コリアン・シネマ・ウィークで唯一みた作品。おすすめ度ですごく悩み暫定的に星4つにした。今でも星3つにするか迷っているぐらい。ちょうど境目なところに位置しているから。現在連続でレビューを書いているのでそれが終わってから最終的に決める予定。
今月末に開催される東京フィルメックス映画祭のチケットを昨日購入した。韓国映画では、キム・ギドク作品『ピエタ』、パク・チニ主演作品『グレープ・キャンディ』、三編のオムニバス作品『チョンジュ・プロジェクト2012』をゲットした。ホン・サンス作品『3人のアンヌ』はすでに観たので取るのをやめた。ホン・サンス作品は台詞の半分が英語だった気がした。
合唱 (原題:ドゥレソリ)
制作年:2011年
監督:チョ・ジョンレ
出演:キム・スルギ、チョ・アルム、ハム・ヒョンサン
ジャンル:ヒューマンドラマ
鑑賞:コリアン・シネマ・ウィーク2012
国立伝統芸術高等学校の三年生でパンソリ専攻のスルギ(キム・スルギ)と京畿民謡専攻のアルム(チョ・アルム)は、いつも一緒にいる親友である。大学受験の準備に忙しい高校三年の夏休み、出席日数の足りない二人は夏休み期間に特別授業を受けなければならない。政府の教育庁の要請で合唱大会に出場することになり、校長は新しく就任してきた作曲専攻のハム先生(ハム・ヒョンサン)に特別授業を任せ、特別授業を受ける生徒たちに合唱大会に参加させる。西洋音楽を学んできたハム先生は、国楽を専攻している生徒たちに合唱の練習をさせるが、音楽的な違いが生じて、物事がなかなか上手く進まない。作曲専攻のウネ(チェ・ウネ)にピアノを弾かせて、譜面を渡された生徒たちは、戸惑いながら練習をする。譜面のない国楽には、国楽を専攻する生徒たちからすると未知な体験をしており、生徒たちは苦労して練習をする。合唱大会が近づき、練習の成果を出そうと意気込んでいた生徒は、嫌な知らせを報告される。新型ウィルスのために合唱大会は中止となり、特別授業も終わりになる。ハム先生は、何とか生徒たちに歌わせたくて、あるリサイタルに出場させて欲しいと懇願して、ホールで生徒たちが合唱できることになった。しかし、学校から横やりが入って、高校三年生というのは進路の準備で忙しい時期であると校長に云われ、特別授業が終わってもハム先生が合唱の指導をしていることから停職になってしまう。生徒たちは合唱の練習を自主的に行っていることから、同好会を立ち上げてリサイタルに参加することを決める。多くの困難がある中、西洋音楽専攻の先生と国楽を専攻している生徒たちは、合唱大会に参加することをきっかけに合唱の良さを知り、その後に生徒たちが大きな業績を残したお話。
監督は、本作デビュー作のチョ・ジョンレ監督。
出演は、パンソリ専攻のスルギを演じるのは本作スクリンデビューのキム・スルギ、京畿民謡専攻のアルムを演じるのは本作スクリンデビューのチョ・アルム、ハム先生を演じるのは本作スクリンデビューのハム・ヒョンサン、ウニョンを演じるのは本作スクリンデビューのチェ・ウニョン、ハヌィを演じるのは本作スクリンデビューのイム・ハヌィ、ウネを演じるのは本作スクリンデビューのチェ・ウネ。
伝統的な国楽を教える国立伝統芸術高校の生徒たちが、合唱大会に参加するために集まり練習し、先生と生徒たちが衝突をしながら交流が深まり、同好会まで生徒たちが立ち上げ、大きな舞台にたって歌うまでを描いている。実話をベースにして、実在する同高校の合唱同好会の一期生の物語を描いたもので、本作品では同高校の二期生と三期生が演技をして描いている。
生徒にスポットを当てているのは、パンソリ名家の孫娘スルギと叔母と共に生活するアルムである。裕福な生活をしてパンソリの名家であり、自宅で祖父からパンソリの指導を受けるスルギは、家でも学校でもプレッシャーを感じながら生活を送っているのだ。両親がおらず叔母の店を手伝いながら苦しい生活するアルムは、月謝を払って京畿民謡の個人レッスンに通い、学費の面で負担を軽減したいことで国立大学への進学を志望しているが厳しい状況にいる。親友のスルギとアルムは、友人ウニョン(チェ・ウニョン)と一緒に笑っておしゃべりをしているが、お互い問題を抱えながら日々を送っているのだ。
夏休みの特別授業に参加している生徒は、内申書にプラスになるために参加する生徒、成績が悪いからそれを補うために参加する生徒、出席日数が足りないために参加する生徒、といった事情が違っており専攻している学科も違うのである。この学校は、韓国の伝統音楽を教える学校で、西洋音楽が専門で作曲専攻のハム先生が教えるという異例な組み合わせで始まるのだ。特別授業は、生徒たちが未体験の合唱であり、国楽を専攻する生徒たちと西洋音楽を専門とするハム先生とで衝突が起こるのである。先生と生徒たちは、試行錯誤をしながら、音楽性の違いをどのように埋めて、共存できるかを探っていくのである。国楽の知識がほとんどないハム先生は、何度もCDで聴いて、国楽を学んでいき生徒たちの意見を理解していこうとするのだ。そして、ハム先生が合唱大会で歌う曲を作り、それを生徒たちが歌い、練習していくのである。
大きな壁になっているのが、高校三年生というところである。学校は進路を優先するように心がけており、保護者もそれを期待しているのである。生徒たちは、合唱大会が中止になっても続けており、ハム先生が用意してくれたリサイタルに出場するために、自分たちの時間を割いて練習をしているのだ。学校側と生徒たちの間に入っているのが新任のハム先生で、生徒たちの希望を叶えようと動くと学校側から注意を受け、停職という処罰まで受けるのだ。更に進むともっと重い処罰をハム先生は受けるのだ。
生徒たちが自主的に同好会を作り、その名を「ドゥレソリ」にして、生徒たちの目標であったリサイタルは無事成功に終えるのである。更に生徒たちは、ソウル市青少年同好会コンクールに出場することになり、ハム先生が二曲を作曲してそれを練習していくのだ。その期間、生徒たちは進学のため推薦入試を受けたり、一般入試の準備をしたりと忙しい日々を過ごしているのである。そこで、スルギ、アルム、ウニョンらが様々な理由でバラバラになり、どのようにして連帯感を取り戻していくのかというドラマが含まれて盛り上げているのだ。
ソウル市青少年同好会コンクールで披露する曲は、とても魅力的なものになっている。笛とピアノのイントロが特徴的で民謡っぽい一曲目、ジャンルに関係なく現代風な二曲目。同好会は男女混合で、男子生徒は7~8人、その3倍ぐらいが女子生徒で構成されている。低音から高音まで幅広く聴こえる合唱は、耳を突き抜けて体全体に衝撃を与えていた。これはスクリーンで観ていることで、視覚と聴覚を激しく刺激したことで起こったのであろうか。素晴らしい歌声に感動を与えてくれる。
弱点としては、演技を知らない素人が演じていることで、芝居レベルがやや低く感じてしまうところである。歌うところに関しては、生徒の得意分野のため、文句のつけようのない出来になっている。国楽という韓国の伝統音楽をみせており、固有の音階とリズム、固有の弦楽器や管楽器や打楽器などを要所要所にみせていることで、この分野に無知な自分でも非常に学ぶことができた。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★