アメノナカノ青空 (原題:...ing)
制作年:2003年
監督:イ・オニ
出演:イム・スジョン、キム・レウォン、イ・ミスク、チェ・ドンムン
ジャンル:ラブストーリー
鑑賞:韓国版DVD
幼い頃から体が弱く病院を入退院していたミナ(イム・スジョン)は、高校生になり学校生活を楽しく過ごすつもりでいたが、なかなか友人もできず馴染めなかった。ミナの左手は先天的な奇形でそれを隠すために常に白い手袋をつけて学校に通う。父は既に亡くなっているが、とっても仲のよい母ミスク(イ・ミスク)と幸せに過ごしている。ある日、ミナのマンションの階下に写真専攻の大学生ヨンジェ(キム・レウォン)が引っ越してくる。ミナの宝物のライターを借りたことを口実にヨンジェはミナに近づき始める。ヨンジェは、ミナの写真を撮ったり、学校の前に迎えにきたり、自分が育てた亀をプレゼントする。日常生活の中に入ってくるヨンジェにミナは徐々に惹かれていく自分に気づき始める。しかしミナが残り少ない命であると知り、二人の関係は今後どのような展開になっていくのかというお話。
本作品がデビュー作の撮影当時28歳の若い女性イ・オニ監督。出演者は、体が弱い女子高生ミナを演じるのは『ピアノを弾く大統領』『箪笥(原題:薔花、紅蓮)』のイム・スジョン、カメラマンの青年ヨンジェを演じるのは『プライベートレッスン 青い体験(原題:青春)』『2424』のキム・レウォン、ミナの母親ミスクを演じるのは『燃ゆる月』『スキャンダル』のイ・ミスク。
難病に侵されているミナが、図々しいけれど人がよい憎めない青年ヨンジェと出会って、今までに体験できなかったことを楽しみ、生きていることの充実感でいっぱいに暮らせるようになる。だけど、死ぬ運命にあるミナは恋人ヨンジェや母ミスクとどのように愛を感じることができるのかというところだ。
ミナは、母には内緒でビールを飲んで、煙草も吸ってロックサウンドが大好きだが決して非行少女ではない。たまたま窓際で煙草を吸っていたミナをみかけたヨンジェは、ミナに興味をもち近づき、陽気なヨンジェに初めはなかなかミナは自分をみせずにいた。だが、積極的なヨンジェがミナに近づくことによって、ふとした瞬間にヨンジェのことが好きになっていたのだ。ラブストーリーとしては、大学生と高校生の純愛系でゆったりした恋の流れになっている。これだけなら、ただのハッピーエンドになってしまうが、ミナは難病を抱えているのだ。
ミナとヨンジェのラブストーリーでもあるが、もう一つの見せ場は母ミスクと娘ミナの熱い母娘愛が感動を誘うのだ。母を名前で呼び合う仲の二人は、お互いが信頼し合っているし、気持ちも繋がっている。残り少ない命であることを医師から聞かされていた母は、娘を死ぬまで入院させるのでなく好きなように生活をさせて楽しませるようにさせる気持ちが伝わる。旦那に先に逝かれて一人で娘を育てる母は、日記帳に娘ミナへの気持ちや旦那への気持ちを綴っているのだ。この日記帳が大きな伏線になっていて、ミナが自分の命が残り少ないことを知ったのがこの日記帳なのだ。なんだか、恋愛よりも母娘愛の方が強い感じを受けるストーリーになっている。
いい味を出しているのは、ミナが通っている高校で自主的に交通整備をしている青年である。過去に交通事故で恋人を亡くしたことで、忘れられなくてはじめた交通整備。登場は少ないが、この青年の行動にミナの心を変化させることになる。
難病を抱えるヒロインとの泣かせる恋愛ものになっているが、母ミスクの存在が大きいことで娘への愛をうまく表現して、ありきたりの恋愛映画と違って工夫をしている。映像面で気を使っているのがわかり、内面に青空と雲の絵が描いてある傘が空に舞う演出やマンションの下から上にドーナッツ状にしたタバコの煙を飛ばすといったところだ。非常にもったいないところは、ミナの左手を序盤でみせてしまったところだ。ミナが買い物帰りにヨンジェともみ合って偶然左手がみえてしまい気まずくなるシーンだ。最後の最後までこの左手の状態を映像化せずに隠して、最後のあのシーンに繋げていればもっと感動的になったと思う。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★