先月下旬に埼玉県川口市にて「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010」が開催されて上映された作品。川口駅からバスで「SKIPシティ」まで行かなければいけないこと、上映が朝早い、他の同日上映作品で観たい作品がない、という三つの条件からスルーした。
字幕ファイル(英語)を動画にぶち込んで観たので、ほとんど言葉の壁がない状態で鑑賞できたかな。地味だけどなかなか良い作品である。
フェア・ラブ
制作年:2009年
監督:シン・ヨンシク
出演:アン・ソンギ、イ・ハナ、ユン・スンジュン、イ・ヒョノ
ジャンル:ラブストーリー
鑑賞:動画
50歳を過ぎたカメラ修理工ヒョンマン(アン・ソンギ)は、自分の全財産を持ち逃げした友人キヒョクが見つかったことを知らされた。だが、友人キヒョクは余命僅かで病院に入院しており、ヒョンマンが病院へお見舞いにいったとき、友人キヒョクは謝り続けて死ぬ間際に一人娘ナムン(イ・ハナ)の世話をして欲しいと云って逝ってしまった。ヒョンマンは、ナムンが仕事場の近くに住んでいることを知らされて会いに行った。ナムンは、父の死と部屋で飼っていたペットの猫も死んでしまったことで悲しみが癒えないでいた。ヒョンマンは、予想外にナムンが成長している娘に驚き、ぎこちない会話をしながら、時々会うことになる。ヒョンマンの洗濯を言い訳にして頻繁に会う二人は、ヒョンマンの仕事場にナムンが上がりこみ、ヒョンマンが唯一大切にしている作業場にナムンが入り込むことで、気持ちが軽やかになっていく。一切恋愛経験がなく、カメラの修理ばかりしてきた50歳を過ぎた独身男性ヒョンマンは、25歳の若い女性ナムンのアプローチに戸惑いながら、恋に落ちていった。果たして、二人の恋愛はどのような展開になるのかというお話。
監督は、本作デビュー作のシン・ヨンシク監督。
出演は、カメラ修理工のヒョンマンを演じるの『光州5・18 (原題:華麗なる休暇)』『最高のパートナー (原題:マイ・ニュー・パートナー)』のアン・ソンギ、大学生ナムンを演じるの『食客』のイ・ハナ、ヒョンマンの同僚ジンテを演じるのは本作スクリンデビューのユン・スンジュン、ヒョンマンの同僚ジェヒョンを演じるのは本作スクリンデビューのイ・ヒョノ、ヒョンマンの友人でカメラマンのジョンソクを演じるのは『黒い家』『悲しみよりもっと悲しい物語』のキム・ジョンソク、ヒョンマンの友人でカン牧師を演じるのは『ベサメムーチョ』のキム・インス、ヒョンマンの甥を演じるのは『ナンパの定石 (原題:作業(ナンパ)の定石)』『霜花店』のチョン・ソンイル、ヒョンマンの甥の恋人ジニを演じるのは『阿娘』のユ・インナ。
老いた独身男性ヒョンマンが、友人キヒョクの遺言によって、友人の娘ナムンを気にかけていく中で、親子程の年齢差がある二人が恋をしてしまう。
ヒョンマンは、兄や兄嫁、大きな甥や姪といった兄の家族と一緒に生活しているのだ。職人さんのような仕事をしており、一人暮らしできる経済力があるのに、兄の家族と生活している姿に面白さがある。兄嫁はちょっと気を使っているようにみえ、甥や姪はヒョンマンが存在していることが当たり前のように接している。兄はヒョンマンにお見合いの話しを持ちかけ、将来を心配しているのがみえるのだ。
ナムンは、父がヒョンマンにしたことがあるので負い目を感じており、序盤では心の動揺をみせており、ヒョンマンが父の起こしたことを許してくれていたことで、徐々にナムンの心が開いていく姿をみせている。ナムンが、夜に一人で残業しているヒョンマンの仕事場に行って、ヒョンマンがコツコツと時計を直している姿をみて、「おじさん可愛いです(魅力的です)」とか「男性が一生懸命仕事をしている姿がセクシー」「おじさんがセクシーって意味ではないよ」といった言葉にヒョンマンがちょっと動揺しているのである。ナムンが、からかいながらも本音っぽくみせているようにもみえ、ヒョンマンの困った姿が初々しい男の子のようにみえるのだ。
ヒョンマンの感情が、どんどん高まっていく姿をみせているので、恋に落ちていくプロセスを描いている。50歳過ぎで恋愛経験ゼロの独身男性と姪ぐらいの大学生が恋愛をするのはちょっと厳しい設定であるが、二人をみて感じることはピュアなのだ。ヒョンマンは、初めての恋愛なので、何をするのかわからない無垢な少年のようになっており、結婚している同僚ジンテ(ユン・スンジュン)が何かとアドバイスをしたり、若い同僚ジェヒョン(イ・ヒョノ)が若者の感覚を説明しているのは面白いところでもある。ムードメーカー的存在の友人でカメラマンのジョンソク(キム・ジョンソク)が皆に対してフレンドリーに接しており、皆で車に乗ってビーチに行く途中ナムンのことでヒョンマンがジョンソクに対して嫉妬するところは笑えるところである。
ヒョンマンとナムンの恋愛を主にみせているが、もう一つの恋愛物語としてあるのが、ヒョンマンの甥(チョン・ソンイル)とその恋人チニ(ユ・インナ)の関係である。甥の恋愛をきくことで、ヒョンマンの心と体が動きだすのだ。サイドストーリーであるが、甥の恋愛はなかなか効果的なものになっている。
天気とヒョンマンの感情がリンクしているようにもみえるのだ。雨で始まり、だんだんと晴れていき、曇りになり、雨になる流れである。最初と最後に空を映していることから、意図的にしているのはみえる。ラストの解釈は、鑑賞者に委ねているところがあり、鑑賞者の感じたものが答えかもしれない。複数の解釈がみえるし、どれも当てはまり答えがみえないからだ。
デジタル撮影した作品だけど、アナログ要素がたくさん詰まった作品になっている。ヒョンマンの仕事場にあるレコードプレーヤーで音楽を聴いたり、フィルム式カメラで撮影していたり、骨董品のように置かれた年代もののカメラ、アコースティックギターの音を使ったバックサウンド、天気を示す空の風景、といったアナログ(フィルム)で撮影したら味がでる作品に感じた。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★