シラノ;恋愛操作団
制作年:2010年
監督:キム・ヒョンソク
出演:オム・テウン、イ・ミンジョン、チェ・ダニエル、パク・シネ
ジャンル:ラブストーリー、コメディ
鑑賞:動画
「シラノ・エージェンシー」という会社は、恋愛に不器用な人々の愛を代わりに叶えてくれる恋愛操作団である。この会社の代表をしているビョンフン(オム・テウン)、紅一点のミニョン(パク・シネ)、中堅のチョルビン(パク・チョルミン)、若手のチェピル(チョン・アミン)の四人である。依頼人ヒョンゴン(ソン・セビョク)は、コーヒーショップ店員のソナ(リュ・ヒョンギョン)に想いを寄せており、何とかしたいと思って「シラノ・エージェンシー」に頼む。大掛かりな作戦を展開し、コーヒーショップ店にスパイを潜り込ましたり、隠しカメラで映像をみながらイヤホンでヒョンゴンに指示したり、人工的にベストなシチュエーションを作りだして、ヒョンゴンとソナの恋愛を成就させる。そんなある日、ルックスも経歴も申し分ないサンヨン(チェ・ダニエル)が、「シラノ・エージェンシー」の事務所に訪れて仕事を依頼する。ターゲットの女性は、教会に通い、スクーターを乗る美人のヒジュン(イ・ミンジョン)である。ビョンフンは、ヒジュンのプロフィールを見たとき困ってしまい、この依頼を断るように仲間たちに話すが、既に依頼を受けてしまった。ビョンフンは、ヒジュンと過去に交際しており、今でも忘れられない女性であった。ビョンフンは、このような複雑な関係を仲間たちに隠して、嫌々ながらもサンヨンの仕事をすることになる。果たして、サンヨンの依頼を実行して成功するのかというお話。
監督は、『クァンシクの弟クァンテ』『スカウト』のキム・ヒョンソク監督。
出演は、シラノ・エージェンシー代表のビョンフンを演じるのは『携帯電話』『チャウ』のオム・テウン、ヒジュンを演じるのは『葡萄の木を切れ』『ペントハウス エレファント』のイ・ミンジョン、依頼人サンヨンを演じるのは『ヨガ教室 (原題:ヨガ学院)』のチェ・ダニエル、シラノ・エージェンシーのミニョンを演じるのは『とかげの可愛い嘘 (原題:とかげ)』『伝説の故郷』のパク・シネ、シラノ・エージェンシーのチョルビンを演じるのは『最高のパートナー (原題:マイ・ニュー・パートナー)』『キル・ミー』のパク・チョルミン、シラノ・エージェンシーのチェピルを演じるのは『ソン・イルグクのレッド・アイ~幽霊列車~ (原題:レッド・アイ)』のチョン・アミン、依頼人ヒョンゴンを演じるのは『母なる証明 (原題:マザー)』『房子伝』のソン・セビョク、コーヒーショップ店員のソナを演じるのは『神機箭』『房子伝』のリュ・ヒョンギョン、ソナの女友達ソユンを演じるのは『田禹治』『秘密愛』のイ・ミド、コーヒーショップ店員のミスを演じるのは『女高怪談5:心中』『キングコングを持ち上げる』のイ・ミソ、ビョンフンの先輩デヒョンを演じるのは『偉大なる系譜』『グッドモーニング・プレジデント』のキム・イルン、クォン社長を演じるのは『夢中人』『マウミ2』のクォン・ヘヒョ、ヒジュンの女友達ユミを演じるのは『ダンサーの純情』『私たちの生涯最高の瞬間』のキム・ジヨン。
恋愛に困った依頼人が、シラノ・エージェンシーの力をかりて、依頼人の恋愛を成就させるのであるが、依頼人サンヨンからのターゲット(ヒジュン)がシラノ・エージェンシー代表のビョンフンの元恋人ということで、このミッションは難しくなっていくのである。
シラノ・エージェンシーのやり方は、依頼人に恋愛の手ほどきをしていき、イヤホンからの指示によって行動し、指示された台詞をターゲットに話すことで会話を盛り上げていくのである。さらに、タイミングを計って、様々な演出をすることでターゲットの心を掴んでいく。車内で指示を出すビョンフンとミニョン、あらゆる人物に変身するチョルビンとチェピル、そしてその都度雇われるエキストラたちがいる。依頼人とターゲットが付き合い始めるまでが彼らの業務であり、その後恋人関係になった二人に対してのアフターサービスがないために、依頼人とターゲットは自力になってしまうのだ。その視点は、序盤で恋人関係になった依頼人ヒョンゴンとターゲットのソナのその後を中盤で描いているのだ。
サンヨンとヒジュンが出会うところから作り込んでおり、バイクを共通点にしてツーリングをしたり、車でドライブをしたりするのである。シラノ・エージェンシーからすると問題児で困った依頼人サンヨンであり、彼らの指示を無視して会話をしてしまうところなのだ。シラノ・エージェンシーたちは、サンヨンがつけているイヤホンからアドリブはやめるように注意するのだ。このように、サンヨンとシラノ・エージェンシーとのやりとりを面白くみせているのであろう。
依頼人サンヨンのミッションと同時進行にみせているのが、ビョンフンとヒジュンの恋人関係だった過去の回想シーンである。五年前ソウルで自動車教習での出会い、二人の熱い恋愛感情、三年前のパリでの出来事といった形で挿入してくるのである。ビョンフンとヒジュンの間が徐々にみえてきて、現在軸で偶然再会することで二人の関係が微妙に動いて、依頼人サンヨンのミッションに影響してくるのだ。
ビョンフンの心情とヒジュンの心情の二つを描いている。中盤から終盤にかけての流れで、ビョンフンのある決断があったり、サンヨンを通して自分の気持ちをヒジュンに伝えているのだ。ヒジュンもビョンフンへの気持ちを描いており、終盤にヒジュンの決断がみられるのだ。ヒジュンと親しい友人として登場するユミ(キム・ジヨン)がかなり重要な人物になっている。友人でもありながら姉のような存在でヒジュンの愛を応援しているのだ。しかも、ユミはビョンフンと知り合いであるから、二人の間に入ることができる唯一の人でもある。ユミ演じるキム・ジヨンは特別出演の扱いだが、ビョンフンやヒジュンにとって非常に重要な役割を果たしている。
シラノ・エージェンシーのミニョンの位置づけが面白いところである。依頼人サンヨンのミッション中、苦悩しているビョンフンに気づいているのだ。ビョンフンとは仕事仲間の関係にみえているが、本心はどうなのかというところである。常にクールに振舞うミニョンが、ビョンフン、ヒジュン、ユミが話しているところに入ってきて、意図的に修羅場を作るところは面白いところでもある。
この作品のジャンルは、恐らくロマンティックコメディになるのだろう。ビョンフンとヒジュンの間に流れるシリアスな部分を描きつつ、シラノ・エージェンシーたちやサンヨンが作り出すコミカルな部分をみせているのでバランスが取れている作品である。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★