以前シネマコリアで上映したけど、この作品の上映日は都合が悪くて行けなかった記憶がある。チャン・ジン監督がプロデュースした作品で脚本にも参加している。
聞くなファミリー
制作年:2002年
監督:パク・サンウォン、パク・クァンヒョン、イ・ヒョンジョン
出演:チョン・ジェヨン、チャン・シニョン、リュ・ドックァン、キム・イルン、パク・ソニョン
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ、ラブストーリー
鑑賞:韓国版VCD
■第一話 『四方に敵』
810号室では、男性客(チョン・ジェヨン)が恋人の女性客(チャン・シニョン)を燃やそうとしており、恋人にガソリンをかけて、ベッドの周囲にもガソリンを撒く。肝心の火をつける発火物がないため、フロントに電話をして、マッチを持ってくるように要求する。813号室では、人妻(パン・ウンジン)と愛人(シン・ハギュン)がキスに狂っている。813号室のドア前では、妻の後をつけていた夫(イム・ウォニ)と警察官(イ・チョルミン)が、部屋に飛び込む瞬間を待っている。801号室では、ヤクザの親分(ユン・ジュサン)が背中に致命的な傷をつけられ、子分たちと一緒に再び殺し屋が現れるのを待ち構えている。802号室では、殺し屋(パク・サンウク)が潜んでおり、ヤクザの親分の背中を狙っている。各部屋から注文されるフロント係りのホテル従業員(リュ・スンボム)が、忙しくしている。これらの状況において、全ての部屋がいっせいに動き出し、とんでもない事態になるお話。
監督は、本作デビュー作のパク・サンウォンン監督。
出演は、810号室の男性客を演じるのは『ガン&トークス (原題:キラーたちのおしゃべり)』『血も涙もなく』のチョン・ジェヨン、810号室の女性客を演じるのは本作スクリンデビューのチャン・シニョン、813号室の女性客を演じるのは『受取人不明』『24』のパン・ウンジン、813号室の男性客を演じるのは『復讐者に憐れみを』『サプライズ』のシン・ハギュン、813号室の女性客の夫を演じるのは『これが法だ』『おもしろい映画』のイム・ウォニ、警察官を演じるのは『SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男』『ユリョン (原題:幽霊)』のイ・チョルミン、801号室のヤクザの親分を演じるのは『HEAVEN ヘブン (原題:天士夢)』『ガン&トークス (原題:キラーたちのおしゃべり)』のユン・ジュサン、ホテル従業員を演じるのは『ワイキキ・ブラザーズ』『血も涙もなく』のリュ・スンボム。
ひとつのホテルで同じ時間帯に行われている出来事をパラレルに動かしながら、それが一瞬の行動によって重なり合っていくのである。
810号室では男性客が女性客を燃やそうとしていたり、813号室では人妻と愛人の情事、813号室のドア前ではその夫と警官が現行で取り押さえようとしたり、801号室ではヤクザの親分と子分たち、802号室ではヤクザの親分を狙う殺し屋、といった各々の出来事を飛び飛びでみせていくのである。
810号室の男性客と801号室のヤクザたちが、フロントに電話をしてホテル従業員に物事を頼むことで、物事が動き出して、人物の入れ替わりをみせながら、各部屋で死闘が生まれるのである。
ひとつのホテルという空間で、各部屋で起こっているところを上手にカット割りしており、非常にテンポがよく作られている。四つの部屋、部屋前通路、フロントを舞台に、全ての登場人物を巧みに操っているのだ。
チャン・ジンが脚本に参加していることもあり、彼の特徴が良く出ている作品になっており、特にコメディ部分は必見である。とぼけたやり取りがあったり、ストップモーション映像であったり、部屋番号の設定だったりと細かいところに目を向けると余計にみえてくるだろう。三編の中で、この作品はコメディを中心にしたものだろう。
■第二話 『僕のナイキ』
1980年代、末っ子の中学生ミョンジン(リュ・ドックァン)は、雇われタクシードライバーの父(イム・ハリョン)、父の夢を支える母(イ・ヨンイ)、呆けぎみの祖母(キム・ジング)、いつも机に向かって勉強している長男(イム・ウォニ)、喧嘩ばかりする不良高校生の次男(リュ・スンボム)、容姿ばかり気にしている長女(キム・ジナ)と暮らしている。同級生がナイキのシューズを履いており、ミョンジンは憧れており、自分もナイキのシューズを買おうとコツコツとお金を貯めている。家族は各々で夢を持っており、それを叶えることができるのかというお話。
監督は、本作デビュー作のパク・クァンヒョン監督。
出演は、末っ子の中学生ミョンジンを演じるのは『山銭水銭』『学校の伝説』のリュ・ドックァン、父を演じるのは『顔』のイム・ハリョン、母を演じるのは『バリケード』『産婦人科』のイ・ヨンイ、祖母を演じるのは『ほえる犬は噛まない (原題:フランダースの犬)』『ライバン』のキム・ジング、長男を演じるのは『これが法だ』『おもしろい映画』のイム・ウォニ、次男を演じるのは『ワイキキ・ブラザーズ』『血も涙もなく』のリュ・スンボム、長女を演じるのは『リアル・フィクション (原題:実際状況)』『ポンジャ』のキム・ジナ。
七人家族で末っ子ミョンジンの視点を中心にした展開になっている。中学に通うミョンジンが、同級生でナイキのシューズを履いている少年を羨ましく思い、自分も欲しいということから家のお手伝いでお駄賃を貰ったり、長女の貯金箱から小銭をくすねようとしたり、自動販売機の下をあさったり、いろいろなことをしてお金を貯めていくのである。
一方で、二人の不良高校生(チョン・ジェヨン、シン・ハギュン)が中学生を恐喝してお金をむしりとる行為を頻繁にみせている。ミョンジンは、お金のないときにその二人に遭遇した経験があったり、中学生が二人に恐喝されているのをよくみかけているのである。実は、次男と二人の不良高校生との絡みもあり、理由も弟の復讐でなく、自分の夢のためである。
ミョンジンが「ナイキ」への想いが予想外の方向にみせているので笑ってしまう。「ナイキ」というブランドを如何にもこの時代の韓国らしい方法で消化しているからだ。意図して自虐的に表現しているのであれば、かなりセンスがいい。
七人家族には、それぞれ果たしたい夢を持っており、それを小さなドラマとして描いている。夢に向かって行動する七人の運命をラストにみせているのだ。第一話で登場していた俳優たちが脇役で出演しているので、その点でも楽しめるであろう。三編の中で、この作品はヒューマンドラマとコメディを中心にしたものだろう。
■第三話 『教会の姉』
兵役中の青年ヨンイル(キム・イルン)は、休暇をもらい、久々に姉のように慕っているチュヒ(パク・ソニョン)のところへ会いに行った。チュヒは、ヨンイルが軍隊に入隊した後に結婚して、今では人妻になってしまった。ヨンイルは、チュヒのことを密かに愛しており、それを隠しながら親しく接してきた。久しぶりに会う二人は、近況報告をしながらデートをして、映画館で同性愛の作品をみる。時間が直ぐに経ってしまい、ヨンイルはチュヒが帰宅するバスを見送る。しかし、チュヒは何故かバスから降りてきた。果たして、二人の想いはどのような方向にいくのかというお話。
監督は、本作デビュー作のイ・ヒョンジョン監督。
出演は、兵役中の青年ヨンイルを演じるのは『ガン&トークス (原題:キラーたちのおしゃべり)』『血も涙もなく』のキム・イルン、チュヒを演じるのは本作スクリンデビュー作のパク・ソニョン、海兵隊を演じるのは『極端な一日 (短編)』のキム・デリョン、映画の中の俳優を演じるのは『ワイキキ・ブラザーズ』『血も涙もなく』のリュ・スンボム、映画の中のホモを演じるのは『ガン&トークス (原題:キラーたちのおしゃべり)』『公共の敵』のイム・スンデ。
学生時代からの知り合いで軍隊にいったことで、久しぶりに会う年下ヨンイルと年上チュヒの淡い愛の物語である。学生時代から二人は密かに想いをよせていたが、その想いを相手に伝えることができず、タイミングを逃してきたのである。チュヒは、すでに結婚しており、夫と安定した生活を手に入れたが、内心はどうなのかわからないのである。
軍隊で休暇をもらったヨンイルは、久々にチュヒと会い、お互いが自分の感情を抑えているのが表情からわかるのである。見送りのシーンとして、二つが設定されており、ひとつはチュヒがバスに乗ってヨンイルがみているところ、もうひとつはヨンイルが電車に乗ってチュヒがみているところである。この二つの出来事によって、二人が溜め込んでいた感情が爆発するようになっている。
電車を待つ駅でのシーンでは、第一話と第二話で出演していた中心人物たちも登場してくるので楽しめるであろう。そのシーン以外にも、所々で第一話と第二話で出演していた人たちが違う配役で紛れこんでいるので、みつけると笑ってしまうかもしれない。三編の中で、この作品はラブストーリーを中心にしたものだろう。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★★