ブラックコメディが好きな人は気に入る作品かもしれない。多少、下ネタがあるのでそれも受け入れることができれば。
死んでもハッピーエンド (原題:死んでもハッピーエンディング)
制作年:2007年
監督:カン・ギョンフン
出演:イェ・ジウォン、イム・ウォニ、チョ・ヒボン、パク・ノシク
ジャンル:コメディ
鑑賞:日本版DVD
クリスマスの夜、カンヌ映画祭で主演女優賞の知らせを受けた女優ジウォン(イェ・ジウォン)は、授賞式に出席するため数時間後には飛行機に搭乗しなければならない。ジウォンは、マネージャーのドゥチャン(イム・ウォニ)と一緒にマンションに帰宅したとき、在米韓国人デニス(リチャード・キム)、暴力団ボスのチェ社長(チョ・ヒボン)、ジウォン出演作のパク監督(パク・ノシク)、大学教授のユ教授(チョン・ギョンホ)が同時に訪ねてきた。彼女とクリスマスを過ごし、プロポーズをするために集まった四人であった。更に、ジウォンのマンションの前には、暴力団ボスのチェ社長の部下二人が車で待っていたり、最近出没するサンタの衣装を着た泥棒(ウ・ヒョン)を捕まえるために二人の刑事が車で張り込みをしている。四人の男とジウォンとの話し合いは平行線のままになり、リビングでジウォンとデニスが二人っきりになったとき、ちょっとした事故でデニスは死んでしまった。ジウォンはデニスの死体を隠そうとするが、次々とトラブルが起こり、次々と訪問客が死んでいく。更に、思いも寄らない訪問客が訪れてくることで、ジウォンと死体遺棄を手伝うマネージャーのドゥチャンが必死に隠そうとする。果たして、ジウォンのマンションに多くの訪問客が訪れるなかで、ジウォンたちはこのピンチを乗り越えることができるのかというお話。
監督は、本作デビュー作のカン・ギョンフン監督。
出演者は、女優ジウォンを演じるのは『オールド・ミス・ダイアリー 劇場版』『まぶしい日に』のイェ・ジウォン、ジウォンのマネジャーのドゥチャンを演じるのは『シルミド』『クライング・フィスト (原題:拳が泣く)』のイム・ウォニ、暴力団ボスのチェ社長を演じるのは『明るい家族計画 (原題:よい暮らしをして見よう)』『花嫁はギャングスター ソウルウエディング (原題:極道の妻3)』のチョ・ヒボン、ジウォン出演作のパク監督を演じるのは『グエムル』『カンナさん大成功です! (原題:美女はつらいの)』のパク・ノシク、大学教授のユ教授を演じるのは『甘く、殺伐とした恋人』『角砂糖』のチョン・ギョンホ、在米韓国人デニスを演じるのは本作スクリンデビューのリチャード・キム、ジウォンの妹ウンジを演じるのは『甘く、殺伐とした恋人』『妻の恋人に会う』のチョ・ウンジ、同じ映画出演者ドゥホンを演じるのは『相棒 シティ・オブ・バイオレンス』『1番街の奇跡』のチョン・ドゥホン。
ジウォンの心を射止めようとする四人が死亡し、死体を隠そうとするジウォンとドゥチャンを面白く描いたブラックコメディ作品であろう。
在米韓国人デニスが足を滑らせて冷凍魚に刺さって死んでしまうところから、死の連鎖が始まっていき、デニスの死体を隠そうとユニットバスに運ぶがユ教授に出くわすことで、ユ教授は便器に頭を突っ込んだ形で溺死、パク監督は階段から突き落とされて転落死、チェ社長は三人の死体をみて逃げようとするが結局タンスが倒れてきて押し潰された形で死んでしまう。四人が死ぬまでに、ドゥチャンがジウォンに協力するプロセス、ジウォンとドゥチャンの必死な行動、トイレを借りにくる刑事たちとのやりとり、四人の死に様をみていた泥棒、といった笑いを入れながら進行していく。
パロディ要素を取り入れているところがあり、デニスの冷凍魚で死ぬところはキム・ギドク作品『ワイルド・アニマル (原題:野生動物保護区域)』をパロったり、死体を隠そうとするのは『甘く、殺伐とした恋人』をパロったり、終盤でみせる壊れたテレビから長髪の人間が現れる『リング』をパロったりしている。キム・ギドク作品のパロディのところは意図的にしているのがわかり、チェ社長の部下二人が車の中でキム・ギドクの批評をしており、「魚と寝る女は怖かった」「妙な映画ばかりだな」という会話は笑ってしまった。『甘く、殺伐とした恋人』は、デニスが死ぬまえにジウォンがテレビで観ているシーンが伏線だろう。気づかないだけで、他にもパロディ要素を取り入れているかもしれない。だって、パロディ映画『おもしろい映画』のイム・ウォニが、この作品に出演しているから。
ストーリー展開としては、テンポよく進行しており、新たな者たちの登場によって面白く演出している。妹ウンジ(チョ・ウンジ)が数回かジウォンに電話をかけてくるところが伏線になっており、中盤以降にド派手なファッションで現れたり、映画の共演者ドゥホン(チョン・ドゥホン)や映画プロデューサーや音楽隊などがジウォンのマンションに集結してからが、この作品の第二ラウンドといった感じだ。そこに刑事たち、泥棒、部下ヤクザたちが絡んできたり、死んだと思っていた人物の行動があったりアイデアを豊富に使い込んでいる。
主人公イェ・ジウォンの役名が本名と同じだったり、マネージャーのドゥチャンの苗字が「イム」という点も本名と同じだったり、妹ウンジや映画共演者ドゥホンも本名と同じなところをみると、笑いのネタとしているのであろう。
コメディとして笑えるところと笑えないところがあるので、笑いのセンスとしては微妙な感じだ。でもストーリーの進行は、これでもかといった感じでスピード感があるので観やすかった。ブラックコメディだからこそ、本題名がちょっと変わっているのが納得できるところだ。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★