レビューが400本目になりました。区切りがいいので何か特別なことを考えましたが、いつも通りに更新することにしました。今まで韓国映画を何本鑑賞したか数えてないですが、まだまだネタ切れにならないと思います。有名作品、インディペンデント作品、短編作品とかもあるし。鑑賞した全作品のレビューを書くことは不可能なので、「これは」っていうような作品を扱いたいです。
なめ犬のとことん韓国映画のブログを閲覧してくださる方々にいつも感謝しています。
今後とも、どうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m
少しの間、実験的な形でレビューをアップしたのは、俳優リストに関係しています。俳優リストを作った当初は、レビューが増えていけば各俳優が出演している作品のリンク先が自動的に埋まるだろうと甘く考えていましたが、全く埋まらないことに気づいたからです。やはり、狙い撃ちしてレビューを書かないとダメなのかもと思って試しました。結論からして、狙い撃ちしないとダメでした。
妻が結婚した
制作年:2008年
監督:チョン・ユンス
出演:ソン・イェジン、キム・ジュヒョク、チュ・サンウク
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
鑑賞:韓国版DVD
舞台は2002年のサッカーワールドカップ開催のソウル。ドックン(キム・ジュヒョク)は、昔の職場仲間であったイナ(ソン・イェジン)と電車で再会した。二人は飲みに行き、当時一緒に働いていた頃の話しやサッカーの話しで盛り上がった。閉店まで二人は飲み、その後イナがドックンを自分の家に誘い、親しい関係になった。二人は恋人関係になり、幸せな日々を過ごしていたが、イナの行動にドックンが苛立っていた。イナの帰宅時間が遅く、携帯電話にかけても電源を切られ、男性と酒を飲んでいることで、ドックンは心配でいた。ついにドックンはイナの態度に爆発してしまい、イナの行動を問い詰めると他の男性と寝ていたことを暴露した。ドックンはイナに別れを告げたが、まだ愛していることで二人はやり直し、ドックンはイナの考え方を理解するように努めた。サッカーワールドカップの決勝トーナメント準々決勝の韓国vsスペインのPK戦のときに、ドックンはイナにプロポーズをして二人は結婚した。暫く二人はソウルで幸せに暮らしていたが、イナは仕事により単身で慶州にいくことになる。イナは、ドックンをなんとか説得して必ず週末は一緒に過ごすことを決めて、ドックンはイナが慶州に行くことを了承した。少しの間は順調にいっていた二人であるが、突然イナはドックンに恋人がいると爆弾発言をして、その恋人とも結婚したいと言い出した。自由奔放なイナに振り回されるドックンは、どのような決断を下していくのかというお話。
監督は、『イエスタデイ』『今、愛する人と暮らしていますか?』のチョン・ユンス監督。
出演者は、妻イナを演じるのは『四月の雪 (原題:外出)』『ファム・ファタール (原題:無防備都市)』のソン・イェジン、夫ドックンを演じるのは『クァンシクの弟クァンテ』『愛なんていらない』のキム・ジュヒョク、もう一人の夫チェギョンを演じるのは『阿娘』『最強ロマンス』のチュ・サンウク、部長を演じるのは『極楽島殺人事件』『肩ごしの恋人』のキム・ビョンチュン、ドックンの友人キム・ジノを演じるのは『サイボーグでも大丈夫』『少年監督』のチョン・ソンフン、飲み屋のマスターを演じるのは『頑張れ!グムスン 』『ファム・ファタール (原題:無防備都市)』のユン・ヨンゴル、ドックンの浮気相手ソヨンを演じるのは『お熱いのがお好き』『チェイサー (原題:追撃者)』のオ・ウジョン。
自由奔放な女性イナが重婚するという、一夫一妻制を壊して一妻多夫制という形を取り入れ、恋愛や結婚の形や今まで男性社会だったところに能力がある女性が社会進出していくことで、大きく社会が変化して女性の思考も多様化したところを示し、現代社会に強力な刺激を与えているようにみられる。そして、既存の恋愛観や結婚観とかけ離れた思考の女性イナが、どのように生きていくのかをみせている。
イナの思考では、一人の男性を一生愛することが出来ないと主張しており、結婚に対してどのようなものなのかを深く考えていないタイプである。ドックンはこの思考を何とか変えようとするために結婚をして、イナの思考が変化することを期待するのである。夫婦としての仲はしっかりと繋がれているが、新たな展開として結婚しているのに恋人がいると堂々と告白するところに怖さを感じてしまうのだ。ドックンの拍子抜けした表情や驚愕した表情がよく撮れており、キム・ジュヒョクの感情表現をみて多彩な役者だと褒めたい。
もう一人の夫は、慶州の家で一緒に住んでいるチェギョン(チュ・サンウク)である。戸籍上では、韓国は一夫一妻制なのでイナの正式な夫はドックンになるが、生活環境をみる限りでは重婚のような形になっており、ドックンもチェギョンもこの形を受け入れているのだ。一度は離婚を考えたドックンなのだが、ドックンがイナの思考をどのようにして受け入れていくのか、どのように感じているのかを鑑賞者側も理解していく必要がある。ドックンとチェギョンとの間での会話があり、中盤から終盤に向けてのポイントになっている。
サッカーの演出は、個人的にはよかったところであった。リーガ・エスパニョーラ(スペインリーグ)の二強とされているFCバルセロナとレアル・マドリード。FCバルセロナの熱烈なファンであるイナ、レアル・マドリードの熱烈なファンであるドックンが一緒にテレビ観戦をしていたり、当時レアル・マドリードに在籍していたジダン、フィーゴ、ベッカム、ロナウド、ロベルトカルロス、ラウル(現在も在籍中)などの選手名が会話の中に出てきたり実際の試合映像を映しているのだ。フィーゴがFCバルセロナからレアル・マドリードに移籍したことをネタにしていたり、両チームの総対戦成績だったり、ちょっとしたサッカーの知識を持っていると楽しめるようになっている。また、2002年サッカーワールドカップの実際映像を使用して、熱狂する国民の中にイナやドックンが含まれており、臨場感ある演出は良く出来ている。
重いテーマにみえるが、実際はユーモラスな感じで進行しているところもあるので、感情のバランスを考慮しながら作られている作品にみえる。社会の慣習や結婚制度から逸脱している女性が、二人の夫を愛して、成り立っている姿をみせているので、新しい形を生み出したのかもしれない。まあ、道徳的なことや倫理的なこともあるので、これが正しいかは断言できないけど。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★