韓流の王道みたいな作品にみえた。使い古したネタをみせるのは別に構わないが、工夫も深みもないのが残念なところである。「新型」のカン・ヘジョンが・・・。言葉に詰まってしまった。『オールド・ボーイ』のときの「旧型 2003形」が一番よかったかな。
ハーブ
制作年:2007年
監督:ホ・インム
出演:カン・ヘジョン、ペ・ジョンオク、チョン・ギョンホ
ジャンル:ヒューマンドラマ
鑑賞:日本版DVD
年齢は20歳でも知能は7歳の知的障害者サンウン(カン・ヘジョン)は、花屋を経営する母ヒョンスク(ペ・ジョンオク)と一緒に暮らしている。母ヒョンスクの愛をいっぱいに受けて育ったサンウンは、母を誰よりも頼りにしており、母の言いつけを守っている。童話が好きなサンウンは、素敵な王子様が現れると信じており、空想の世界に入り込んでいる。そんなとき、着ぐるみをきた警察官のジョンボム(チョン・ギョンホ)に一目ぼれしたサンウンは、彼が王子様だと信じ込んでしまう。ジョンボムは、仕事中に弁護士事務所の前でサンウンが外国人と話しているのを見かけたことで、彼女のことを才色兼備な国際弁護士だと思い、猛烈にアタックして二人は付き合うようになる。ある日、デートをしていたときにサンウンのカバンから障害者を証明するカードをみたことで、ジョンボムはサンウンへの愛が冷めてしまい、連絡をとらないようにしていた。一方、母ヒョンスクは友人ミジャの検査のために病院に付き添いでいたが、ついでに母ヒョンスクも検査を受けた。だが、母ヒョンスクは検査の結果を知って驚愕する。果たして、サンウンとジョンボムの恋の行方はどうなのか、母の運命に何が迫っているのか、サンウンがどのように成長していくのかというお話。
監督は、『恋する神父 (原題:神父修業)』のホ・インム監督。
出演者は、知的障害者サンウンを演じるのは『トンマッコルへようこそ (原題:ウェルカム・トゥー・トンマッコル)』『とかげの可愛い嘘 (原題:とかげ)』のカン・ヘジョン、サンウンの母ヒョンスクを演じるのは『奇跡の夏 (原題:アンニョン、兄ちゃん)』『ラブ・トーク』のペ・ジョンオク、警察官ジョンボムを演じるのは『クァンシクの弟クァンテ』『暴力サークル』のチョン・ギョンホ、母ヒョンスクの友人ミジャを演じるのは『マドレーヌ』のイ・ミヨン。
障害者を主人公にし、母と子供の愛情、障害を乗り越えての自立、憧れの人との恋愛を盛り込んだものである。障害者をモチーフにした作品は、近年の韓国映画の中で多いから、どれだけ個性を出すのかというところに焦点が絞られる。親子の愛情、障害者が社会に出て自立していくところも当たり前すぎる気がする。そこに恋愛要素を含めているが、恋愛模様が普通すぎて衝撃がない。メッセージ性が乏しいところが、この作品の欠点なところである。更なる欠点は、序盤が現在軸になっており、サンウンが会社の面接をしているシーンになって過去に遡る構成になっているところは明らかに失敗している。音楽でいうとサビから始まっていることで、15分ぐらいすれば大筋がみえてしまい、中盤から終盤にかけての感動を誘うシーンでもわかりきったことをそのまま再現されても感情移入ができない。
サンウンとジョンボムの恋愛は、勘違いから始まり、障害者というレッテルによってジョンボムが一歩下がってしまうが、サンウンを知っていくことで純粋で優しい女性であることに気づいていくのである。あくまで、サンウンに合わせた恋愛になっているので、大人からみると恋愛ごっこにみえてしまうのが正直なところなのだ。サンウンの親友は、小学生のヨンラン(イ・ヨンユ)だけで、他の友人も小学生というのも奇妙な光景にみえてしまう。知的レベルが同じということで、このような設定になっているのは分かるが、20年間生きてきたサンウンの人生に同年代の友人が一人もいないところに寂しさを感じてしまう。そこは母が友人の役割を果たしているのもわかるが。
一番の見せ場は、母ヒョンスクと娘サンウンの親子愛をみせており、その力強さは感じるものがある。カン・ヘジョンとペ・ジョンオクの役者としてのパワーが発揮しているからであろう。サンウンが徐々に知能が成長していったり、ジョンボムとの恋愛によって言葉で表現できない感情に苦しんだり、母の今後を知ることで自分なりに心を整理していたり、終盤に母を想うサンウンの気持ちが全面に表現されている。
あまりにも正統派なストーリーになっているので、どんでん返し的な要素を含まないとこれでは勿体ない。シンデレラの童話をアニメーションとして挿入していることで、「継母」を伏線にして、実は母ヒョンスクと娘サンウンは血が繋がらない父の連れ子といったちょっとした衝撃を与えないと鑑賞者は飽きるであろう。何だか、学生向けに作られた国が推奨するような作品にみえてしまった。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★