ミス・ギャングスター (原題:六穴砲強盗団)
制作年:2010年
監督:カン・ヒョジン
出演:ナ・ムニ、キム・スミ、キム・ヘオク、イム・チャンジョン
ジャンル:アクション、コメディ
鑑賞:日本版DVD
最年長のジョンジャ(ナ・ムニ)、真ん中のヨンヒ(キム・スミ)、最年少シンジャ(キム・ヘオク)は、平均年齢65歳の仲良し三人組である。ジョンジャは、社会人の大きな息子がいるけど、アパートで一人暮らしをしている。ヨンヒは、離婚した娘と孫の赤ちゃんを連れて戻ってきて一緒に生活している。ジュンソクは、息子夫婦と女学生の孫と一緒に生活している。それぞれ境遇は異なっており、三人とも事情は違うが家族に恵まれず、老人が住みにくい世の中になっている。老女三人組は、それぞれパートをして働いていたけど、理由があってやめてしまう。老女三人組は、慣れた手つきでスーパーの品物を万引きして、それを路上で安値で販売してお金を貯めている。そして、八年の苦労の末に目標金額である約800万ウォンに達し、旅行代理店に向かいハワイ旅行の予約をしに行く。受付で予約を済ませ、代金は銀行振り込みのみになっているため、三人は大韓銀行の窓口で振込み手続きをしていた。そんなとき、二人組みの銀行強盗が現れて、大切な旅行代金を奪われてしまう。しかも、書類に印鑑を押してなかったことから、手続きが完了していなかったため、銀行の補償も受けられなかった。老女三人組は、銀行強盗犯の一人に手首に入れ墨があったのをみて、それを頼りに銀行強盗犯を捜しだし、犯人の一人パン・ジュンソク(イム・チャンジョン)を捕まえる。しかし、ジュンソクも仲間の犯人クッポン(イ・ヒョヌ)に騙されたことで、お金を所持していなかった。老女三人組は、大きな決断をして、ジュンソクが所持している拳銃を武器にして、ジュンソクから戦いの基礎を習い、大韓銀行から銀行強盗して自分たちのお金を取り戻そうとするお話。
監督は、『パンチレディー』のカン・ヒョジン監督。
出演は、キム・ジョンジャを演じるのは『ガールスカウト』『ハーモニー』のナ・ムニ、ソン・ヨンヒを演じるのは『止められない結婚』『腹黒い母娘』のキム・スミ、コン・シンジャを演じるのは『キル・ミー』『ガールフレンズ』のキム・ヘオク、銀行強盗パン・ジュンソクを演じるのは『スカウト』『美人占い師 (原題:清潭菩薩)』のイム・チャンジョン、キム刑事を演じるのは『美人占い師 (原題:清潭菩薩)』『パパは女の人が好き』のキム・ヒウォン、チーム長のノ刑事を演じるのは『甘いウソ』『私の愛、私のそばに』のキム・グァンギュ、ヤン女刑事を演じるのは『マジシャンズ』『残酷な出勤』のカン・ギョンホン。
平均年齢65歳の老女銀行強盗団の話しではあるが、現在の韓国社会が問題にしているところも取り上げており、社会的な視点も取り入れているようになっている。
冒頭で三人が遺灰を撒いており、最年長ジョンジャはガンが肺に転移したことを二人に語っていることから、生きる時間に限りがあることを示している。三人がハワイ旅行に行くことを目標にすることで物語の道標となっていく。老女三人組のお金の稼ぎ方は、集団万引きだから、褒められるものではない。一応は、はじめの方で真っ当な仕事をしていたが辞めているところもみせている。万引きした商品を路上で売りさばき、買い手も老人であったり浮浪者であったりと社会的弱者になっている。
銀行強盗にお金を奪われたことで、諦めがつかないこととジョンジャの死が迫っていることで、銀行強盗犯のひとりジュンソクを捕まえて、盗んだお金を持っていないことから、自分たちで銀行強盗する流れになっていく。ジュンソクは当初失敗するから否定的であったが、やり方によっては意外性もあり成功するかもと思い、ノウハウを教えていくのである。笑えるのは、一回目成功したけど、銀行になめられて、「高齢者への寄付」という封筒を渡され、中身は約八万ウォンの金額だけだったのだ。一回目に失敗をみせることで、燃えてくる三人の老女たちをみせている。
二回目の銀行強盗では、実行犯二人とお客に変装する一人に分かれて実行し、要求金額が旅行代金分という、その点は拘りがあるみたいだ。防犯カメラが直接警察に繋がっていることで、直ぐに警察が銀行を囲い込み、立てこもることになるのだ。警察も困っており、マスコミも老人が犯人であることを報道していることで、強行突破すればいくら犯罪者でも老人に対して無礼だと市民からのバッシングを恐れ、何とか説得をするのである。チーム長のノ刑事(キム・グァンギュ)が交渉役になって、女刑事ヤン(カン・ギョンホン)が中心になって動くのだ。老女三人組が、銀行からド派手に脱出し、逃走劇するところがひとつの見所かもしれない。
家族のあり方というのも、老女三人を例にしながら問題定義をしている。ジョンジャは社会人の息子がいるのに貧乏な一人暮らし、ヨンヒは出戻り娘と赤ん坊の孫がおり孫の面倒を押しつけられ、シンジャは息子夫婦と暮らすが嫁との関係があったり、何だかんだで日常生活に不満ばかりなのがみえる。老女三人の家庭環境をみせることで、変わりつつ家族の形態を表している。
全体像としては、バランスを考えて構成されている作品と感じられる。銀行強盗犯ジュンソクとキム刑事(キム・ヒウォン)が繋がっており、ジュンソクが持っていた拳銃はキム刑事のものなのだ。もうひとりの銀行強盗犯クッポンの裏切りによって、ジュンソクもキム刑事も失敗に終わっている。警察側にも悪徳刑事を設定しており、良識的なノ刑事やヤン刑事がいることで善悪をみせている。老女三人組は、銀行強盗犯を実行したことで警察から追われることになるが、元々は常習的に万引きをしていたことから連続窃盗団だ。都合悪いところはコメディ要素にして濁した形にしているが、社会的問題をみせつけた真面目な作品かもしれない。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★