ハロー!?ゴースト (原題:ハローゴースト)
制作年:2010年
監督:キム・ヨンタク
出演:チャ・テヒョン、カン・イェウォン、イ・ムンス、コ・チャンソク
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
鑑賞:日本版DVD
生きる希望を失った天涯孤独なサンマン(チャ・テヒョン)は、安宿に入って多量の睡眠薬を飲んで自殺を試みるが失敗する。今度は川に飛び込むが、その場にいた救助隊に救われて病院に運ばれ自殺に失敗する。病院のベッドで目を覚ますと幽霊がみえるようになっていた。病室で煙草を吸うヘビースモーカー幽霊(コ・チャンソク)、診察室のロッカーの中にいる泣き女幽霊(チャン・ヨンナム)、病院のナースセンターで看護士のお尻を眺めるエロ爺幽霊(イ・ムンス)、突如現れた子供幽霊(チョン・ボグン)。サンマンは、退院したが四人の幽霊から同時に取り憑かれてしまう。サンマンは、霊媒師(イ・ハヌィ)に相談したところ、彼らの願い事を一人ずつ叶えてあげれば成仏することができることを教えてもらう。サンマンは、マンションの一室に戻ると彼らも同時に憑いてきてしまい、部屋でやりたい邦題行動することで、生活がメチャメチャになってしまう。サンマンは、四人の幽霊たちを成仏させるため奮闘する中、その過程で看護士ヨンス(カン・イェウォン)と出会い惚れてしまう。サンマンは、四人の幽霊たちに振り回されながら、好意を持っている看護士ヨンスに近づき、今まで持っていた自殺願望が消えていた。果たして、四人の幽霊たちの願いを叶えてあげることができるのか、看護士ヨンスとの恋の行方はどうなるのか、そして本当にサンマンは天涯孤独だったのかというお話。
監督は、本作デビュー作のキム・ヨンタク監督。
出演は、サンマンを演じるのは『バカ』『過速スキャンダル』のチャ・テヒョン、看護士ヨンスを演じるのは『TSUNAMI-ツナミ- (原題:海雲台)』『ハーモニー』のカン・イェウォン、エロ爺幽霊を演じるのは『グッドモーニング・プレジデント』『クイズ王』のイ・ムンス、ヘビースモーカー幽霊を演じるのは『イテウォン殺人事件』『裸足の夢』のコ・チャンソク、泣き女幽霊を演じるのは『ハーモニー』『クイズ王』のチャン・ヨンナム、子供幽霊を演じるのは『TSUNAMI-ツナミ- (原題:海雲台)』『取り戻せない』のチョン・ボグン、入院患者ヨンスの父を演じるのは『雲を抜けた月のように』『黒く濁る村 (原題:苔)』のチョン・ギュス、入院患者少年ジョンウォンを演じるのは子役のキム・ジンソン、霊媒師を演じるのは『悲しみよりもっと悲しい物語』『国家代表』のイ・ハヌィ、中古車屋社長を演じるのは『ワンス・アポン・ア・タイム』『タチマワ・リー -悪人よ 地獄行急行列車に乗れ』のアン・ギルガン。
サンマンは、心肺停止を経験した後、自分に四人の幽霊が取り憑いていることを知り、四人の幽霊を成仏させようと奮闘していく姿をコメディチックにみせて、幽霊たちとの生活によって様々な出来事が起きていく。そこに看護士ヨンスとの恋であったり、娘ヨンスと父チョン・ジュファン(チョン・ギュス)との憎みあっていた関係をみせたり、中古車屋社長の夫婦をみせることで、家族の話しを盛り込んで終盤に流れ込む展開になっている。
エロ爺幽霊の願いはカメラを取り戻すこと、ヘビースモーカー幽霊の願いは愛車を取り返してドライブすること、子供幽霊の願いはアニメ映画を見ること、泣き女幽霊の願いは好きな人たちに食事を作ってあげることである。ひとつひとつ彼らの願いを実行していくサンマンは、その都度いろいろな事件に巻き込まれたり、多くの人たちと接していき、今までの天涯孤独といった生活とかけ離れていくのだ。エロ爺幽霊の願いを叶えるときは、看護士ヨンスや中古車屋社長夫婦との出会いがあったり、ヘビースモーカー幽霊の願いを叶えるときは、無免許運転で警察のお世話になったり、子供幽霊の願いを叶えるときは、入院患者の少年ジョンウォン(キム・ジンソン)と看護士ヨンスが一緒にアニメ映画をみにきていて同じ作品を鑑賞したり、泣き女幽霊の願いを叶えるときは、一緒に食事の買い物に付き合い消えていた微かな記憶をみえながら料理を手伝ったりする。それぞれの願いを叶えるときに多くの人たちと絡んでいることで、物語に幅をみせている。登場人物が多くなっているから整理して観ることが重要になるだろう。
サンマンからすると四人の幽霊が周囲にいて会話しているようになっているが、周囲の人たちからサンマンをみると大きな声で独り言をいってみえたり、不可思議な行動をとっているようにみえるのだ。サンマンの肉体に幽霊たちが憑依する形になるので、周囲の人たちは幽霊の動きがそのままサンマンの動きにみえて、そこもコメディ要素として笑いをみせている。
看護士ヨンスの存在は、単にサンマンの色恋ネタだけではない。病院に勤務していることで、常に患者と接しており、親しい患者たちの死を近くでみている人である。死の受けとめ方がサンマンと違うところを比較させている。ヨンスの場合は肉体の死をみつめており、サンマンの場合は魂の死をみつめているところである。
終盤の展開は、人間ドラマ要素を全面に出した演出をして感動させる展開になっている。所々で伏線が貼られていることで、途中でそのことに気づいてしまうかもしれない。それもアリという形で、サンマンとヨンスとの関係とその後をみせたり、序盤でみせる絶望した表情が逆転して、幸せな笑顔をしているサンマンの姿に感情移入するだろう。作品の構成としては古い形をとっているから、ネタばらしを最後に持ってきてそのままエンディングに流れていく。ネタばらしを中盤あたりに持ってきて新たな展開を作るのも、ひとつのアイデアかもしれない。新人監督だから、冒険をせずに確実性を重視したのかもしれない。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★