劇場公開終了間際のため三日前に急いで映画館に鑑賞しに行った作品。日本ではかなり宣伝をしていたが、韓国国内でのような大ヒットにはほど遠い興行数であった。まあ一般受けはしない作品であるのは非常にわかる気がする。
グエムル -漢江の怪物-
制作年:2006年
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、ピョン・ヒボン、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ
ジャンル:パニック、ヒューマンドラマ、アクション
鑑賞:一般上映 (日本)
ソウル市内を流れる漢江の川辺で売店を営むヒボン(ピョン・ヒボン)。長男カンドゥ(ソン・ガンホ)に店番を任せても客に愛想もなく昼寝をしたりとだらしがない。だが、カンドゥの一人娘ヒョンソへの愛情は非常に強く、まさに親バカである。そして大卒だが職のない次男ナミル(パク・ヘイル)、アーチェリーで世界大会に出場する腕前の長女ナムジュ(ペ・ドゥナ)らと共に暮らしている。漢江の周辺に多くの人々が遊びに来ているなか、橋にぶら下がる謎の怪物を人々が不思議そうにみつめるなかで、突然に陸に上がってきて人々に襲いかかる。そして逃げる途中、娘ヒョンソはその怪物にさらわれてしまう。娘ヒョンソが死んだと思いこみ、葬儀を行ない悲しんでいたカンドゥの家族たち。怪物にウイルスが存在すると情報が入り、怪物に接触があったカンドゥの家族たちは隔離されてしまった。病院で隔離されているとこに、死んだはずの娘ヒョンソから携帯電話に連絡があり助けを求めている。娘ヒョンソが生きていることを誰も信じてくれないので、カンドゥの家族たちはヒョンソを助けるために隔離されている病院から脱出してヒョンソを助けるために怪物のもとに向かう。果たして、カンドゥの家族たちはヒョンソを助けることができるのかというお話。
本作が三作目のポン・ジュノ監督。過去に『ほえる犬は噛まない (原題:フランダースの犬) 』『殺人の追憶』を監督している。出演者は、グウタラな長男カンドゥを演じるのは『殺人の追憶』『南極日誌』のソン・ガンホ、次男ナミルを演じるのは『殺人の追憶』『恋愛の目的』のパク・ヘイル、長女ナムジュを演じるのは『ほえる犬は噛まない (原題:フランダースの犬) 』『春の日のクマは好きですか?』のペ・ドゥナ、父ヒボンを演じるのは『ほえる犬は噛まない (原題:フランダースの犬) 』『殺人の追憶』のピョン・ヒボン、長男カンドゥの娘ヒョンソを演じるのは本作スクリンデビューのコ・アソン。
怪物の誕生する経緯は在韓米軍内でアメリカ人上司が韓国人部下に薬品を下水に流すことを命令して多量の薬物が下水に流されそれが漢江に流れる。その薬物によってある生物が突然変異したのが怪物なのである。見た目は魚のハゼとトカゲを合体したような感じである。怪物は人の肉を食べるが骨は食べないのが全編での行動をみてわかる。怪物が人を襲うことでパニック映画のような感じも受けるが、実際はパニックものにカンドゥらの家族愛の話でもある。
ヒョンソを救出に向かうカンドゥ、ナミル、ナムジュ、ヒボンであるが、途中ではぐれてしまいパラレルで行動する。軍や警察に指名手配されてしまうカンドゥ、ナミル、ナムジュ、ヒボン。怪物が潜む下水路に閉じ込められているヒョンソ、軍や警察に捕まりまた隔離されてしまうカンドゥ、怪獣に襲われるヒボン、頭を使い先輩からヒョンソの場所を発見しそこに向かうナミル、ナミルから情報をもらってヒョンソがいる場所に向かうナムジュ。それぞれが違う場所で行動しているが、非常にカット割がうまい作りになっているので時間軸に違和感がない。
怪物の強さよりもカンドゥの不死身さの方が驚きである。隔離されて医者に麻酔をされても一切寝ないし、脳にウイルスがあるといわれ外科手術をしてもなんともないでいられる。娘ヒョンソを救う気持ちの強さからくるのだけど、これは超人の域である。無差別に人を襲う怪物、ヒョンソを救出する家族らといったシリアスなシーンが多いが、実はあちこちにユーモアを交えているシーンを入れているのがこの監督の特長なのだ。指名手配されテレビに映ったことにカンドゥらは喜んだり、隔離されていたカンドゥが脱出したところが河岸であまりにちんけなところで、しかも河岸でバーベキューをしている奴らまでいる。
政治的な意味合いもありタイムリーな話題の在韓米軍にも皮肉って描いている。初めの在韓米軍基地内研究所でのやりとり、怪物のウイルス騒動での行動、ラスト際の米軍のコメントなのである。VFXに関してはかなりレベルが高いと思ったら、ハリウッドでお馴染みのWETAワークショップで製作していた。ここは『ロード・オブ・ザ・リング』や『キングコング』などを手がけたところだから当然これぐらいの映像はできるだろう。それにしてもおもしろいのが、アメリカに外注に出してアメリカを批判するのもユーモアなのかな。
ラストは怪物 vs カンドゥ+ナミル+ナムジュ+謎の浮浪者の構図になっている。終盤に登場する謎の浮浪者を演じるユン・ジェムンが非常に大きな存在であるのが最後にわかる。個人的には、彼をもう少しシーンを増やして欲しかった。ハッピーエンドにならない、このようなラストもポン・ジュノ監督らしいさが出ていておもしろい。出演者も監督の作品に以前出演経験がある人を揃えていることで、よりいっそうポン・ジュノ色が目立った作品である。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★