パク・チャヌク監督とパク・チャンギョン監督の『出藍の誉れ (短編)』に続くコーロンスポーツ40周年記念「Way to Nature Film Project」の第2弾として製作された本作品。
愛のジャンケン (短編)
制作年:2013年
制作国:韓国
監督:キム・ジウン
出演:ユン・ゲサン、パク・シネ、パク・スジン
ジャンル:ラブストーリー、コメディ
ウンチョル(ユン・ゲサン)は、真面目な性格であるが、状況を把握できず、マイペースな男性である。ウンチョルは、友人からの紹介を通してユジン(パク・スジン)とカフェでデートをする。ユジンがトイレに行っている間、様々な女性とデートをして、自分では気づかない失態をして、いつもふられていたことを思い出だす。ウンチョルは、ユジンにソウルにある南山公園に今から行こうと誘い出す。ユジンは、ボディコン衣装で、ハイヒールを履いていることで、断ろうとするときウンチョルが強引にユジンを連れ出す。ユジンは、ハイヒールのため歩くのが困難な状態なのに、今度は頂上から下まで数十メートルもある階段で、じゃんけんゲームをしようとウンチョルが言い出し仕方なく行う。うんざりしたユジンは、わざとじゃんけんに負けて、ウンチョルが気づかないうちに帰り、結局ウンチョルはふられてしまう。男女二人ずつで同僚たちとカラオケに行き、目当ての女性を狙っていたウンチョルは、同僚男性に先手を取られてまたも傷ついてしまう。南山公園の階段で座って傷心のウンチョルの前に、服とリボンをした迷子の子犬が現れる。子犬を抱いて道を歩いていたら、電柱に「子犬を探してます」の張り紙をみて、そこに記された電話番号に連絡をする。そして、子犬の飼い主ウニ(パク・シネ)に会ったウンチョルは、彼女が理想のタイプで、一目惚れしまった。果たして、二人の間に何が起こるのかというお話。
監督は『悪魔を見た』『人類滅亡報告書』のキム・ジウン監督
出演は、ウンチョルを演じるのは『もう少し近くに』『豊山犬』のユン・ゲサン、ウニを演じるのは『シラノ;恋愛操作団』『7番房の贈り物』のパク・シネ、ユジンを演じるのは『ペントハウス エレファント』『樹木葬』のパク・スジン、ウンチョルの父を演じるのは『グッバイ・ボーイ』『鞭』のアン・ネサン、キム女史を演じるのは『宿命』『獣の終わり』のイ・ミナ、ジョギングおばさんを演じるのは『三人の友達』のイ・ソニ。
ユジンとのデートのシーン、過去に様々な女性とデートをして失敗した回想シーンをみせることで、ウンチョルの性格が序盤で浮き出るようにみせている。真面目だけど、状況判断が乏しく、場の空気が読めないイタい人なのがみえるのだ。ウンチョルは悪気があって行っていないけど、相手の気持ちを置き去りにしていることから、そのズレをコメディ要素としてみせて笑いを誘う。
女性に対して積極的なウンチョルなのに、同僚のぶっ飛んでる女性には食いつかないところをみると、女性なら誰でもいいわけではないことをみせている。悪い奴ではなく、生真面目すぎたり、自分の世界に入り込み、相手の気持ちや相手が発するシグナルを感じとることができない人なのだろう。
ユジンとのじゃんけんゲームをする南山公園の階段の場所は、いろいろなTVドラマのロケで使われている場所なので、TVドラマファンは喜ぶかもしれない。「私の名前はキム・サムスン」のロケで階段でキスをしていた場所である。「美しき日々」「ガラスの華」でもみたことがあるので、他の作品でも使われているかもしれない。
地味にいい味を出しているのが、ウンチョルの父(アン・ネサン)である。ウンチョルの回想シーンで、幼少時に父からじゃんけんゲームの意味、哲学的考察、母との馴れ初めを知り、ウンチョルの心に深く印象を残す形をとっているのだ。
ウンチョルが迷子の子犬を拾い、飼い主ウニに出会ってからが、クライマックスになっている。ウニは、子犬を見つけてくれた御礼としてお金が入った封筒を渡そうとするが、ウンチョルは何度もよけて受け取ろうとしないのだ。その代わりにじゃんけんをして、その勝負の結果で条件を出すのである。その条件は、ウンチョルにとってあまり得になるようなものではないのであるが、実は大きな真意があるのだ。ウニと出会ったときだけ、今までのウンチョルと違うようにみえているのだ。ウニの言葉は少ないが、彼女の眼差しであったり、彼女の表情であったり、とても魅力的な女性にみせているからであろうか。
エンディングロール後に、監督がじゃんけんについて説明しており、三種類の中で何を出すかで性格や感情が読み取れるという心理学で解説している。じゃんけんは、単なるゲームではなかったことを、ウンチョルとウニのじゃんけんシーンのことを示しており、この説明で納得できるようになっている。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★