個人的にイ・ユンギ監督の作品との相性が良いみたいだ。今までレビューでアップした『チャーミング・ガール (原題:女、チョンヘ)』や『アドリブ・ナイト (原題:とても特別なお客さん)』も好きだったから。
ラブ・トーク
制作年:2005年
監督:イ・ユンギ
出演:ペ・ジョンオク、パク・チニ、パク・ヒスン
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
鑑賞:韓国版VCD
アメリカのロサンゼルス(LA)でマッサージ店を経営しながら自らもマッサージ嬢として働くサニー(ペ・ジョンオク)は、一戸建てに住み裕福な暮らしをしている。サニーは、白人の恋人アンディと付き合っているが、心に壁を作っており、全ての感情を出さずにいる。ある日、大学生のチソク(パク・ヒスン)がサニーの家に訪れ、一階の一室を借りて生活するようになる。大学生でありながらほとんど学校に行かず、昼間はレンタルビデオ屋で働き、夜はナイトクラブで外国人女性と遊んでいる。過去に韓国で付き合っていた女性のことが今でも忘れられないでいた。ヨンシン(パク・チニ)は、大学院で心理学を勉強している留学生で、夜はラジオの深夜放送で恋愛相談を主にした「Love Talk」という番組のDJをしており、「ヘレン・チョン」という名前で活動している。ラジオで他人の恋愛相談をしているのに、ヨンシンは結婚しているソンホ(チョン・ヒテ)と不倫関係が続いており、自分の恋愛で悩んでいる。夜遅く仕事が終わり自宅でラジオの深夜放送を聴くサニーは、「Love Talk」という番組に興味を持つようになり、思いきって番組に電話をして、DJヘレンにいろいろと質問をしてしまう。サニーは、自分の恋愛ではなく、DJヘレン自身の恋愛について質問してくることで、DJヘレンは戸惑ってしまう。ある日、チソクがレンタルビデオ屋の仕事が終わり、店を出てすぐ横の公衆電話で話している女性が気になり、見てみると過去に付き合っていた忘れられない女性ヨンシンであった。それ以来、お互いが会うようになる。サニー、ヨンシン、チソクのそれぞれが過去に大きな心の傷を持ちながら、現在もその心の痛みが癒えることがない。それぞれが共通の繋がりがあるサニーとヨンシンとチソクは、どのように癒えない気持ちを整理して人生を再出発させていくのかというお話。
監督は、『チャーミング・ガール (原題:女、チョンヘ)』のイ・ユンギ監督。
出演者は、マッサージ店を経営するサニーを演じるのは『嫉妬は私の力』『奇跡の夏 (原題:アンニョン、兄ちゃん)』のペ・ジョンオク、大学院生でラジオDJをするヨンシンを演じるのは『星』『恋愛術士』のパク・チニ、大学生でレンタルビデオ店で働くチソクを演じるのは『ファミリー (原題:家族)』『南極日誌』のパク・ヒスン、サニーと別居中の夫を演じるのは『私の頭の中の消しゴム』『チャーミング・ガール (原題:女、チョンヘ)』のキム・ジュンギ、レンタルビデオ店主を演じるのは『木浦は港だ』『南極日誌』のチェ・ドンムン、ヨンシンの母を演じるのは『燃ゆる月』『恋愛の目的』のイ・ヒョンスン、ヨンシンが不倫している相手ソンホを演じるのは『私の男のロマンス』『ライアー』のチョン・ヒテ、マッサージ嬢のボッキを演じるのは『スキャンダル』『親知らず』のチェ・バニャ、通行人チョンヘを演じるのは『チャーミング・ガール (原題:女、チョンヘ)』のキム・ジス。
異国の地で孤独を感じながら、過去に傷ついた心や現在の空虚な人生をサニー、ヨンシン、チソクの三人を中心に描いている。裕福な生活をしているが過去の家庭問題や恋愛においてトラウマを持つサニー、心理学を専攻している大学院生とラジオDJと肩書きは立派であるが先のない恋愛や母のことで悩み苦しむヨンシン、過去の女性を想いながらも新しい恋愛に踏み切れず何をすれば今の人生を打破できるのか悩むチソク。
現在のサニー、ヨンシン、チソク、それぞれの恋愛模様をみせている。サニーは、白人のアンディと付き合っているが、アンディに対して深入りすることをせず、サニー自身が心に壁を作って本来の姿を見せずに閉じたままでいるのだ。オープンなスタンスでサニーを愛するアンディは、サニーの態度に戸惑っているのだ。ヨンシンは、妻のいるソンホと付き合っており、不倫関係がズルズルと続いている。妻を蹴落として略奪愛をすることなくソンホの生活を維持し、ソンホのペースで恋愛が進むことでもどかしく感じている。チソクは、ナイトクラブで知り合ったヒスパニックのアリスと付き合うようになる。過去の恋愛に心の迷いがありながら、時の流れるままにアリスと順調にいくが、アリスの家に行ったとき、幼い娘がおり更に別居中の夫とかちあってしまい、夫婦喧嘩が始まって揉めてしまう。
三人が面白い繋がりを示している。サニーとチソクの繋がりは、同じ家に住む同居人で、初めの頃はお互い相手に対して興味がなく、挨拶やちょっとした会話しかしていない。ストーリーが進むに連れて、サニーがある者から助言をもらったことで近くにいる人間チソクに心を開きだして、凍った心を溶かしていくのだ。サニーとヨンシンの繋がりは、ヨンシンというよりはDJヘレンとの繋がりになるだろう。サニーがラジオ番組に電話をしたことから、二人は番組上で会話をしていくことで、精神的な繋がりを持つようになっていく。顔がみえないどこの誰か分からないこともあり、二人が心を開いていく姿をみせている。ラジオ番組によってストーリーを進行していく作りになっているのがポイントかもしれない。ヨンシンとチソクの繋がりは、韓国で過去に交際しており、アメリカの地で再会したことで、今後二人の関係が発展していくのかというのが見所であろう。三人のお互いの距離感が非常に良くて、近づき過ぎず、離れ過ぎずなのだ。三人の気持ちとその状況によって、その距離感が変動していくのである。
中盤から終盤は、サニーの自宅でマッサージ店の同僚たちを中心にしたバーベキューパーティーをして、そこにヨンシンやチソクも加わり、飲み会ゲームに参加していく。飲み会ゲームでは、ヨンシンの気持ちが出ているのでなかなか面白い展開になっている。更に、サニーの別居中の夫の登場、サニーの過去などが見えてきて、ストーリーが進むに連れて隠されていた事柄がわかってくるので、終盤になるほど引き寄せられていく。
ラストシーンでは、サニーが通行人チョンヘ(キム・ジス)とすれ違って終わるところは、『チャーミング・ガール (原題:女、チョンヘ)』を鑑賞していれば納得するところである。通行人チョンヘがいなくてもストーリーは成り立つが、チョンヘとすれ違うことでサニーの心の描写を鮮明にしているように感じとれる。そして、今後のヨンシンやチソクの各々のベクトルがみえているのも良く出来ている。派手さがなく静かな作品であるが、人物を繊細に扱っているので自分好みの作品であった。
韓国語、英語、日本語、スペイン語と四つの言語が使われており、アメリカ西海岸LAという土地柄から他人種が住んでいるのがわかるであろう。韓国人同士の間では韓国語、他人種同士の間では英語、日本人のマッサージ嬢が話す日本語、アリスら家族やヒスパニックらが話すスペイン語、といった形で本作品は使われている。日本語とスペイン語のところは字幕がないが、日本語はもちろん分かるし、スペイン語は状況判断でどのような内容を話しているかは想像できるだろう。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★