中国、フランス、韓国の合作。台詞は朝鮮語と中国語。多くのことを書きたいがネタばれになりすぎるので途中で止めた。
豆満江制作年:2010年
監督:チャン・リュル
出演:ツイ・ジェン、イン・ラン、リー・ジンリン
ジャンル:ヒューマンドラマ
中国と北朝鮮の国境近くにある豆満江沿いの村。朝鮮族の少年チャンホ(ツイ・ジェン)は、失語症の姉スニ(イン・ラン)と祖父の三人で暮らしている。父は洪水によって亡くなっており、そのときにスニが障害を持ってしまう。母は韓国へ出稼ぎに行っており、なかなか一緒に暮らすことができないでいる。雪が降る真冬に豆満江が凍ることで、徒歩で北朝鮮から中国に密入国する人たちがいる。北朝鮮に住んでいる少年ジョンジン(リー・ジンリン)は、中国に密入国して食料を得るためにやってくる。たまたまチャンホとジョンジンが知り合うようになり、チャンホがジョンジンを家に招待して食事を共にする。サッカーの上手なジョンジンは、チャンホのチームに入って試合に出る約束をして、北朝鮮に戻っていく。そんなある日、北朝鮮から中国に密入国する人たちが増えて、村で事件が増えてきたことで、中国政府は密入国者の取り締まりを強化するようになる。それによって、大人だけでなく少年チャンホにも大きな影響を与えたお話。
監督は、『キムチを売る女 (原題:芒種)』『イリ』のチャン・リュル監督。
出演は、中国に住む朝鮮族の少年チャンホを演じるのはツイ・ジェン、北朝鮮からやってきた朝鮮人の少年ジョンジンを演じるのはリー・ジンリン、少年チャンホの姉スニを演じるのはイン・ラン。
雪が降り水面が凍りつく豆満江を境にして、北朝鮮から中国に密入国する朝鮮人たちをみせ、寒さによって息絶えた密入国者の死体を物のようにみせたり、自分の生命を賭けて密入国をする朝鮮人をみせ、冒頭から衝撃を与えるのだ。中国吉林省の延辺の村が舞台になっており、そこで生活する朝鮮系中国人となる朝鮮民族の日常をみせながら、北朝鮮から亡命する朝鮮人たちの動向をみせ、多くの出来事が発生していくのである。
豆満江を境にして国が分岐しており、同じ朝鮮民族でありながら国籍が違い、社会や政治体制も違うのである。多くの民族が存在する中国では、吉林省延辺に住む朝鮮人を朝鮮族という表現をしている。北朝鮮から中国に亡命という形で密入国する朝鮮人たちと延辺の村に住んでいる朝鮮族が、生活の中でどのように絡んでいるのかをみせている。
子供と大人の世界の違いを大きくみせている。子供の世界では、国という領域を考えず純粋に人との繋がりというものをみせて、チャンホとジョンジンが友人になって遊んだり、ジョンジンがチャンホの属する弱いサッカーチームに助っ人として入る約束をしたり、チャンホの家族事情もジョンジンに打ち明け親密になっている。村で唯一の店屋で、その店主の息子チョルブや従妹とチャンホは友人でおり、ジョンジンを紹介したり、子供の世界において平穏な形をみせている。大人の世界では、北朝鮮からの密入国者を手助けする人たちがいたり、二人の男が村に仕事がないことで店屋の外で立ち飲みしたり、チャンホの母のように出稼ぎに行っているのだ。生活と社会が密接になっており、複雑な気持ちがありながら人間関係や厳しい現実をみせている。
平穏に暮らしていたチャンホ家族に大きな出来事が起こり、それによって大人の世界が子供の世界を襲うのである。北朝鮮から密入国して亡命してきた空腹の兵士が、チャンホの家に訪れ、祖父が食料を与えて、一晩寝床を貸してあげるのである。チャンホの家では、北朝鮮のテレビ番組が映り、金正日将軍を賞賛するような内容が放送され、それをみた兵士が狂ったようになる。北朝鮮の見せ方として、表の顔はテレビ放送される金正日や裕福な人たち、裏の顔は空腹の兵士という現実をみせている。チャンホ家族が、兵士に優しく接していたのに、その恩を仇で返すようなことを兵士が行い、姉スニに悲劇が起こるのだ。
全体的に台詞の量は少ないが、描かれているものは深くて、映像に力強さを感じる。北朝鮮からの密入国者の犯罪、中国という国家体制で治安維持のために密入国者を取り締まる警察、北朝鮮からの密入国者が親族だから匿っていたことで逮捕されてしまう人。子供の世界にも影響を及ぼし、約束を守るために再度密入国したジョンジンの運命であったり、チャンホが親友ジョンジンを助ける手段で選らんだ行動、その出来事と同じ瞬間に姉スニに起こったこと、わりかし裕福だった店屋の息子チョルブや従妹の運命、といった複数の出来事が起こり、それぞれに意味を成しているのだ。
目立つシーンとしては、歌を歌うところを随所に入れている。歌う行為が相手に対して感謝の気持ちを表現していたり、追悼の意であったりする。また、密入国者が歌う歌は、主に総書記を称えたような歌詞になっており、歌い手がどっちの国籍なのか判断できるものにもなっている。
老婆がつぶやく言葉が印象的で、胸に突き刺さるような感情になる。周囲の人たちは老婆を呆けていると決めつけているが、実際はそう思えないのだ。北朝鮮の土地を故郷と想っており、老婆の言葉が魂の叫びのようにも捉えることができる。チャンホの祖父が、もし自分が死んだとき、豆満江の近くで川の方向に向けて埋めて欲しいと云っているシーンとリンクしているように感じ取れる。ラストに出てくる老婆の姿も胸を熱くするところだ。中盤に伏線を貼って、それを終盤の出来事と繋がっているシーンが幾つかみえたので、それをどのように鑑賞者側が独自に感じとるかである。終盤の見せ方が、非常に考えさせるようなつくりになっており、鑑賞者に余韻を残すような形で豆満江をみせて、無音のままエンディングロールが流れていくのである。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★