原題読みの「テンジャン」にするか、日本語訳の「味噌」にするか迷った。とりあえず、「味噌」という形で表記する。
テンジャン (原題:味噌)
制作年:2010年
監督:イ・ソグン
出演:リュ・スンニョン、イ・ヨウォン、イ・ドンウク
ジャンル:サスペンス、ラブストーリー
鑑賞:韓国版DVD、コリアン・シネマ・ウィーク2011
脱獄した連続殺人犯キム・ジョングは、5年間逃亡し続けていた。キム・ジョングは、「山荘食堂」でテンジャンチゲを食べていたところ、あまりにも料理が美味しすぎて意識が飛んでしまい、警察の突入部隊は無抵抗な凶悪な殺人犯キム・ジョングを逮捕する。そして、連続殺人犯のキム・ジョングは死刑判決を受け、死刑執行時にテンジャンチゲについて言葉を残して死んでいった。その情報を得たテレビ局PDのチェ・ユジン(リュ・スンニョン)は興味を持ち、殺人犯キム・ジョングが逮捕された食堂に行って取材をする。チェPDは、テンジャンチゲを食べたところ、特別なものと感じなかったことから、食堂の女将ハン・ミョンスク(イ・ヨンニョ)を追求したところ、殺人犯キム・ジョングに料理を提供したのは若い女性チャン・ヘジン(イ・ヨウォン)によって作られたものだとわかる。チャン・ヘジンは、スーツケースと共に食堂のまえに現れた不思議な女性で、女将ミョンスクはヘジンの匂いや手をみて料理人だと感じて住み込みで少しの間だけ食堂を手伝ってもらう。そして、パク・ミン(チョ・ソンハ)という会長と呼ばれる人が迎えにきたことで食堂から去っていった。チェPDは、殺人犯キム・ジョングが魅了したテンジャンチゲについて調べ、テンジャンチゲを料理した謎の達人チャン・ヘジンを取材する。チェPDは、チャン・ヘジンの過去を調べるに連れて、味噌(テンジャン)の秘密を知っていく。果たして、味噌の味にはどのような秘密が隠されていたのかというお話。
監督は、『ラブラヴ』のイ・ソグン監督。
出演は、テレビ局PDのチェ・ユジンを演じるのは『シークレット』『ベストセラー』のリュ・スンニョン、味噌職人チャン・ヘジンを演じるのは『クァンシクの弟クァンテ』『光州5・18 (原題:華麗なる休暇)』のイ・ヨウォン、梅ワイン職人キム・ヒョンスを演じるのは『最強ロマンス』『その男の本198ページ』のイ・ドンウク、パク・ミン及びパク・クを演じるのは『青い自転車』『執行者』のチョ・ソンハ、山荘食堂の女将ハン・ミョンスクを演じるのは『田禹治』『ベストセラー』のイ・ヨンニョ、チェ・ユジンの上司の局長を演じるのは『仮面』『ハミング』のパク・チュンソン、おばあさんを演じるのは『肩ごしの恋人』『飛べ、ペンギン』のナム・ジョンヒ、孫を演じるのは本作デビュー作の子役イ・テギョン、カン刑事を演じるのは『7級公務員』『フェア・ラブ』のキム・ジョンソク。
大きく括ると二つのストーリーで構成されている。ひとつは、チェPDを中心にして、テンジャンチゲの謎、味噌職人チャン・ヘジンの行方、チャン・ヘジンの生い立ち、味噌の秘密を追い求めていくサスペンス要素。もうひとつは、味噌職人チャン・ヘジンと梅ワイン職人キム・ヒョンス(イ・ドンウク)を中心にしたラブストーリー要素である。構成上は、チェPDのストーリー、チャン・ヘジンとキム・ヒョンスのストーリー、二つのストーリーの纏め、といった具合になっている。ジャンルとしては、非常に難しい作りになっており、アニメーションで表現しているところがあったり、ファンタジーと括っても問題ないし、ヒューマンドラマの要素も含んでいたりと珍しいものになっている。
チェPDのストーリーは、凶悪犯キム・ジョングの逮捕時の不思議な状況や死刑執行時の言葉から、テンジャンチゲの謎から調べていき、それを調理した味噌職人チャン・ヘジンを調べていくのである。キム・ジョングを逮捕した刑事たちの証言、刑務官の証言、山荘食堂の女将の証言、といったようにキム・ジョングと接点があった人物たちのインタビューを中心にして情報収集している。早い段階で、味噌職人チャン・ヘジンと迎えにきたパク・ミン会長の事故死がわかり、チャン・ヘジンの生い立ちを調べていったり、謎の味噌の正体を調べるために国立科学捜査研究所研究員に協力を求めていくのである。チェPDの友人のカン刑事(キム・ジョンソク)から情報を引き出したり、色々な情報網を使っているのだ。目の前にある問題をひとつひとつ解いていくので、サスペンスというよりかミステリーになっている。最初から多くの謎があることで、それを順々に解明していくので、謎解きが好きな人は惹き込まれるだろう。
チャン・ヘジンとキム・ヒョンスのストーリーは、出会いから恋愛、そして二人の職人の技をみせている。チャン・ヘジンが味噌の材料を探すため森林にいるとき、梅の花びらを採取している梅ワイン職人キム・ヒョンスと出会って作業の手伝いをすることで二人が親密になっていき、恋愛へと発展していくのである。小さな田舎の村で生活するキム・ヒョンス、畑仕事をするおばあさん(ナム・ジョンヒ)、明るい性格の孫(イ・テギョン)、素朴な村人たちを描くことで映像から優しさが伝わってくるのだ。平和な日々から一転、永遠の愛が続くと信じていた二人に苦難が発生するのである。
序盤から中盤の作りはよく出来ており、どのようにして謎を解明していくのか考えながらみてしまう。事故死したはずのパク・ミンが登場したのかと思いきや、実は双子の弟パク・クであったり、ある人物の生い立ちをアニメーションで表現していたり、科学的な面から味噌の謎を解こうとしている。中盤から終盤間際まで、チャン・ヘジンとキム・ヒョンスのラブストーリーが中心に描かれており、それまでの勢いを止めてしまう作りになったと感じた。だから、中盤以降のラブストーリーを鑑賞者側がどのように捉えていくかで評価が割れる作品であろう。終盤は、二つのストーリーが重なるところをみせており、ちょっと工夫をしている。研究員が味噌の秘密について何故なのか科学的に証明できない。チェPDが最終的に答えを見つけ、明確に答えを出した形をとっているのですっきりするだろう。細かく云うと食塩(塩化ナトリウム)の成分について科学的に数値を出しているが、ここは数値で証明できないものが答えになっている。
チャン・ジンが、企画、製作、脚本(イ・ソグン監督と共同)に参加しており、脱獄犯キム・ジョングが逮捕されるシーンなんてチャン・ジン監督の特徴が出ている。チャン・ジン監督のテイストが好きな人は気に入るかもしれない。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★
【追記】 2011.11.08
コリアン・シネマ・ウィーク2011で鑑賞したので、鑑賞条件に追加した。
英語字幕で鑑賞したときのレビューなので、訳し方の問題で名称が少し違っているのでごめんなさい。
ヘジンの作る味噌は、凶悪犯ジョングの逮捕する力があったり、パク・ミン会長の嗅覚を復活させた力があったり、ヒョンスと結婚するための嫁入り道具となっていることを記載しておけば、大枠のストーリーがわかりやすくなったと感じた。ストーリーの理解度としては英語字幕でみても変わらないが、日本語字幕で簡潔に翻訳しているところがあったのでそれは参考になった。
【追記】 2013.04.21
日本版DVDが発売されたことで、邦題を追記した。