したまちコメディ映画祭の総合プロデューサーのいとうせいこうが、本作品の字幕監修をして上映した。翻訳はねもとさんだけど、所々でいとうせいこうっぽい表現が出ており、笑いのセンスがみられた。上映終了後に、司会者といとうせいこうが登場して、字幕に関することや作品に関することをコメントしていた。もう一度、いとうせいこう字幕監修版を上映してほしいなぁ。
司会者が主人公イム・ウォニのことを石原裕次郎のモノマネ芸人「ゆうたろう」に似ていると何度も言っていたが、やっぱり一般人からするとイム・ウォニは無名マイナー俳優になるのかな。
タチマワ・リー -悪人よ 地獄行急行列車に乗れ
制作年:2008年
監督:リュ・スンワン
出演:イム・ウォニ、コン・ヒョジン、パク・シヨン、ファン・ボラ
ジャンル:アクション、コメディ
鑑賞:第2回したまちコメディ映画祭
1942年、機密文書が収められた朝鮮の国宝である仏像が盗まれた。その仏像を取り返すために、女性諜報員クム・ヨンジャ(コン・ヒョジン)が東京に向かったが、ミッション中に姿を消してしまった。そこで、朝鮮臨時政府は伝説的なスパイのタチマワ・リー(イム・ウォニ)に依頼して、新しい相棒の女性諜報員マリ(パク・シヨン)と一緒に仏像の行方を追って満州に向かった。彼らは最初のミッションに失敗して、タチマワ・リーは記憶を失ってしまい、相棒マリと逸れてしまう。タチマワ・リーは、一人で敵のところに乗り込んでいくのである。果たして、タチマワ・リーは記憶を取り戻し、機密文書が収められた仏像を取り戻すことができるのかというお話。
監督は、『クライング・フィスト (原題:拳が泣く)』『相棒 シティ・オブ・バイオレンス』のリュ・スンワン監督。
出演者は、伝説的なスパイのタチマワ・リーを演じるのは『死んでもハッピーエンド (原題:死んでもハッピーエンディング)』『食客』のイム・ウォニ、女性諜報員クム・ヨンジャを演じるのは『家族の誕生』『M』のコン・ヒョジン、女性諜報員マリを演じるのは『九尾狐家族』『愛 サラン』のパク・シヨン、少女を演じるのは『よいではないか』『ラヂオ・デイズ』のファン・ボラ、中国人ワンを演じるのは『よいではないか』『ファム・ファタール (原題:無防備都市)』のキム・ビョンオク、怪しい諜報員タマネギを演じるのは『ハミング』『ワンス・アポン・ア・タイム』のキム・スヒョン、真相6号を演じるのは『食客』『ワンス・アポン・ア・タイム』のアン・ギルガン、国境山猫を演じるのは『死生決断』『ラヂオ・デイズ』のリュ・スンボム、マダム・チャンを演じるのは『シングルズ』『奇跡の夏 (原題:アンニョン、兄ちゃん)』のオ・ジヘ。
2000年に制作した短編を長編作品としてセルフ・リメイクした作品。伝説のスパイであるタチマワ・リーが、機密文書と女性諜報員ヨンジャの行方を探すスパイコメディである。「007シリーズ」や「オースティン・パワーズ」っぽいところ、香港映画や日本映画っぽいところ、昔の韓国映画っぽいところ、といった様々な要素を含んでいる。日本、満州、上海、アメリカ、スイスと世界中を飛びまわるところが良く、それぞれの場所でタチマワ・リーが活躍しているのだ。
序盤でマダム・チャン(オ・ジヘ)が機密文書が収められた仏像を奪うところから始まり、朝鮮臨時政府は彼女を探すために諜報員を使って奪還しようとする。タチマワ・リーに依頼するときには、彼の実力を確かめようと、和服姿の男たちと戦うのであるが、決め技が下品なのだ。確かにタチマワ・リーは強いのであるが、反則技のような下品な行動が目立ってしまう。そこがコメディ要素として強調されており、ときには正統な技で敵と戦うので、バランスよく戦っているのである。携帯用オシュレットみたいな特殊武器で水攻撃したり、大量のよだれ&鼻水を顔面付近に垂らしたりと、笑いのツボが合えばかなり笑えるだろう。
朝鮮臨時政府の敵となっているのが、日本軍人や中国人ワン(キム・ビョンオク)や怪しい諜報員タマネギ(キム・スヒョン)などである。彼らの会議シーンが何度も挿入されており、滅茶苦茶な日本語や中国語で会話しているので、適当すぎてかなり笑えるのである。いとうせいこうが字幕監修をしていることもあり、上手く日本語字幕を作っており、「~アル」とかカタカナを入れたり、何を話しているのか理解できるようにしている。音声と英語字幕と日本語字幕を同時に見聞きするとかなりおもしろく感じるだろう。
変装の名手である女性諜報員ヨンジャの登場によって、中盤から終盤はタチマワ・リーとのコンビで戦っていくのである。二人が揃うことで、ストーリーが更にパワーアップするようになっており、終盤の展開も楽しめるようになっている。ある人物が敵だったり、ヨンジャだけでなくタチマワ・リーも変装したりと見せ場があるのだ。
エンディングでは昔の香港映画みたいにNGシーンをみせながら、失敗シーンを面白可笑しくみせている。いろいろな要素を取り入れているので、評価に個人差がでるだろう。個人的には、リュ・スンワン監督の作品の中で一番面白かった気がする。過去のリュ・スンワン監督の作品で面白いと思ったことがなかったので。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★