの下にヨンファンとチョルジュンが別々にぶら下がっているが、チョルジュンの場合は組織を持っている。ドゥマンはウミンの能力が高いから出所後も仲間として利用したい考えがあったり、チョルジュンは部下を使ってウミンを潰そうとしたり、中立的な立場に存在するヨンファンがどのような動きをするのかである。
異性関係では、ウミンとウンギョン(パク・ハンビョル)がかつて恋人関係、現在ではウンギョンとドゥマンが男女の関係になっていたり、ドワンが薬物中毒になってしまったことでミジン(キム・ミンジュ)と破局になってウミンが二人の関係を修復しようと試みたりとみせている。裏社会の異性関係の見せ方がかなりソフトにみせているので違和感があるのだ。夜の世界で働くウンギョンとミジンの描き方に現実味が全くみえないのだ。
家族という面をみせて裏社会に生きる男でも人間味があるところを演出している。ウミンと母、チョルジュンと妹ヒョスク(ホン・スヒョン)、ヨンファンと父、この三つの家族関係をみせている。主に彼らの過去がみえるようになっており、現在の彼らの世界に導いているのがみえたり、家族を想うところをみせているのであろう。
アクション面には失望してしまった。鉄パイプや木刀を持って殴りあうシーンと蹴りで攻撃するシーンをワンパターンのように何度も使っていることで、格闘シーンのバリエーションの少なさが目立ってしまった。冒頭でのカジノでの乱闘、街中でのウミンとチョルジュンの部下たちとの乱闘、麻薬密売現場で多くの人物たちが混じり合っての乱闘のところだ。暴力団の抗争なのだから、様々な戦いの描き方があるように感じるが、どれも似たような演出なので残念な気持ちになった。
率直な感想は、TVドラマの総集編をみせられているように感じた。映画という形で披露する作品としては、クオリティーが低く、カメラワークも顔中心にみせているようで、狭い空間での描写にみえてしまっている。友人四人+兄貴分カンソプらの友情を描くシーンが少なすぎることで彼らの心情がみえず、裏切り行為をする苦渋の決断といった人間ドラマの部分が欠落してしまっている。友情があった過去を中盤までに挿入シーンとして何度も描いていたら、彼らがどのような感情を持っていたのかがみえたはずだろう。出演俳優が好きな人以外にはおすすめ出来ない作品である。
【なめ犬的おすすめ度】 ★