映画祭なのにティーチ・インがなかったのは残念だった。別に質問することもないけどね。途中で帰る観客もいたから、つまらなく感じる人もいるだろう。日本映画『嫌われ松子の一生』のパクリ疑惑がある作品であるが、鑑賞した感じでは違うようにみえた。どこどこが似ているといったらきりがないが、主張しているところが違うかな。まあ、『嫌われ松子の一生』の方が面白いけど。
うちにどうして来たの?
制作年:2009年
監督:ファン・スア
出演:カン・ヘジョン、パク・ヒスン、スンリ
ジャンル:ラブストーリー、コメディ
鑑賞:コリアン・シネマ・ウィーク2009
ビニールハウスで服を着たまま横になっている女性の死体が発見された。所持品の手紙を手がかりに刑事たちは、ビョンヒ(パク・ヒスン)という男の自宅を訪れた。警察署に任意同行されて取り調べをされるビョンヒは、亡くなった女性がスガン(カン・ヘジョン)であることを知って驚愕する。ビョンヒとスガンの出会いは、唐突であって奇妙な出来事だったからである。妻に先立たれ生きる希望を失い、三年間に何度も自殺を試みたが失敗しているビョンヒは、やっと自宅で首吊り自殺に成功しかけているときに、突然謎の女スガンがビョンヒの自宅に入り込んできてビョンヒを助けて、ビョンヒを監禁してしまう。二人の奇妙な生活が始まり、スガンはいつも窓からオペラグラスで誰かの家を覗いており、三週間が過ぎた頃には紐で縛られていた生活からビョンヒは解放される。ビョンヒは、今までのスガンの行動に疑問を感じて、何故このようなことをしたのか真意を知り、スガンの力になるよう協力する。果たして、スガンの行動は何だったのか、そして二人の間に特別な感情が芽生えるのかというお話。
監督は、本作デビュー作の女性のファン・スア監督。
出演者は、謎の女スガンを演じるのは『とかげの可愛い嘘 (原題:とかげ)』『ハーブ』のカン・ヘジョン、自殺未遂をする男ピョンヒを演じるのは『バカ』『作戦』のパク・ヒスン、スガンと関係がある男チミンを演じるのは本作スクリンデビューの歌手スンリ、幼き頃のチミンを演じるのは『極楽島殺人事件』のイ・デビッド、小柄の刑事を演じるのは本作スクリンデビューのアン・ビョンギュン、大柄の刑事を演じるのは『なつかしの庭 (原題:古い庭園)』『作戦』のイ・ドヒョン、ピョンヒの妻を演じるのは『映画は映画だ』のリュ・ヘヨン。
スガンの死体発見からピョンヒと刑事たちとの会話で展開されるストーリーになっており、ピョンヒがスガンの生前時にどのような経験をしたのか、聞かされていたスガンの過去を紐解いていくのだ。スガンの高校時代、スガンとピョンヒが出会った過去、スガンが死亡した現在といった三つの時間軸で構成されており、スガンの波乱万丈な人生を描きながら、ピョンヒの人生にどうような影響があったのかがみえてくるのである。
スガンは、高校時代にある男の子との出会うことによって人生の分岐点を示している。スガンは学生たちからバカ扱いされており、実際に20歳の高校生であり、年下の男子生徒チミン(学生時代:イ・デビッド、青年時代:スンリ)と肉体関係になる。だが、そのことが多くの学生に知れ渡り、そのことでチミン自身も同級生たちからパシリのように扱き使われてしまう。スガンとチミンは恋人関係が続くことはなく、時間が流れていくのである。
スガンがピョンヒの家に来た理由は、高校時代に関係しているのだ。ピョンヒは、初めてみるスガンが何者なのか、何故ピョンヒの家から出て行かないのか、何で奇抜な服装なのかといった多くの疑問を持ちながら、スガンの目的が徐々に明かされていく作りなのだ。スガンの人生は、前科者であったり、水商売をしていたり、ホームレスであったりといろいろ事情があるのだ。スガンから知らされた彼女の人生をピョンヒが刑事たちに語っていくことで、ピョンヒの心に潜むある感情を知るようになるのだ。
簡略的に説明してしまうと、愛に狂った女の悲劇な人生と、女と出会うことで生きる希望を見出す男を遠回しに表現している感じだ。冒頭でスガンが死亡していることから、スガンは何者で、何故亡くなったのかを解いていくのだ。主人公が冒頭で死亡していることで、ストーリーを展開させる幅を自ら狭めてしまっているように感じられた。そのために、制約された空間の中でしかストーリーが進行することができず、ストーリーにあまり波ができないようにみえてしまった。終盤に、スガンとピョンヒの心情をみせていることで、何を主張したいのかはみせている。作家性の強い作品に感じたので、鑑賞者の好みによって評価が割れそうだ。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★