逮捕王
制作年:2011年
監督:イム・チャニク
出演:パク・チュンフン、イ・ソンギュン、イ・ソンミン
ジャンル:コメディ、アクション
鑑賞:動画
区域が隣の麻浦(マポ)署と西大門(ソデムン)署は、逮捕実績を比較されるので争いが絶えない。麻浦署には、逮捕実績ナンバー1で姑息な手段を使うチーム長のファン・ジェソン刑事(パク・チュンフン)がいる。西大門署には、新任でチーム長として配属された警察隊出身エリートのチョン・ウィチャン刑事(イ・ソンギュン)がいる。西大門署の刑事たちは、半年かけて合成麻薬密売組織の捜査をしており、一斉検挙をしようとしたとき、麻浦署が横取りしようと計画をして、自分たちの区域に犯人たちを誘き寄せてファン刑事が主犯を逮捕する。別の日、チョン刑事の乗った駐車していた覆面パトカーにオートバイが追突し、オートバイの運転手と同乗者は、窃盗犯で被害者が走ってきたのでチョン刑事が二人の窃盗犯を逮捕し、怪我をしているので病院に運ぶ。チョン刑事が目をそらしたとき、二人の窃盗犯が病院から抜け出したが、ちょうど出口付近に麻浦署のファン刑事とソン刑事(キム・ジョンテ)がおり、今度も犯人を横取りされてしまう。チョン刑事は、株が暴落したことで借金を作ってしまい、恋人ヒョンスク(ハン・スヨン)と結婚を考えている時期である。そんなとき、署のポスターをみて、一年間で犯人逮捕の実績を累計しトップになると逮捕王として多額の報奨金が出ることを知る。チョン刑事は、前年に逮捕王を獲得したファン刑事を食事に誘い、いろいろ話しを聞こうとするが不発に終わってしまう。そんなとき、ファン刑事率いる麻浦署の刑事たちが山で首吊り自殺をした若い女性の遺体を発見した。その女性は、強姦されて一部始終を録画されインターネット上に動画でアップされ、そのことが原因で自殺した遺書が残されていた。連続強姦事件を何とかしたい警察庁長官(クォン・ビョンギル)は、麻浦署と西大門署による合同捜査本部をつくる。同じ捜査本部に、ガラス窓で仕切られ、情報を共有しない麻浦署の刑事たちと西大門署の刑事たちは、合同捜査なのに別々に捜査を進行する。果たして、区域の違う刑事たちがいがみあっている中で、連続強姦事件の犯人を逮捕することができるのかというお話。
監督は、本作デビュー作のイム・チャニク監督。
出演は、麻浦署のファン・ジェソン刑事を演じるのは『TSUNAMI-ツナミ- (原題:海雲台)』『私のヤクザのような恋人』のパク・チュンフン、西大門署のチョン・ウィチャン刑事を演じるのは『坡州』『オキの映画』のイ・ソンギュン、西大門署のチョ刑事を演じるのは『ベストセラー』『解決士』のイ・ソンミン、麻浦署のソン刑事を演じるのは『ボクとマウミの物語 (原題:マウミ2)』『パンガ? パンガ!』のキム・ジョンテ、パルバリを演じるのは『悪いやつほどよく眠る』『超能力者』のチェ・ドンムン、スヨンを演じるのは『九尾狐家族』『奇談』のコ・ジュヨン、ウィチャンの恋人ヒョンスクを演じるのは『モダンボーイ』『耐えられない』のハン・スヨン、被害者ヘジンを演じるのは『道』『無道里』のカン・ギファ、警察庁長官を演じるのは『母なる証明 (原題:マザー)』『家を出た男たち』のクォン・ビョンギル、麻浦署長のチョ・ジュングを演じるのは『天国への郵便配達人』『解決士』のチュ・ジンモ、西大門署長のイ・ヨンガプを演じるのは『国家代表』『チョン・スンピル失踪事件』のイ・ハヌィ、西大門署のあだ名でコ博士を演じるのは『タチマワ・リー -悪人よ 地獄行急行列車に乗れ』『大韓民国1%』のイム・ウォニ。
お互いをライバル視している麻浦署のファン刑事と西大門署のチョン刑事が、逮捕実績ナンバー1の「逮捕王」になるため、激しい争いをするアクションコメディである。警察内部での争いを主にしながら事件と絡ませて進行して、自分たちの区域で起こった事件が担当するといった縄張り争いがあったり、犯罪の種別によってポイント数が決められており、犯人逮捕を数字でみていたりと序盤あたりはコメディ路線になっている。
麻浦署は、チョ・ジュング署長(チュ・ジンモ)、捜査の指揮をとるチーム長のファン刑事、ソン刑事(キム・ジョンテ)、シン刑事(チョン・ドウォン)らがいる。麻浦署の捜査をみると「おいしい」ところだけ他の署から掻っ攫うだけではなく、人員をかけて捜査をしてひとつひとつ怪しいところを潰していく地道な方法をとっている。麻浦署内の刑事間は、上下関係がしっかりしていることで、堅苦しいところもある。
西大門署は、イ・ヨンガプ署長(イ・ハヌィ)、捜査の指揮をとるチーム長のチョン刑事、ベテランのチョ刑事(イ・ソンミン)、キム刑事(アン・ヨンジュン)らがいる。西大門署の捜査をみると突進型なタイプの刑事が多く、そこに新任チーム長のチョン刑事も彼らの空気にのまれている。西大門署内の刑事間は、かなりフランクでお互い接しており、笑いのたえない面白い関係になっている。ベテランのチョ刑事の行動も笑えるし、何よりも西大門署内にいるコ博士(イム・ウォニ)という人がかなり笑える。
麻浦署のファン刑事と西大門署のチョン刑事の二人にスポットを当てており、仕事とプライベートの両方をみせて、正反対になっているのだ。ファン刑事は、巡査からコツコツと昇進してきた刑事で、何よりも実績を重視しているのだ。警察隊出身のエリートでないことで、劣等感を持っており、それを隠すためにいつもスーツでネクタイをしているのかと推測してしまう。仕事を第一優先にしてきたことで妻と離婚しており、二人の娘は妻と生活し、寂しい一人暮らしをしているのだ。一方でチョン刑事は、エリートコースから出発しているがこれといって華やかな実績もなく、警察隊出身というのがプレッシャーにもなっているのだ。ニット帽に青のジャンバーといったラフな姿でいるところをみると、エリート出身とみられたくない思いがあるのだろう。恋人ヒョンスクとは結婚間近、ヒョンスクの妊娠で生命の重さを背負い、家庭に関してはスタート地点にいるのだ。公私によって逆の設定をしており、お互いマイナスな感情を持っているので、人情的な物語に中盤以降なっている。
この作品の主は、連続強姦事件が発生して、犯人を追跡していくところをアクションを交えてみせている。合同捜査で犯人がネットカフェで「ナポレオン」というIDで登録しているのを掴んでおり、「ナポレオン」がログインしたことで、ネットカフェにファン刑事とチョン刑事が乗り込み、犯人が逃亡したことで、麻浦署と西大門署の刑事たちも追うが、犯人が壁をよじ登って移動するので逃してしまうのだ。合同捜査本部の解体、ファン刑事の異動、チョン刑事の異動、ファン刑事が心配していた15歳の被害者スヨン(コ・ジュヨン)、チョン刑事が何度も説得していた被害者ヘジン(カン・ギファ)、他の被害者たち、といった幾つかの物語をみせることで感動をみせている。
ラストは、時間軸が少し過ぎた状態になって、ファン刑事とチョン刑事の姿をみると笑ってしまうであろう。コメディ要素を随所にみせながら、刑事ものアクションになっているので一般受けする作品になっている。脇役俳優も、よくみかける俳優たちが演じているので安定感があり、特別出演扱いでも結構出番がありインパクトがあって記憶に残るだろう。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★