今回の東京フィルメックス映画祭で唯一の韓国映画。リュ・スンワン監督の舞台挨拶とティーチ・インがあるので鑑賞をした。この作品は2007年の陽春に一般公開されるのが決まっている。
相棒 シティ・オブ・バイオレンス
制作年:2006年
監督:リュ・スンワン
出演:リュ・スンワン、チョン・ドゥホン、イ・ボムス、チョン・ソギョン
ジャンル:アクション
鑑賞:第7回東京フィルメックス映画祭
ソウルで刑事をしているチョン・テス(チョン・ドゥホン)は、幼なじみのワンジェ(アン・ギルガン)の訃報を知り、十数年ぶりに故郷の田舎町オンソンに戻ってきた。テスは、葬儀場でワンジェと同様に幼なじみのソックァン(リュ・スンワン)、ピロ(イ・ボムス)、ドンファン(チョン・ソギョン)と再会した。ワンジェの死の原因は、彼の飲み屋で若者たちが暴れたので、外に逃げた若者たちと追いかけるワンジェが喧嘩して刺されて死んだことになっている。どうも納得がいかないテスは、ワンジェの死の真相を調べるうちに大多数の若者たちから総攻撃される。そこに助けに入ったソックァンによってその危機から逃れた。ワンジェ殺害の真相を追っていると、事業家として活躍している幼なじみのピロにぶち当たった。ピロは、ある大物とこの町の都市開発計画を行うことで、町民たちと揉めていたことやワンジェとも揉めていたことがわかった。果たして、テスとソックァンはワンジェの死の真相を解き明かし、故郷オンソンが何者かに侵されている危機を救うことができるのかというお話。
監督は、『ARAHAN アラハン (原題:阿羅漢 掌風大作戦)』『クライング・フィスト(原題:拳が泣く)』のリュ・スンワン。出演は、本作の監督でもあり主役のソックァンを演じるのは『復讐者に憐れみを』『オアシス』のリュ・スンワン、同じく主役で刑事のテスを演じるのは『チャンピオン』『風のファイター』のチョン・ドゥホン、元ヤクザ現在事業家のピロを演じるのは『オー!ブラザーズ』『スーパースター カム・サヨン』のイ・ボムス、ソックァンの実兄ドンファンを演じるのは『英語完全征服』『王の男』のチョン・ソギョン、元ヤクザ現在(ストーリー上は死んでいるが)飲み屋のマスターをしているワンジェを演じるのは『クライング・フィスト(原題:拳が泣く)』『美しき野獣』のアン・ギルガン、ワンジェの妻でもあり、ピロの実妹のミランを演じるのは『欲望 Lovers(原題:おいしいセックス、そして愛)』『VOICE ヴォイス(原題:女高怪談4:声)』のキム・ソヒョン。
監督と主役の二つをこなすリュ・スンワンのこの作品は、商業的な作品として意識しておらず、監督も言っていたとおり自分のやりたいものをやるスタンスが感じられる。武術をベースにしたアクションでなく、ひたすら殴る蹴るを連打するアクションである。
まず人間関係は、幼なじみ5人の構成になっており、幼いときから喧嘩が強い刑事のテス、同様に喧嘩が強い元ヤクザ現飲み屋のマスターのワンジェ、喧嘩の強さはそこそこの元ヤクザ現事業家のピロ、判事の試験に落ちまくって現在塾の講師をする喧嘩の弱いドンファン、4人よりも年下でワンジェの店で働いているソックァン。
十代の少年時代と現在の時間軸を使い、深い絆で繋がっている5人であることを少年時代で示している。大勢を相手に5人で喧嘩をする彼ら、その理由もソックァンの兄ドンファンが殴られたことに仕返しをしたことで大騒動になるエピソードを加えている。そこで将来再会を誓い蛇酒を地面に埋めるのは印象的である。少年時代の絆が現在で変わってしまったのが蛇酒に想いが詰まっているのが終盤でわかる。
アクションに関して言えば、序盤でテスとソックァンに集団で襲いかかってくるシーンはあらゆる格闘の技を使って殴り倒していく姿は圧巻である。ワイヤーアクションを使わずにあれだけ飛んだり跳ねたりするのはかなり役者に負担がかかっているだろう。早い段階でピロの悪行がわかることで、テスとソックァンの行動と連動してストーリーが進むから目的がはっきりしてわかりやすい。亡くなったワンジェとピロの差は、うまく比較できるようにされており、ワンジェはヤクザを辞めて不器用ながら飲み屋のマスターをしてそれなりに人望がある。それに対してピロは、ヤクザを辞めても経営の能力があったために事業家として成功をし、お金の力で入れた権力のために人望はあまりない。ピロの味方は腕っ節のよいボディーガードの4人ぐらいであろう。ピロの悪行は、町民を騙して土地を取り上げ、その土地に都市開発計画として巨大ビルやカジノを建設することである。町民たちは、もちろんピロに逆らうが、追い込まれていたピロは極悪非道な行動をとっていく。世話になった先輩たちでさえも容赦しない悪行はかなり酷い。
中盤には、弟ソックァンと兄ドンファンにも視点を向けており、母を含めた家庭状況に触れている。ダメ兄貴ドンファンに対してずっと弟ソックァンは見下してみているし、母の還暦式を行う前の日には弟ソックァンに頭を下げるような兄ドンファン。ダメ兄貴ドンファンというだけの存在で終わらず、ドンファンとピロにある接点があり、その後ドンファンと母にもあることが起こるのでストーリーとしては一応必要な存在になっている。
終盤は、テスとソックァンがピロのいる店に突入しての乱闘劇。大多数のチンピラたちを相手に戦うテスとソックァン、そしてピロのいる場所にたどり着いてからのボディーガード4人との格闘が見せ場になっている。でも、終盤の格闘も序盤に比べると迫力が落ちているのはすぐにわかるはずだ。不満点としては、イ・ボムス演じるピロも激しい格闘シーンがあって欲しかった。一応は元ヤクザの肩書きなのだから、それぐらいはしてほしい。なんだか、口だけ番長にみえるピロが屁たれに見えてしょうがなかった。
率直な思いとして、いろいろなアクション映画のシーンをマネしている印象を受けてしまい、オリジナリティがないようにみえてしまった。だから、内容としては悪くはないが良くもないのである。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★