年が明けたからといって特別なこともなく、マイペースにアップしていくことにした。
ナチュラル・シティ
制作年:2003年
監督:ミン・ビョンチョン
出演:ユ・ジテ、イ・ジェウン、ユン・チャン、ソ・リン、コ・ジュヒ
ジャンル:SF、アクション、ラブストーリー
鑑賞:一般上映 (日本)
人間とアンドロイドが共存する2080年が舞台。かつてソウルと呼ばれていた巨大都市メッカ・ライン・シティでは、アンドロイドは規則により一定の廃棄期限が設けられていたが、廃棄を逃れて脱走した離脱アンドロイドによる数々の犯罪が街を荒廃させ、有害なアンドロイドの除去を請け負うMLPC(メッカ・ライン・ポリス・センター)がある。そのMLPCの特別捜査官R(ユ・ジテ)はある日、クラブで踊るショーガールのアンドロイドのリア(ソ・リン)と出会って恋に落ちる。だが、彼女は廃棄期限の迫ったアンドロイドで、Rはなんとか彼女の命を延ばすために、違法であるがアンドロイドの違法改造を行うジロ博士(チョン・ウンピョ)に接触する。ジロ博士はRにリアと同じDNA構造を持つスラム街の娼婦シオン(イ・ジェウン)を連れてこいという危険な取り引きを提案する。アンドロイドのリアを生かすために人間のシオンを犠牲にしなければならないので悩むR。果たして、Rはアンドロイドのリアの命を救うことができるかというお話。
本作第二作目で、前作『ユリョン』のミン・ビョンチョン監督。出演者は、特別捜査官Rを演じるのは『春の日は過ぎゆく』『Mirror 鏡の中(原題:鏡の中へ)』のユ・ジテ、スラム街の娼婦シオンを演じるのは『イエロー・ヘアー』『ジャカルタ』のイ・ジェウン、特別捜査官Rの同僚で友人ノマ隊長を『友へ チング(原題:チング)』のユン・チャン、Rが愛するアンドロイドのリアを演じるのは『アイラブユー』『ロード・ムービー』のソ・リン。本作品は、2004年度 第41回 大鐘賞で映像技術賞を受賞した。
近未来のSFアクションと人間とアンドロイドが恋するラブストーリーを融合させたもの。廃棄期限切れアンドロイドや犯罪をするアンドロイドを取り締まる職のRが、廃棄期限があと10日のアンドロイドのリアを愛していることで、裏世界で取引を行いなんとかリアを救おうとする。殺害したアンドロイドから人工知能チップを取り出して、それを闇市場に流すことで資金を得ていたRなのだ。そしてジロ博士に多額の金を払って、リアと同じDNAを持つ人間シオンをジロ博士のところに連れて行き、リアの今までの記憶を維持したままシオンに移植しようと計画する。このあたりは、人間の倫理的な思考がRに表れており、生きている人間を犠牲にしてでも愛するアンドロイドのリアを生かすのかということで苦悩するのがみえる。
アクションに関しては、戦闘用アンドロイドのサイパー(チョン・ドゥホン)とMLPCの特別捜査官たちとの戦いが見所である。サイパーは人間界を脅かす戦闘能力を持ち、そして優れた頭脳も備わってなおかつ凶暴なのだ。機関銃で戦う特別捜査官たちに対してサイパーはキックやパンチといった素手で戦うがかなりの凄腕で特別捜査官たちはやられていく。銃撃戦よりも肉体戦を多様している。ノマ隊長たちが追っているサイパーがようやく追い詰めたと思いきやRの目のまえで逃げられてしまう序盤。序盤で起こるサイパーとMLPCの特別捜査官たちとの戦闘が終盤でも行われる。
ジロ博士の不気味さがこの作品のカギを握っている。ただRがリアのためにジロ博士と取引をしているようにみえるが、ジロ博士には裏の策略がある。ジロ博士の存在、優れた知能、汚れた過去が徐々にわかってくるとある事柄にぶつかるようにストーリーが進んでいく。ジロ博士は初めからかなり胡散臭い存在であったから、ある程度のことは予測はできるであろう。あるDNAと一致するところは、明らかになるまで気づかなかったのでうまく隠していたということで感心した。
SFというジャンルなので架空世界のルールを理解することやストーリー展開を読み取るのに少し時間がかかった作品である。ストーリーがみえてしまえば大したことない作品で、映像に凝りすぎてストーリーが薄くなっているのがわかるだろう。アクションは激しい戦闘シーンが最初と最後だけでサイパーを演じるチョン・ドゥホンのすごさだけが目立ってしまう。Rとリアのラブストーリーも中途半端な感じで、シオンが絡んでも何にもならず、盛り上がるようなシーンはなく、無表情なリアと苦悩するRの感情もいま一歩なのだ。近未来SFを題材にした作品はハリウッド作品ではいろいろ上映されており、それと比較してしまうと韓国映画の近未来SFはまだまだ発展途上の分野であると感じた。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★