バービー
制作年:2012年
監督:イ・サンウ
出演:イ・チョニ、キム・セロン、キム・アロン
ジャンル:ヒューマンドラマ
港町、事故で亡くなった母の代わりに民宿を経営し、携帯ストラップを売って生計を立てる幼いスンヨン(キム・セロン)、知的障害を持つ父マンウ(チョ・ヨンソク)、体が病弱な妹スンジャ(キム・アロン)、無茶苦茶な性格の叔父マンテク(イ・チョニ)の家族。バービー人形になりたいくらい好きな妹スンジャ、ソーセージが好きな父マンウ、小学生なのに家族の生活を支える姉スンヨン、怪しい仕事をしている叔父マンテク、彼らの日常が一転する。ある日、アメリカから父スティーブ(アール・ジャクソン)と娘バービー(キャット・テボ)が韓国にやってきた。叔父マンテクは、姪の姉スンヨンをスティーブ一家に養子縁組するため、家まで招き入れた。スンヨンは浜辺でバービーと遊び、純粋な心を持っているスンヨンのことを気に入る。叔父マンテクは、スンヨンにアメリカへ養子に行くことを話すが、父と妹と離れられないことで拒否をするが、強引に話しを進めていき、スンヨンのパスポートを作るため申請する。バービー人形が好きでアメリカに憧れる妹スンジャは、自ら養子になりたいと叔父マンテクに話すが病弱な子はダメだと断られてしまう。それでも諦めない妹スンジャは、直接スティーブやバービーに媚を売り、アメリカ行きをアピールするのである。アメリカに行けば、今より裕福な生活が送れると考えたスンヨンは、自分の代わりにスンジャを養子にしてあげてほしいと頼む。叔父マンテクとスティーブは、この商談は単なる養子縁組の話しではなく裏があり、多額のお金が動いている。果たして、誰が養子に行くことになるのか、そして何が裏に潜んでいるのかというお話。
監督は、『母は娼婦だ』のイ・サンウ監督。
出演は、叔父イ・マンテクを演じるのは『ビューティフル (原題:美しい)』『10億』のイ・チョニ、姉スンヨンを演じるのは『アジョシ』『隣人』のキム・セロン、妹スンジャを演じるのは本作スクリンデビューで共演者キム・セロンの実妹キム・アロン、父イ・マンウを演じるのは本作スクリンデビューのチョ・ヨンソク、バービーを演じるのはキャット・テボ、スティーブを演じるのはアール・ジャクソン、スンヨン先生を演じるのはチェ・ファリム、スンジャ先生を演じるのはクォン・ジニ。
母を一年前に事故で亡くし、生活が困窮している家族に、叔父マンテクは姪をアメリカのスティーブ一家に養子縁組させることを勝手に決めてしまう。スティーブは、相手の事情がどうであれ、子供を養子縁組させたいことで、実娘バービーと一緒に韓国に来る。
家族の絆というのを全体を通してみせている。大黒柱は姉スンヨンで、知的障害を持つ父マンウにある程度の介護が必要なのがみえ、いつも世話をしており、病弱な妹スンジャの看病をしたり、スンヨンが抜けてしまうとこの家族は潰れてしまうのがみえてくるのだ。そんな状態で姉スンヨンのアメリカへの養子縁組の話しが持ち上がり、アメリカに憧れを持っている妹スンジャが嫉妬しているのだ。妹スンジャの心情は、前半では姉スンヨンを妬み、後半では姉スンヨンへの愛情を子供ながらにみせている。知的障害者の父マンウも娘が養子に出されることに反対で、時間が経つに連れて危機感が迫るようにみせている。
姉スンヨンの存在が、このストーリーに大きな力を与えている。叔父マンテクの強引な養子縁組問題、現状の貧困や苦労から脱出できるチャンスと思うが知的障害者の父と病弱の妹の存在が頭をよぎっているのだ。そもそも、勝手に叔父マンテクが決めてきたことで、本人はどんな環境でも父と妹と生活したいのが一番なのがみえるのだ。アメリカに憧れる妹スンジャを養子にさせてあげようと行動したり、様々な葛藤をこんな小さな子供が抱えているのだ。
極悪非道な叔父マンテクの言葉遣いが非常に悪いのだ。言葉遣いだけでなく行動も極悪なのが、後になるに連れてみえてくるのである。兄弟なのにマンウに無理矢理書類にサインさせたり、スンヨンを商品のように扱って風呂に入って綺麗にしておくように云ったり、民宿経営にも口を出したり、スティーブとの商談をどんどん進めていくのだ。どこまで悪い奴なのかと思うが、終盤あたりに人間らしい一面をみせている。
中盤から終盤にかけて、この養子縁組の裏に隠されているのは、命の取引であるのを徐々にみせているのである。スティーブが、妻に頻繁に電話したり、もう一人の病気の娘との会話があり、彼の会話の中にヒントが隠されているのである。スティーブにとっては、姉妹どっちでもよく、目的は別のところにあったからだ。終盤に近づくに連れて、スティーブの目的に気づいた娘バービーが苦悩するのである。
養子縁組の裏に隠されている真実というのが主に描かれており、それを明記するとネタばれになってこれから観る人がつまらなくなるので伏せて書いている。真実を知っている方は、苦渋の選択をしているスティーブ、大金に目が眩み罪悪感がある叔父マンテクをみせている。どっちかが養子に出される姉スンヨンと妹スンジャの姉妹愛、新しい姉妹が出来ると期待していた娘バービーが真実を知ったときの言葉に出来ない思い。まさに子役の力があってこそ、この作品が光っているのだ。
叔父マンテクとスティーブとの間での詳細な取引シーンがなかったり、現在アメリカにいるスティーブの妻と娘の映像での様子、その後アメリカのスティーブ一家の生活などをみせないことで、常に観る側に思考させるようになっている。更に、この作品の本質を知ったときに、その問題について深く考えることになるだろう。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★