私たちの隣人の犯罪
制作年:2010年
監督:ミン・ビョンジン
出演:シン・ヒョンジュン、イ・ギウ、ワン・ヒジ、チョン・ノミン
ジャンル:サスペンス、ヒューマンドラマ
鑑賞:動画
チョ刑事(シン・ヒョンジュン)は、いつも小さな事件を取り扱っており、大好きな酒を呑み、毎回昇進試験に落ちている。チョ刑事の妻は家を出ていってしまい、悪さばかりする学生の息子ギョンス(ノ・ヨンハク)と一緒に暮らしている。ある日、村の裏山で子供の遺体が発見され、ソ班長(チョン・ウォンジュン)を中心にして、チョ刑事と相棒のイ刑事(イ・ギウ)が死体の身元確認を調べ、キム刑事(キム・ヨンウ)とムン刑事(イ・ジェウク)も別行動で身元確認を調べる。遺体の歯型のレントゲン写真から、亡くなった少年の情報と一致する患者を治療した歯科院がわかり、チョ刑事とイ刑事が確認するために歯科医に訊くと名前と住所を教えてくれて、その場所に行くとその少年は生きており元気に遊んでいた。被害者の身元確認に難航する刑事たちであったが、五人の刑事たち(ソ班長、チョ刑事、イ刑事、キム刑事、ムン刑事)が一緒に飯を食べに行った店のテレビで、行方不明者の番組が偶然やっており、そこで行方不明の少年の顔写真が身元不明の死体と同じ顔をしているのに気づく。五人の刑事たちは、行方不明者捜索願のデータベースから、少年チョン・ミョンファン(チョ・サンヨン)が登録されているのがわかり、記載されている住所の場所にチョ刑事とイ刑事が向かった。だが、少年ミョンファンの家族はすでに引越しており、家主であったゲイの主人に彼らの情報を得る。刑事たちが被害者の家族を追うことで、事件の真相を究明していくお話。
監督は、『土曜日午後2時』『これが法だ』のミン・ビョンジン監督。
出演は、チョ刑事を演じるのは『最後の贈り物...帰休』『キル・ミー』のシン・ヒョンジュン、イ刑事を演じるのは『ストーリー・オブ・ワイン』『ウェディングドレス』のイ・ギウ、母コ・ヨンスクを演じるのは『家族写真』のワン・ヒジ、父チョン・インスを演じるのは『インフルエンス』のチョン・ノミン、父インスと母ヨンスクの次男ミョンファンを演じるのは子役チョ・サンヨン、父インスと母ヨンスクの長女ミョンヒを演じるのは子役キム・ソヒョン、父インスと母ヨンスクの長男ミョンチョルを演じるのは子役パク・チャンイク、ソ班長を演じるのは『カン・チョルジュン 公共の敵1-1』『過速スキャンダル』のチョン・ウォンジュン、チョ刑事の息子キョンスを演じるのは本作スクリンデビューのノ・ヨンハク。
チョ刑事とイ刑事は、身元不明の被害者が自閉症を患う少年ミョンファンとわかり、その家族である母コ・ヨンスク(ワン・ヒジ)、父チョン・インス(チョン・ノミン)、長男ミョンチョル(パク・チャンイク)、長女ミョンヒ(キム・ソヒョン)の行方を追っていく。母ヨンスクが福祉施設に提出していたノートがあり、職員からそのノートをチョ刑事とイ刑事が受け取ることで、被害者家族の悲劇を知ることになる。現在軸ではチョ刑事とイ刑事が被害者家族を捜すところをみせ、過去軸ではノートに記された被害者家族の貧しくて困窮している生活や自閉症少年ミョンファンの症状をみせている。
家族が主になって進行しており、事件を捜査している刑事にもスポットを当てている。チョ刑事は、妻が出て行ってしまい、学校で喧嘩ばかりしているギョンスの行動によって学校に呼ばれて、いつも謝っているのだ。たまたま捜査で遠方に移動することで、ギョンスも覆面パトカーに乗せてチョ刑事とイ刑事が捜査を続け、ギョンスは父の働く姿をみたり、この事件の出来事を知っていくのである。父と息子という関係を描きながら、お互いが知らなかった一面を理解し、知らないところで支えあっているのである。同様にイ刑事にも痴呆症の父がおり、徐々であるが自分の息子が判別できないまで悪化していくのである。いつもとんでもない行動をする父に振り回されているイ刑事を仲間の刑事たちは知っており、母を早くに亡くして父が唯一の肉親であるから問題があって捜査を途中で抜けても大目にみているのだ。終盤にイ刑事と父との間に深い愛情をみせているところがある。
少年ミョンファンが死体としてみつかり、チョ刑事とイ刑事は被害者の母ヨンスクを見つけ出し、夫や子供たちと別々に暮らしているのがわかり、夫や子供たちを追う展開になっていくのだ。また、死体発見場所付近の監視カメラから、ヨンスクの妹コ・グムスク(オ・イネ)の車が映っていたことで、被害者と何か関係があるのかと刑事たちは疑いだすのだ。刑事たちは、状況証拠から家族の誰かが犯人だと判断しており、あまりにも悲しい事件なだけに口数も減り、事件の真相を探っていくのである。
もうひとつは、貧困を取り上げており、そこから起こる悲劇であったり、格差社会といったものを描いている。貧困から抜け出せる唯一の方法を実行しようと試みるが、どうしても決断できない苦しみをみせている。その方法は、あまりに外道であり、倫理を逸脱している。
終盤に大きな動きがあるので、隠されていた真実がみえてくる展開になっている。そして、被害者家族、チョ刑事の親子、イ刑事の親子といった形は違うがそれぞれの家族の姿をみせている。社会的な見せ方もありながら、ヒューマン的なところをついてくるサスペンスである。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★