この監督の作品とは個人的に相性がいいみたいだ。
素晴らしい一日
制作年:2008年
監督:イ・ユンギ
出演:チョン・ドヨン、ハ・ジョンウ、キム・ヘオク、キム・ジュンギ
ジャンル:ヒューマンドラマ
鑑賞:日本版DVD
失業してしまった30代女性ヒス(チョン・ドヨン)は、一年前に別れた恋人ビョンウン(ハ・ジョンウ)に貸した350万ウォンを返して貰おうと朝早くに競馬場で彼を待つ。競馬場でふらついているビョンウンを見つけたヒスは、お金の返済を要求する。しかし、ビョンウンは銀行口座にもお金がなく、手持ちのお金もない。ビョンウンは借りたお金を返すため、ヒスの車に同乗し、携帯電話であちこち連絡して、知人たちの所に一緒に行く。ヒスに返済するために、ビョンウンとヒスは車で様々なところに訪れ、様々な人たちと会い、不思議な一日を過ごすお話。
監督は、『ラブトーク』『アドリブ・ナイト (原題:とても特別なお客さん)』のイ・ユンギ監督。
出演は、ヒスを演じるのは『ユア・マイ・サンシャイン (原題:君は僕の運命)』『シークレット・サンシャイン (原題:密陽)』のチョン・ドヨン、ビョンウンを演じるのは『チェイサー (原題:追撃者)』『ビースティ・ボーイズ』のハ・ジョンウ、ハン社長を演じるのは『ドレミファソラシド』『6年目も恋愛中 (原題:6年目の恋愛中)』のキム・ヘオク、従兄弟キム・ジュンギを演じるのは『アドリブ・ナイト (原題:とても特別なお客さん)』『俺たちの明日』のキム・ジュンギ、従兄弟の妻を演じるのは『大誘拐 ~クォン・スンブン女史拉致事件~』『肩ごしの恋人』のシン・ヨンジン、ビョンウンの小学生時代同級生ウンジョンを演じるのは『止められない結婚』『正しく生きよう』のチャン・ソヨン、ホステスのセミを演じるのは『私の生涯で最悪の男』のオ・ジウン、大学生時代後輩ホンジュを演じるのは『黒い家』『正しく生きよう』のチョン・ギョン、女子中学生ソヨンを演じるのは『かわいい』『ダンサーの純情』のキム・ヒジョン、ホンジュの夫テヒを演じるのは『残酷な出勤』『アドリブ・ナイト (原題:とても特別なお客さん)』のキム・ヨンミン。
原作は、平安寿子の日本短編小説「素晴らしい一日」である。原作も読んでいることで、大体の内容は掴んでおり、どのように映像化して、どのような世界観を作り出すかに注目していた。
ストーリーとしては非常に単純で、主人公ヒスが過去の恋人ビョンウンに貸したお金を返済してもらうため訪れるが、無一文のビョンウンは次々と知人のところに会いに行って、彼らから借金をしてヒスに返済するのだ。借金返済のために借金をする相変わらず軽薄なビョンウンの姿を映し出し、常に苛々しているヒスをみせている。
借金返済ツアーに付き合わされるヒスは、経営者のハン社長(キム・ヘオク)、シングルマザーで小学校時代の同級生ウンジョン(チャン・ソヨン)、ホステスをしているセミ(オ・ジウン)、大学生時代の女性後輩ホンジュ(チョン・ギョン)とその夫、従兄弟ジュンギ(キム・ジュンギ)とその妻、と出会っていく。ヒスは、貸したお金さえ返済してくれればそれでよい考えであるが、ビョンウンと一緒に行動していくことで、自分の知らなかったビョンウンの交友関係をみて、彼の見方が少し変化するのである。もう一度、交際したいという感情ではないのは云うまでもない。女性視点だと、このようなビョンウンの言葉や態度をみて、様々な意見が出そうである。
ビョンウンが、ヒスを連れて、その理由を明確に説明して知人たちからお金を借りている。ヒスにも根性や信念がないと、このような場に耐えることができないのが感じられるのだ。ヒスの感情が弱ければ、借金を借金で返済しているので折れるかもしれないからだ。ヒスが常に強面で表情を崩さずにいるところ、ヒスの言動も注目するところであろう。終盤あたりで、ヒスが一人で車を運転しているところで、表情を崩すシーンが印象的なのだ。
ビョンウンの周囲にいる人たちの構成は良く出来ている。彼と結ぶそれぞれの人物たちは、自らの意見を発していたり、表情でみせている。ハン社長、ハン社長の部下、従兄弟夫妻、ホンジュ、ホンジュの夫、ウンジョン、セミ、ソヨン、中学校の先生、競馬場に来ている人。ビョンウンと接するときに、それぞれ感情がみられるので、人間ドラマとしてみていくと楽しめるであろう。
この作品の良さは演出力と云っていいだろう。人の動きであったり、様々なアイテムの使い方、カメラワークなど。さらにイ・ユンギ監督が、過去作品で製作してきたセンスがそのまま引き継いでいる。地味な作品に映ってしまう人もいるだろうから、観る人を選ぶ作品ってことだけは言及しておく。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★