東京の浅草で行われた「したまちコメディ映画祭」に初めて参加した。
この作品は、明らかに低予算ものなのは観ているとわかるが、それなりに満足できる。男性の方が共感できる点があるから楽しめるだろう。序盤は退屈だが途中から面白くなっていくのが特長かな。
次回は、「したまちコメディ映画祭」で観てきた『タチマワ・リー -悪人よ 地獄行急行列車に乗れ』のレビューをアップ予定。
昼間から呑む (原題:昼酒)
制作年:2008年
監督:ノ・ヨンソク
出演:ソン・サムドン、ユク・サンヨプ、キム・ガンヒ、タク・ソンジュン
ジャンル:コメディ
鑑賞:第2回したまちコメディ映画祭
大学卒業して定職につかないヒョクジン(ソン・サムドン)は、恋人ジヘに振られて落ち込んでいたことで、ヒョクジンを元気づけるために大学時代の友人たち三人とソウルの店で酒を飲んだ。友人ギサン(ユク・サンヨプ)が、明日みんなで江原道のチョンソンへ旅行に行こうと提案して全員一致で賛成し、チョンソンのバスターミナルで待ち合わせることにした。翌日、チョンソンのバスターミナルに到着していたのはヒョクジンだけであった。ヒョクジンは、ギサンに電話してみると酒の席での話しで本気でなかったことを知り、他の二人はギサンの家で酔い潰れていた。責任を感じたギサンは、ヒョクジンに明後日なら行けると言って、それまでギサンの先輩が経営しているペンションを紹介して、そこで合流しようと提案された。渋々、そのペンションに向かったヒョクジンは、山奥に建っているペンションに行き、無愛想の主人に部屋の鍵を渡された。ヒョクジンは、何もすることがないため、寝ながらテレビをみて時間を潰していた。ヒョクジンは部屋のまえでタバコを吸っていたら、隣りの部屋に泊まっている若い女(キム・ガンヒ)が出てきて二人で会話をして、若い女も一人旅をしていることを知る。少し時間が経って、ヒョクジンは持参していたワインを若い女と一緒に飲もうと隣の部屋のドアをノックすると、部屋から出てきたのは若い男(タク・ソンジュン)で、言葉に詰まりワインをプレゼントしてしまった。翌朝、ヒョクジンはペンションの主人と話してみると、ギサンの先輩のペンションではないことがわかり、宿泊代を支払ってバスの停留場に行って二時間に一本のバスを待つ。そこに、隣室だったあの若い女がバスの停留場に居て、ウイスキーが飲みたいと要求して馴れ馴れしく誘惑してくるので、近くの売店で買って来て一緒に飲んでいたら、あの若い男が車でやってきて若い女を乗せて消えていった。ヒョクジンは、電話でギサンがカンヌンの海に行くように勧めていたので、バスに乗ってバスターミナルに着いてベンチに座っていたら、不細工な女ラニ(イ・ラニ)がカメラの撮影を頼んできたり、バスの席が隣りで話しかけてくるので無視していたら、ラニが暴言を吐いて気分を損ねてしまった。ヒョクジンは、カンヌンの海岸に到着し、焼酎とカップラーメンを食べて過ごし、そこから立ち去ろうとしたら、あのペンションで出会った若い男女が同じ行動をしていた。若い男がヒョクジンに気づき、ワインをプレゼントしてくれた御礼に焼酎を一緒に飲むことを勧めてきて、三人で食堂に行って刺身を食べ、カラオケに行き、一緒に宿に泊まって酒を飲んだ。翌日、ヒョクジンが目を覚ますと、とんでもないことになっていた。ソウルの自宅に戻ろうとするヒョクジンが、多くのトラブルに遭遇するお話。
監督は、本作デビュー作のノ・ヨンソク監督。
出演者は、ヒョクジンを演じるのは『GOGO70s (原題:ゴーゴー70)』のソン・サムドン、ギサンを演じるのは本作スクリンデビューのユク・サンヨプ、ペンションで出会った若い女を演じるのは『ある日突然 3番目の話-D-day』のキム・ガンヒ、ペンションで出会った若い男を演じるのは本作スクリンデビューのタク・ソンジュン、不細工な女ラニを演じるのは『トンマッコルへようこそ (原題:ウェルカム・トゥー・トンマッコル)』のイ・ラニ、トラック運転手を演じるのは『殺人の追憶』『王の男』のシン・ウンソプ、ギサンの先輩を演じるのは本作スクリンデビューのイ・スンヨン。
失恋した男ヒョクジンが、友人のちょっとした冗談を真に受けて一人で田舎に行ってしまい、目的地のペンションを探し、不運な出来事に遭うロードムービーである。哀しい男の性(さが)を面白く描いたブラックコメディでもある。
間違えたペンションに来てしまったヒョクジンが、可愛い若い女に出会ったことで運命的なものを感じて期待していたところ男連れであったり、海岸で再会して若い男が二人は恋人ではなくビジネス仲間ときいて再び若い女への欲望が芽生えたりと傷ついた心を回復させようと試みるが、女の罠にまんまと引っかかってしまうヒョクジンなのだ。容姿が正反対の不細工な女ラニとの出会いでは、バスターミナルやバスの車中でのヒョクジンの表情が非常に面白くみせている。バスターミナルでは、『春の日は過ぎゆく』のイ・ヨンエの真似をしてポーズをとるラニの行動にヒョクジンがうんざりした表情をしたり、バスの車中で隣りの席になってラニがヒョクジンに積極的に話しかけてくるが苦い表情をしているのがあからさまなのだ。ヒョクジンとラニの出来事が中盤以降に繋がるようになっているので、なかなか面白い伏線の張り方をしている。
若い男女が、自分たちでビジネスをしていることを説明していたが、二人の正体は窃盗団であろう。宿に若い男女とヒョクジンの三人が寝て、ヒョクジンが目を覚ますと冬の山道に上着とパンツ姿の状態で捨てられており、バックや財布などの所持品が盗まれ、車もなかなか通らない場所に放置されているのだ。あまりの非道ぶりに笑ってしまった。その後も、不細工女ラニの行動や罵倒、救世主と感じたトラック運転手(シン・ウンソプ)の優しさが実はホモ野郎であったり、踏んだり蹴ったりなのだ。
終盤にようやく友人ギサンとその先輩に出会い、最悪の状態から脱出できたと思いきや更なる展開を次々と用意しているのだ。序盤から伏線を多く張っているので会話の内容を理解していると、頷けるシーンが多くある。ギサンの先輩が「女は風だ」という台詞も納得できるところであり、ちゃんとラストにオチまでついている。
監督自身が、裏方の仕事もこなしていることで低予算で作られている。そのため、撮影に関してはピントが合っていなかったり、音楽に関しては音の厚みがなく薄っぺらく聴こえたりと技術的な面で欠点がみえた。編集面でも、序盤のペンションでの出来事が長いので少しカットして、上映時間を減らしていれば全体的にバランスがとれるのにと感じた。でも、シナリオの良さは光っており、役者の演技も悪くないので、低予算映画としては良く出来ている。
【なめ犬的おすすめ度】 ★★★