大統領の理髪師
制作年:2004年
監督:イム・チャンサン
出演:ソン・ガンホ、ムン・ソリ、リュ・スンス、イ・ジェウン
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
鑑賞:一般上映 (日本)
1960年代の韓国の大統領官邸・青瓦台がある孝子洞の町。大統領を韓国人の誰よりも身近に感じている町の人々は、国が行う政策がいつも正しいと信じており、国民が不正選挙だと批判した1960年3月15日選挙の日にも、国のために投票用紙を食べてしまったり、野山に投票箱を埋める青瓦台地域の住民たち。そして、軍事クーデターを経て、新しい政権が誕生する。そんな最中に理髪店を営むソン・ハンモ(ソン・ガンホ)とキム・ミンジャ(ムン・ソリ)の息子ナガンが生まれた。大統領官邸のお膝元の町で理髪店を営むソン・ハンモは、ある日突然に大統領の理髪師という大役を任された。大統領や幹部たちに対して誠実に務めを果たし、町でも一目置かれる存在になる。
ある日、北朝鮮武装ゲリラ侵入事件が起きて状況は一変する。北朝鮮ゲリラたちは山林でみんな下痢をしていた。この下痢の症状を「マルクス病」とされ、下痢をした国民は北朝鮮のスパイと密会したと政府は思いこんで下痢した韓国国民をスパイ容疑で次々と逮捕され、拷問にかけられる。そんなとき、ハンモの息子ナガンが下痢をして、ナガンは政府に拘束されてしまった。ナガンは、父母の元に返って来れるのかというお話。
本作品がデビュー作のイム・チャンサン監督。共演者は、『JSA』『殺人の追憶』などでヒット作に出演している実力者俳優ソン・ガンホ、『オアシス』『浮気な家族』などいつも難しい役柄を演じるムン・ソリ。他にも有名どころではテレビドラマ【冬のソナタ】で6人グループの親友たちのヨングク役のリュ・スンスなどが出演している。息子ナガン役は、赤ちゃん時、幼少時、青年時と別々のキャストを組んでいる。
時代背景が1960年~1970代の韓国、政権が荒れていた時代のためこれを表現することの難しさをユーモアを交えながら伝えている。初めは、青瓦台地域の住民たちが選挙用紙を隠ぺいする行動で笑いをとる。選挙用紙を内ポケット、裾、ハンモは口の中に詰める始末。そして町中がクーデターを起こしているときに妻ミンジャは陣痛を起こし夫ハンモはリアカーで運ぶが、理髪師の格好が医師にみえて負傷した人をリアカーにどんどん乗せられる。
ひょんなことから大統領官邸の理髪師となったハンモは、大統領には好かれていた。ハンモは、息子の成長を見守り、妻を愛し、見習いのチンギ(リュ・スンス)からも信頼されている。北朝鮮武装ゲリラ侵入事件後からは、一転してコメディ路線から人間味溢れる話しに変わっていく。息子が下痢になったことで「マルクス病」の疑いを晴らすために警察に連れてったことで息子の消息が途絶えてしまい、ハンモは落ち込んでしまい、ミンジャは寝込んでしまう。息子ナガンの生還から内容もは家族愛に変わる。
1960年代から1970年代末までの韓国情勢を映画化するのはタブーにされていたが、21世紀になった現在ではどんどん謎めいたことが明らかにされていくことはいいことでしょう。この時代は、韓国の独裁者として君臨し続けた朴正煕(パク・チョンヒ)大統領。この大統領の理髪師となった男の視点を通して描いた実録政治コメディ作品なのだ。本作品は、第17回東京国際映画祭(2004年)でコンペティション参加作品として上映され、最優秀監督賞、観客賞を受賞した。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★