今週末から日本で一般上映されるこの作品。劇中に日本語台詞も出てくる。
7級公務員
制作年:2009年
監督:シン・テラ
出演:キム・ハヌル、カン・ジファン、リュ・スンニョン
ジャンル:アクション、コメディ
鑑賞:韓国版DVD
アン・スジ(キム・ハヌル)は、国家情報院の保安チーム所属要員として6年働いている。国の治安を守るために国家の任務を遂行しており、変装、射撃、潜入、尾行のプロである。そのため、恋人イ・ジェジュン(カン・ジファン)にも正体を明かしてはいけないことで、嘘をつき続けており、旅行会社の社員と云って偽っている。スジが特殊任務中に携帯電話が鳴り、恋人ジェジュンがスジに愛想を尽かし、外国へ留学すると云って去ってしまう。三年後、スジは清掃員に変装して男子トイレで極秘任務をしているときに、偶然帰国したばかりのジェジュンと再会する。ジェジュンは、国際会計士になったことを報告し、自然消滅していた恋愛に再びスジの心は揺れる。スジは、ノ博士(カン・シニル)が開発したウィルス混入生物兵器を海外に売買するとの情報を得たことで尾行している。一方で、ジェジュンは国際会計士になったと云っているが、本当は国家情報院の海外チーム要員になり、まだ新米者であった。ジェジュンは、ロシア人組織が怪しい取引を企んでいることで、海外チーム総出で調べている。事情を知らない二人は、任務先の現場へ行くと出会うことで、お互い相手のことを疑い始める。身分を明かせない者同士が、各々事件を追っていく中で、二人の恋愛の行方を絡めながら事件解決しようとするお話。
監督は、『黒い家』のシン・テラ監督。
出演は、国家情報院保安チーム要員アン・スジを演じるのは『青春漫画 ~僕らの恋愛シナリオ~』『6年目も恋愛中 (原題:6年目の恋愛中)』のキム・ハヌル、国家情報院海外チーム要員イ・ジェジュンを演じるのは『訪問者』『映画は映画だ』のカン・ジファン、国家情報院海外チーム課長のキム・ウォンソクを演じるのは『私の恋』『最後の約束 (原題:11番目のお母さん)』のリュ・スンニョン、国家情報院保安チーム長のホン・チーム長を演じるのは『偉大なる系譜』『My Son あふれる思い (原題:息子)』のチャン・ヨンナム、ノ博士を演じるのは『黒い家』『カン・チョルジュン 公共の敵1-1』のカン・シニル。
国家情報院の保安チームに所属しているスジと国家情報院の海外チームに所属しているジェジュンが、極秘任務をしていることをお互い隠しながら、縒りを戻そうとするのである。
事件概要を簡潔に記すと、国家情報院の保安チームはノ博士の動向を追いながら交渉相手をみつけようとする。国家情報院の海外チームは、ロシア人組織の動向を追いながら武器購入の交渉相手をみつけようとする。保安チームと海外チームは、別々に捜査していることで、序盤は別の事件を追っているようにみえているが、徐々に二つの事件が繋がっていくのである。
同じ保安チームに所属している先輩ホン(チャン・ヨンナム)に恋愛の相談をしているスジは、再会したジェジュンと縒りを戻すか、お見合いをした男性と付き合っていくのか悩む姿をみせている。ジェジュンは、一方的な別れ方をしたがスジと縒りを戻したいことで、スジの自宅マンションまで行って話し合うが、簡単には仲が戻らないことで困っているのだ。両方の想いは同じだから恋愛感情は戻っていく姿をみせていくが、お互い極秘任務をしていることで、擦れ違いの時間を過ごすことが障害をみせている。女性スジの方が凄腕の要員で、男性ジェジュンは頼りなく半人前の要員で直属の上司であるキム課長(リュ・スンニョン)に見下されている。新米者ジェジュンが、様々な危機を乗り越えていくことで国家情報院の要員として成長していく姿をみせているのも見所であろう。
コメディ要素は、ジェジュンを主にして恋愛や特殊任務のときに頻発するようにしている。三枚目を演じるカン・ジファンをどのようにみるかで判断が変わるであろう。まともに尾行もできない、監視カメラの設置もできない、マザコン、生真面目、腕力が弱いといった弱点を露呈しながら、ドジっぷりをみせている。暗号解析といった頭脳を使う仕事だけは、周囲より優れており、そこがキム課長にとって腹が立つところなのだ。ジェジュンとキム課長のやりとりが、コメディ面で一番面白かったかもしれない。
アクション面にかなり力を入れている作品になっている。冒頭シーンでスジがウェディング姿でモーターボートに乗って犯人を追跡したり、遊園地での銃撃戦、終盤の水原華城での総力戦といった派手なシーンが満載である。また、スパイもののような作風になっており、ロシア人組織がアジトにしている場所に潜入したり、ロシア人組織が暗号を使っているのをジェジュンが解読していったり、ハイテク機器を用いているのだ。ハリウッド風のエンターテインメント作品になっていることで、観やすさもあり、気軽に楽しめる展開になっている。悪く云ってしまうと、ハリウッド作品のおいしい所を継ぎ足したようにもみえるのだ。お互い身元を隠している夫婦(本作は恋人関係)の設定面でスパイアクションの『Mr.&Mrs. スミス』やハイテク機器の面ではイギリスの人気スパイ映画『007』シリーズにも似ている。
全体として、アクション作品としては豪華に演出していることもあり満足できるものになっている。そこに恋愛やコメディを絡ませている。どちらかというと、ジェジュンの方が主人公にみえてしまい、スジは国家情報院の要員として凄腕すぎて、引き立て役になってしまっている。別々の事件を追っているような国家情報院の二つのチーム、勘違いによって起こる敵と味方の構図、そして本当の敵と味方の構図がみえてくる展開になっている。エンディングロール中にもその後の二人の関係がみえるのでおまけ的にもいいかも。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★