無分別な妻、波瀾万丈な夫、それから太拳少女
制作年:2002年
監督:イ・ムヨン
出演:チョ・ウンジ、チェ・グァンイル、コン・ヒョジン
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、SF
鑑賞:韓国版DVD
グムスク(コン・ヒョジン)は、通っている高校に転校してきたウニ(チョ・ウンジ)が、男子高生らに絡まれているのをみて助けた。同じクラスで隣の席同士である二人は、すぐに親友になる。二人はいつまでも一緒にいられると思っていたが、ウニとグムスクがダンスクラブで酒癖の悪い男に絡まれたことでグムスクが男をビール瓶で殴ってしまい暴行事件になってしまう。しかも、警察官にこの事件を穏便に済ましてもらおうと頼んでいたウニだが、グムスクの目には警察官がウニにセクハラをしているようみえたので警察官まで殴ってしまい、グムスクは懲役一年九ヶ月の実刑を受ける。服役後、グムスクは、盲目マッサージ師(ユ・ヘリ)の助けを受けていた。一方、小さな赤ちゃんを産んで母になっていたウニは困っていた。ウニの赤ちゃんは、骨髄移植をしなければ助からない病気になっており、骨髄移植をするために多額の費用が必要で払えないでいる。何とか助けたいと思ったグムスクは、盲目マッサージ師の家に空き巣に入ったが失敗して、強盗未遂罪と公務執行妨害罪で懲役二年の実刑を受ける。刑務所から服役したグムスクは、ウニが人気コメディアンのドゥチャン(チェ・グァンイル)と結婚していたことにショックを受けていた。ウニがドゥチャンと結婚したのは愛しているからでなく、ドゥチャンの稼ぎが良いことで贅沢な暮らしを望んだからである。グムスクは、テコンドーの道場を開いて、幼い子供たちに指導して、新しい人生を始める。ウニがグムスクの道場に通い出し、二人が友情を超えて愛情になっており、二人が浮気している姿を覗き見していたドゥチャンに発見されたことで事態は大きく動いていくお話。
監督は、『ヒューマニスト』のイ・ムヨン監督。
出演は、無分別な妻ウニを演じるのは『アフリカ』『フー・アー・ユー?』のチョ・ウンジ、波瀾万丈な夫ドゥチャンを演じるのは『ワニ&ジュナ』のチェ・グァンイル、太拳少女グムスクを演じるのは『サプライズ』『品行ゼロ』のコン・ヒョジン、老いた未来人を演じるのは『ゴーストタクシー』『THE KISEI 寄生 (原題:白い部屋)』のキム・ギヒョン、若い未来人を演じるのは『チャン』『疾走』のキム・スンヒョン、ドゥチャンのマネージャーを演じるのは『おもしろい映画』『海賊、ディスコ王になる』のキム・インムン、盲目マッサージ師を演じるのは『尻尾を振る男』のユ・ヘリ、ノ局長を演じるのは『ジャングル・ジュース』『ワイキキ・ブラザーズ』のイ・ボンギュ。
まさに題名のように、無分別な妻はウニ、波瀾万丈な夫はドゥチャン、太拳少女はグムスクを示しており、奇妙な三角関係を描いたものになっている。
時間軸が、ウニとグムスクの高校時代、2002年のソウル、2030年の月、といった三つに分かれており、不規則に時間軸が飛ぶことで観づらくなっているのが欠点である。冒頭から、2030年の月が舞台になって老いた未来人(キム・ギヒョン)と若い未来人(キム・スンヒョン)が回想のように話していることで始まり、2002年のソウルに舞台が移り、そこでウニとグムスクが再会したところで、今度は二人の高校時代に飛んでいき、後は不規則に時間が飛んでいく。
ウニの人生は、2002年のソウルから映しており、仕事に忙しいコメディアンの夫ドゥチャンと結婚したことでお金持ちになり、このサクセスストーリーをみせるのかと感じさせる。だが、そこまで辿りつくまでに多くの悲惨な人生を送っているのである。ウニは、自分のせいでグムスクが刑務所に入ったことを気にしており、自分の赤ちゃんに疾患があったり、テレビ局がドキュメンタリー番組として放送する中で赤ちゃんが亡くなるのである。
グムスクは、レズビアンであり、本気でウニを愛しているのである。困っているウニをほっとけないことで前科二犯になってしまう。グムスクは、テコンドーの選手だった高校時代から体のケアをしてくれていた盲目マッサージ師が常に味方でいてくれたが、ウニのために盲目マッサージ師を裏切る行為をしてしまい後悔をするのである。グムスクにとって盲目マッサージ師は母みたいな存在であり、裏切られても二人の関係は深く、グムスクが刑務所を出所するときには必ずお迎えにくるのである。人生の再生としてテコンドーの道場を開いて、師範として教えて、その道場にウニが入ることで物事が大きく変化していくのである。
ドゥチャンは、ウニの赤ちゃんが亡くなるとき、ドキュメンタリー番組で知り合い、その流れで結婚した経緯がある。ドゥチャンは、女性としてウニを愛しているが、ウニの気持ちにはグムスクがいるのである。ウニとグムスクがデキていることを知り、ドゥチャンはグムスクに対して逆襲し、更に複雑化していくのである。
短い間隔で挿入してくる老いた未来人と若い未来人の会話によって、ウニ、グムスク、ドゥチャンの行動や心理を解説していくのである。月という設定で、天から高みの見物をしているようにみせているが、終盤に複雑な三角関係の結末がみえる仕組みになり、なぜ月で2030年なのかが分かるのだ。現在の倫理や道徳を超えたものを未来で実現できることを示しているのがみえるのだ。描き方に無理があるので、ちょっと説得力に欠けるけれど。時間軸を複数用いており、編集によって重複するようなシーンがあるので多少不満に感じてしまう。アイテムは揃っているのに、活かしきれていない作品にみえる。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★